同年代の同僚が会社を辞めた。転職ではありません。次の会社も決まっていない。
しばらく働かなくても生活できるだけの資産を作り、いわゆる早期リタイアやFIREに近い生活へ移るらしい。
そんな話を聞いたとき、素直に「おめでとう」と思える人もいるでしょう。
ところが、心のどこかがザワつく人もいます。私です。
「すごいな」と思う一方で、「なんで自分はまだここにいるんだろう」と考えてしまう。
資産額を聞けば自分との差が気になり、退職日が近づけば羨ましくなる。
本人が楽しそうにしていれば、それまで特に不満を感じていなかった自分の会社員生活まで急に色あせて見える。
これは単なる嫉妬なのでしょうか。私は、それだけではないと思います。
同僚の早期リタイアが強烈なのは、相手がお金を持っているからだけではありません。
自分と同じ会社員という世界にいた人が、その世界には出口があることを目の前で証明してしまうからです。
昨日まで「会社員なんだから働くのは仕方ない」と思っていた。
ところが同僚が会社を降りた瞬間、「本当に仕方なかったのか?」という問いが生まれる。
その瞬間、それまで仕方なく続けていた会社員生活が、「自分が今日も選び続けている会社員生活」へ変わります。
これが、同年代の早期リタイアが妙に刺さる理由なのではないでしょうか。
この記事では、同僚がFIREしたときになぜ焦るのか、なぜ知らない億り人より身近な退職者の方が気になるのか、そして「自分も選べた」というモヤモヤをどう扱えばいいのかを、40代会社員のFIRE目線からじっくり考えていきます。
- 同僚の早期リタイアでモヤモヤするのは「嫉妬」だけではない
- 「みんな働くしかない」が崩れた瞬間、会社員生活は“選択”になる
- 同じ部署、同じ年代だからこそ「自分も選べた」が刺さる
- 早期リタイアは“うつる”のか?同僚の退職が自分の判断へ影響する研究もある
- モヤモヤを分解すると「FIREしたい」とは限らない
- 嫉妬は「辞表を書け」という命令ではなく、欲しい自由を示すセンサー
- 同僚を真似する前に「会社員生活の自動更新」を一度だけ止めてみる
- 「あの人にはできた」を、そのまま自分の必要資産にしない
- 早期リタイアしなくても、先に取り戻せる自由はある
- 同僚との関係が微妙になるのは、共有していた“会社員の物語”が終わるから
- 「自分も選べた」は、まだ「自分も選べる」に変えられる
- まとめ|モヤモヤしたなら、同僚ではなく「自分の選択肢」を見てみる
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同僚の早期リタイアでモヤモヤするのは「嫉妬」だけではない
「同僚がFIREして羨ましい」、こう書くと話は簡単です。
相手は資産を作った。自分にはまだそこまでの資産がない。相手は会社を辞められた。自分は明日も出勤する。
だから嫉妬する。もちろん、それも一部にはあるでしょう。
人は、自分より望ましい状態にいる人を見ると、自分と相手を比較します。
心理学でいう社会的比較は珍しい行動ではなく、自分の立ち位置を知ったり、行動の基準を作ったりするための基本的な認知活動とされています。特に、自分と似た相手は比較対象になりやすいと整理されています。
ここで重要なのが、「似た相手」ということです。
例えばSNSで「32歳、資産2億円、FIREしました」という投稿を見ても、「すごい世界だな」で終われることがあります。
起業家だった。高年収だった。仮想通貨が当たった。相続があった。何か特殊な条件だったのだろう。
そう考えれば、自分とは別世界の人として処理できます。
ところが、同じ会社で働いていた同僚は違います。
同じ通勤電車に乗っていた。似たような給料をもらっていた。同じ会議に出ていた。同じ上司の愚痴を言っていた。同じように月曜日を嫌がっていた。その人が突然、「来月で辞めます」と言う。
すると、「特殊な人だから」で逃げにくくなります。
遠い成功者はニュースですが、近い成功者は自分への問いかけになります。
「あの人にできたなら、自分にも何か別の道があったのではないか」、ここからモヤモヤが始まります。
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この問題は、単なる資産額の比較よりもう少し厄介です。
相手の成功によって、自分の過去と現在まで再評価させられるからです。
「みんな働くしかない」が崩れた瞬間、会社員生活は“選択”になる
会社員生活には、強力な特徴があります。それは「続けることに、毎回決断が必要ない」ことです。
朝になれば会社へ行く。月曜日になれば仕事を始める。年度が変わっても、そのまま勤める。
「来年度も私はこの会社員生活を選択します」と毎年契約書に署名するわけではありません。
昨日会社員だった人は、特に何もしなければ今日も会社員です。
こうした「今の状態をそのまま続けやすい」傾向は、意思決定研究では現状維持バイアスとして知られています。
古典的な研究でも、人は何もしない・現在の状態を保つ選択肢を相対的に選びやすく、退職制度など実際の重要な意思決定でも現状維持の影響が観察されています。
会社員生活も似ています。もちろん、全員が嫌々働いているわけではありません。
仕事が好きな人もいるし、収入や社会との接点、やりがいを重視して働き続ける人もいるでしょう。
ただ、長く勤めていると、「続けるか、辞めるか」という問いそのものを考えなくなることがあります。
会社員生活が、「人生の初期設定」になる。ところが、すぐ隣にいた同僚がその設定を変更します。
その瞬間、「会社員を続ける」という選択肢が初めて目に見えるようになります。
辞めることだけが選択なのではありません。「続けることも選択だった」、ここに気づかされる。
これは結構きついです。昨日までは、「住宅ローンもあるし」、「まだ資産が足りないし」、「定年まではこんなものだし」、「みんな働いてるし」と考えていた。
ところが、「みんな」の一人がいなくなった。すると、「自分は本当にこのままでいいのか」という問いが突然、自分の机の上に置かれます。
私は、この感覚を「選択肢ショック」と考えると分かりやすいと思います。
会社員以外の人生が存在すること自体は前から知っていた。でも、それが身近な人によって急に現実化したため、それまで意識していなかった自分の選択まで見えてしまう。
モヤモヤの正体は、「あいつだけずるい」だけではない。
「自分も人生を選ばなければならない」と気づかされる不快感でもあります。
同じ部署、同じ年代だからこそ「自分も選べた」が刺さる
同僚が早期リタイアすると、自分の過去まで遡って考え始めることがあります。
もっと若いうちから投資していれば。新NISAが始まる前から資産形成していれば。あの頃もっと貯金していれば。昇進して年収を上げていれば。
逆に、出世競争に時間を使わず投資へ回していれば。住宅費を下げていれば。生活水準を上げなければ。こんな「もしも」が次々と出てきます。
心理学では、現実とは違う過去の可能性を思い浮かべることを反実仮想と呼びます。
「あのとき別の選択をしていれば」という思考です。研究では、反実仮想は不快な感情を強めることがある一方、何が結果につながったのかを考え、今後の行動を修正する機能も持つとされています。
つまり、「自分も選べたのでは」という気持ちは、必ずしも無意味ではありません。
ただし、使い方を間違えると苦しくなります。45歳の自分が、「25歳のときから毎月10万円投資しておけばよかった」と考えても、25歳には戻れません。
「あの株を買っていれば」、「あの会社へ転職していれば」、「あの家を買わなければ」という後悔も、現在から結果を知った状態で過去を採点しています。
過去の自分には、今の情報はありませんでした。だから反実仮想は、過去の自分を裁くためではなく、「これから変えられる部分を探すために使う」、この使い方が重要になります。
同僚がFIREしたことを見て、「自分も20年前から投資していれば」で終わるなら、ただの後悔です。
でも、「自分はまだ会社員を10年続けるつもりだった。でも、本当に10年必要なのか」、「完全FIREでなくても55歳で一度会社を降りられないか」、「月25万円必要だと思っていたけれど、実際の生活費はいくらなのか」と現在の設計へ戻せれば、モヤモヤが情報に変わります。
早期リタイアは“うつる”のか?同僚の退職が自分の判断へ影響する研究もある
「同僚が辞めたら、自分まで辞めたくなった」、これは気分だけの話でもないようです。
海外の研究では、退職時期の選択に同僚や家族、友人など周囲の行動が影響する可能性が報告されています。
オランダの労働者を対象にした研究では、望ましい退職年齢は同僚、家族、友人など周囲の退職行動や助言と関連していました。
仮想的な条件を使った分析では、周囲の退職年齢が1年遅くなる設定に対し、本人が望む退職年齢も平均約3カ月遅くなる結果が示されています。
これは日本のFIREへそのまま当てはめられる数字ではありませんが、退職時期を完全に一人だけで決めているわけではないことを示す興味深い結果です。
さらに、米国オレゴン州の公務員を扱った研究でも、退職資格を持つ職員は、同僚の退職が多い月ほど本人も退職する可能性が高くなる傾向が確認され、研究者は退職時期にピア効果があると結論づけています。
もちろん、「隣の人がFIREしたから自分もFIREする」ほど単純ではありません。
資産額も違う。生活費も違う。家族構成も違う。住宅事情も違う。健康状態も違う。退職金や年金も違う。
それでも、身近な人の行動には、単なる情報以上の力があります。
それまで「普通ではない」と思っていた選択が、「実際にやっている人がいる選択」へ変わるからです。
この意味では、同僚の早期リタイアはFIREの社会的ハードルを下げます。
しかし、ハードルが下がることと、自分にも条件が整っていることは別です。
ここを混ぜると危ない。「自分にも選択肢がある」と気づくところまではいい。
その次は、他人ではなく自分の数字へ戻る必要があります。
モヤモヤを分解すると「FIREしたい」とは限らない
ここで一度、自分が何にモヤモヤしているのかを分解してみます。
同僚が早期リタイアした。羨ましい。でも、本当に欲しいのは「FIRE」そのものなのでしょうか。
例えば、こういう可能性があります。
| モヤモヤした場面 | 実際に羨ましいもの | 必ずしもFIREしなくても取れる行動 |
|---|---|---|
| 同僚が平日の昼間に自由 | 時間の自由 | 有休、残業削減、時短、働き方変更 |
| もう会社へ来なくていい | 職場ストレスからの解放 | 異動、転職、役職を降りる、仕事との距離を取る |
| 資産だけで生活できる | 経済的安心 | 生活費把握、投資、現金確保、固定費見直し |
| 自分で退職を決断した | 人生の主導権 | FIRE時期を決める、退職条件を設定する |
| 会社にしがみつかなくていい | 選択肢 | サイドFIRE、転職、副業、ゆる労働の準備 |
| 自分だけ取り残された感じがする | 前進している感覚 | 他人ではなく自分の資産形成の進捗を見る |
ここを区別するだけでも、かなり違います。
例えば「平日に自由なのが羨ましい」だけなら、5,000万円を作って完全FIREすることだけが解決方法ではありません。
会社は嫌いではないけれど残業が多すぎるなら、働き方の問題かもしれない。
管理職が嫌なら、昇進しない、役職を降りるという選択肢もあります。
人間関係だけがつらいなら、転職や異動の方が早い可能性もあります。
逆に、「会社そのものから完全に離れたい」という気持ちが強いなら、そこで初めてFIRE資産や退職時期の設計へ進めばいい。
大切なのは、「同僚がFIREしたから、自分もFIREしたい」と短絡しないことです。
そのモヤモヤが何を要求しているのかを見る。すると、嫉妬に見えていた感情が、意外と具体的になります。
嫉妬は「辞表を書け」という命令ではなく、欲しい自由を示すセンサー
嫉妬という言葉には、かなり悪い印象があります。
人の成功を喜べない。心が狭い。負けを認められない。そんな風に受け止められやすい。
でも、上方比較への反応は必ずしも敵意だけではありません。
社会的比較の研究では、上にいる相手を見ることが苦痛になる場合がある一方、刺激や行動のきっかけになる場合もあり、その影響は状況や個人によって異なるとされています。
だったら、同僚へのモヤモヤを無理に消す必要もありません。
「あいつは運が良かっただけだ」と相手を下げる必要もない。
「自分は自分だから」と無理にきれいに片づける必要もない。
むしろ、「何がそんなに羨ましかったのか」、ここを見るべきです。
- 同僚の資産額が羨ましかった。それなら経済的安心が欲しい
- 同僚が会社を辞めた勇気が羨ましかった。それなら自分で人生を決める感覚が欲しい
- 同僚が月曜日に出社しないことが羨ましかった。それなら時間の自由が欲しい
- 同僚が「嫌なら働かなくてもいい」と言える状態が羨ましかった。それなら欲しいのは無職ではなく、「仕事を断れる力」が欲しい
このように考えると、嫉妬は少し扱いやすくなります。
「嫉妬は退職命令ではなく、自分が欲しい自由を表示するセンサー」、そう考えれば、同僚のFIREは自分を傷つけるだけの出来事ではなく、自分でも気づいていなかった不満を見つける材料になります。
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同僚を真似する前に「会社員生活の自動更新」を一度だけ止めてみる
同僚の早期リタイアを見て、すぐ退職する必要はありません。
むしろ一度、自分の会社員生活を査定してみる方がいいです。
私たちは毎年、生命保険やサブスクの更新を見直すことがあります。
この保険は本当に必要か。この動画サービスは見ているか。この通信プランは高くないか。
ところが、人生で最も多くの時間を使っている会社員生活については、ほぼ自動更新している人も多い。
去年働いた。だから今年も働く。今年働いた。だから来年も働く。もちろん、それで問題がなければいい。
問題なのは、「自動更新していることに自分で気づいていない場合」です。
同僚のFIREによって心がザワついたなら、一度だけ更新画面を開いてみる。例えば、こんな質問です。
| 確認すること | 自分への質問 |
|---|---|
| お金 | 今辞めたら何年生活できるか |
| 仕事 | 嫌なのは会社そのものか、今の部署や上司なのか |
| 時間 | あと何年働くことなら納得できるか |
| 健康 | 今の働き方を5年、10年続けられるか |
| 生活 | FIRE後に本当に必要な年間生活費はいくらか |
| 選択肢 | 完全退職以外のルートはあるか |
| 退職条件 | どんな条件が揃えば自分は会社を降りるのか |
ここで出た答えが、「意外と今の会社は悪くない」でも構いません。
それはかなり価値のある結論です。同僚が辞めたからといって、自分まで辞める必要はありません。
むしろ、「自分は資産も増えているし、この仕事ならあと5年くらい続けてもいい」と納得して働くなら、それは以前より主体的な会社員生活です。
同じ「働き続ける」でも、「何となく続けている会社員」と「辞める選択肢を知ったうえで続けている会社員」は少し違います。
後者には、選択があります。FIREの価値は会社を辞めることだけではなく、「会社員を続けることまで自分で選べるようになること」にもあります。
「あの人にはできた」を、そのまま自分の必要資産にしない
同僚の早期リタイアで最も危険なのは、相手の退職そのものより、「相手の数字を自分の正解にしてしまうこと」です。
同僚が4,000万円で辞めた。なら、自分も4,000万円で辞められる。同僚が55歳で辞めた。なら、自分も55歳で辞めなければ遅い。こういう考え方です。
FIREでは条件による差が非常に大きいです。賃貸か持ち家か。独身か家族持ちか。月15万円で暮らすのか、25万円必要なのか。退職金はいくらか。何歳から年金を受け取るか。FIRE後に少し働くのか。親の介護や住宅修繕などを見込むのか。
だから同僚の退職は、「可能性がある」という証拠にはなっても、「自分も同じ条件でできる」という証拠にはなりません。ここを区別したいです。
同僚がFIREしたというニュースから得るべきものは、「自分も同じ金額を貯めなければ」ではなく、「自分の場合はいくらあれば選択肢になるのか調べてみよう」という問いです。
この差は大きいです。他人の数字を追い始めると、FIREは競争になります。
自分の数字を調べ始めると、FIREは設計になります。
▶ FIREに必要な資産はいくら?|独身40代の早期リタイア資金を考える / FIRE計画の羅針盤
特に40代になると、若い頃ほど無限に時間があるわけではありません。
だからこそ、他人の20年分の資産形成を一晩で追いかけようとせず、自分の残りの会社員期間、生活費、資産、年金、退職金などから現実的な出口を作る方が意味があります。
早期リタイアしなくても、先に取り戻せる自由はある
ここまで考えても、「でもやっぱり羨ましい」という気持ちは残るでしょう。私は残ります。
そこで大切なのは、自由を完全FIREまで全部先送りしないことです。
例えば55歳で会社を辞める計画でも、現在45歳ならあと10年あります。
10年間すべてを、「FIREしたら自由になる」で耐える必要はありません。
有休をきちんと使う。昇進を断る。残業を減らす。不要な社内競争から降りる。生活費を下げて、給与への依存度を少しずつ下げる。資産が増えた分、会社で無理をしない。週末を仕事の回復だけに使わない。会社以外の人間関係や居場所を作る。こうした小さな自由は、FIRE前から取り戻せます。
FIREを「0か100か」にすると、「今 = 不自由」・「退職後 = 自由」という二分法になります。
でも実際には、自由には段階があります。資産100万円でも、無理な飲み会を一つ断れるかもしれない。1,000万円あれば、転職時に少し強気になれるかもしれない。2,000万円あれば、役職を断っても怖くないかもしれない。
必要資産が見えてくれば、「あと3年」という具体的な出口が作れる。
経済的自立は、退職日に突然100%になるわけではありません。
「資産が増えるほど、会社に対するNOの選択肢が少しずつ増える」、この途中経過を使わないのはもったいない。
同僚のFIREを見て羨ましいと思ったなら、「自分も今すぐ辞めるか」ではなく、「今の自分でも取り戻せる自由は何か」を考えてみる。それなら比較が行動へ変わります。
同僚との関係が微妙になるのは、共有していた“会社員の物語”が終わるから
もう一つ、同僚の早期リタイアには人間関係の問題があります。
会社員同士では、愚痴そのものが関係を作っていることがあります。
上司が面倒だ。また会議が増えた。給料が上がらない。定年まで長い。月曜日が嫌だ。
こういう会話には、単なる不満以上の役割があります。「あなたも同じ場所にいる」という確認です。
だから、二人のうち一人が会社を辞めると、この前提が崩れます。
それまで、「お互い大変だな」だったものが、一方は会社へ行き、一方は行かない。一方は人事評価を気にし、一方は気にしない。一方は月曜日を迎え、一方は曜日そのものをあまり意識しない。
同じ話題を共有していた二人の時間軸がズレ始めます。これは、誰かが裏切ったという話ではありません。
「共有していた“会社員という物語”が終わっただけ」です。
だから早期リタイアした同僚を前に、微妙な距離感が生まれることはそれほど不思議ではありません。
逆にFIREした側から見ても、会社員時代の同僚との関係が以前と同じままとは限りません。
近年の退職後の人間関係を扱った研究でも、退職後しばらくは元同僚との接触が維持・増加する場合がある一方、その後は接触頻度が低下する傾向が報告されています。
つまり、退職は給料だけを変えるイベントではありません。
人間関係の接着剤だった「同じ会社で働いている」という条件まで外します。
これも、身近な同僚のFIREがSNSのFIRE報告より強く刺さる理由です。
「自分も選べた」は、まだ「自分も選べる」に変えられる
同僚が早期リタイアしたとき、「自分も選べたのに」と思う。これは過去形です。
もっと早く投資していれば。もっとお金を貯めていれば。もっと仕事を考えていれば。そうやって過去を振り返る。
でも、40代や50代なら人生が終わったわけではありません。
55歳で完全FIREは難しくても、58歳ならできるかもしれない。
完全FIREは無理でも、サイドFIREなら可能かもしれない。
今の会社を辞めるのは難しくても、年収を少し下げた仕事へ移れるかもしれない。
今すぐ退職できなくても、「あと5年」という出口を作れるかもしれない。
つまり、「自分も選べた」という後悔は、「これからは自分も選べる」へ変換できます。
ここが重要です。同僚の人生は、自分が出遅れたことを証明する採点表ではありません。
会社員以外にもルートがあることを見せてくれた、一つのサンプルです。そこから何を選ぶかは別の話です。
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実際に退職へ近づくほど、資産配分、現金、社会保険、信用、住まい、退職後の生活など、考えることは増えていきます。
だからこそ、同僚の退職届を見て翌日に自分も辞表を書く必要はありません。
ただ、自分の人生の更新画面を開く。それだけでも十分です。
まとめ|モヤモヤしたなら、同僚ではなく「自分の選択肢」を見てみる
同年代の同僚が先に早期リタイアすると、なぜモヤモヤするのでしょうか。
一つには社会的比較があります。自分と似た相手だからこそ、自分との差が気になる。
でも、それだけではありません。同僚が会社員というレールから降りることで、「会社員を続けるしかない」という前提そのものが崩れる。これが大きい。
それまで自動的に続いていた会社員生活が、突然、「自分が続けると選んでいる人生」として見えてくる。
そこから、もっと早く投資していれば。もっと貯めていれば。もっと別の働き方を考えていれば。
反実仮想が始まり、「自分も選べた」が刺さります。だからモヤモヤする。
でも、この感情を無理に消す必要はありません。むしろ使えばいい。
何が羨ましかったのか。資産なのか。時間なのか。会社へ行かなくていいことなのか。自分で辞めると決められたことなのか。嫌なら働かなくてもいいという選択肢なのか。
ここを分解すると、自分が本当に欲しいものが見えてきます。
もし欲しいのが時間なら、今の働き方から少し取り戻せるかもしれない。
経済的安心なら、FIRE必要資産を計算して積み立てを始めればいい。
会社そのものから離れたいなら、完全FIREだけでなく転職やサイドFIREもある。
人生の主導権が欲しいなら、「いつ、どんな条件なら辞めるか」を自分で決めておく。
つまり同僚への嫉妬は、「お前も今すぐ会社を辞めろ」という命令ではありません。
「今の人生、本当にこのまま自動更新でいいのか?」という通知です。
通知を無視して会社員を続けるのも自由です。
開いて内容を確認し、「今の会社でまだ働こう」と決めるのも自由です。
あるいは、自分なりの出口を作り始めてもいい。
大切なのは、隣の同僚と同じ人生を選ぶことではありません。
同僚が先に会社を降りたことで初めて見えた「自分の選択肢を、自分で一度確認すること」です。
FIREは、誰が一番早く会社を辞めるかを競うゲームではありません。同僚より多く資産を作るゲームでもありません。そして、退職した人が勝ち、働き続ける人が負けという話でもありません。
経済的な余裕を使って、「働くしかない」を「働くこともできる」に変える。
その状態を作ることこそ、FIREのかなり大きな価値だと思います。
だから、同僚の早期リタイアを聞いて心がモヤモヤしたなら、その感情を恥ずかしがるより、一度だけ中身を覗いてみる。
そこに書かれているのは、おそらく同僚への評価ではありません。
「自分はこれから、どう生きたいのか」という、自分宛ての質問なのだと思います。
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※本記事は、早期リタイア、FIRE、退職、転職または特定の資産形成方法を推奨するものではありません。退職の可否や適切な時期は、金融資産、生活費、家族構成、住居、退職金、年金、健康状態、税金・社会保険、再就職可能性その他の個別事情によって異なります。
※本文で紹介した心理学・退職行動に関する研究は、社会的比較や意思決定を考えるための一般的な参考情報です。海外の研究結果を日本の会社員やFIRE希望者すべてにそのまま当てはめられるものではありません。
※投資には元本割れや価格変動等のリスクがあります。FIREに必要な資産額や運用計画を検討する場合は、公的機関や金融機関等の最新情報を確認し、必要に応じて税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーその他の専門家への相談もご検討ください。



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