積立投資で資産が増えるほど「暴落のダメージ」は大きくなる?|資産が増えた40代FIREが知るべきドルコスト平均法の限界 / FIRE計画の羅針盤

入金力と相場の交差点に立ったメガネのおじさんが、これまで一緒に歩んできた「積立」のキャラクターに別れを告げ、新たな資産管理のステージへ進もうとしている青基調の実写風アイキャッチ。道路標識には「入金力」と「相場」が示され、暴落チャートやポートフォリオ資料も描かれており、資産が増えた40代FIREにおけるドルコスト平均法の限界と主役交代を表現している。 FIRE計画の羅針盤

新NISAで毎月3万円、5万円、10万円。相場が上がっても下がっても、決めた金額を淡々と積み立てる。
長期の資産形成では、とても合理的な方法の一つです。
相場の高値や安値を当てようとせず、価格が高いときには少なく、安いときには多く買う。
ドルコスト平均法は、「いつ買えばいいのか分からない」という投資初心者にも使いやすく、相場を毎日見なくても資産形成を続けやすい仕組みです。

ただし、40代になって投資資産が1,000万円、3,000万円、5,000万円と増えてくると、同じ積立投資をしていても、その意味は少しずつ変わってきます。
例えば100万円を運用している人が20%の暴落を受ければ、評価額の減少は20万円です。
ところが5,000万円なら、同じ20%でも1,000万円減ります。

もちろん、20%は20%です。資産が増えたから市場下落率そのものが大きくなるわけではありません。
ここでいう「暴落のダメージが大きくなる」とは、減少する「金額」が大きくなること、そして毎月の積立額が既に持っている資産全体へ与える影響が、相対的に小さくなることを意味します。

資産100万円に対する月3万円積立と、資産5,000万円に対する月3万円積立は、同じ「月3万円積立」でも役割がまったく違います。
つまり、資産形成にはある時点から、「『積立が主役の時代』から『保有している資産が主役の時代』への交代」が起きます。
この変化を知らずに、20代の頃と同じ感覚で「暴落しても積立しているから大丈夫」、「下がったら安く買えるからむしろ歓迎」と考えていると、FIREが近づいた40代では少し危ういことがあります。

今回はドルコスト平均法を否定するのではなく、「資産が増えた後、積立投資の役割がどう変わるのか」を考えてみます。

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  1. ドルコスト平均法は何をしてくれるのか
  2. 積立は「買い方」であって「守り方」ではない
  3. 月3万円積立の「存在感」は資産が増えるほど小さくなる
  4. 20%暴落すると、積立額との大きさが逆転していく
  5. 「暴落は買い場」が間違いなのではなく、自分のステージが変わる
  6. 資産形成には「入金力と相場の交差点」がある
  7. 一年かけて貯めた金額が、一日で動くようになる
  8. 40代FIREでは「積立できる残り年数」も短くなる
  9. 「積立しているから大丈夫」と「資産配分が大丈夫」は別物
  10. 資産が増えたら「何本積み立てるか」より「全体を何%持っているか」
  11. だからといって、資産3,000万円で積立をやめる必要はない
  12. 資産額が増えたら見るべき数字は「積立額」から増えていく
  13. 20%下落に耐えられる人が、5,000万円でも耐えられるとは限らない
  14. FIRE直前では暴落が「買い場」から「退職延期イベント」になることもある
  15. 現金は「積立を邪魔する遊休資金」ではなくなる
  16. 積立投資には“賞味期限”があるのではなく、役割が変わる
  17. 40代FIREは「入金ゲーム」から「資産管理ゲーム」へ移る
  18. 資産が増えた40代が年1回だけ確認したい「主役交代チェック」
  19. 資産が増えたから守りに入る、でもない
  20. まとめ|積立投資が弱くなるのではなく、自分の資産が大きくなった
  21. こちらの記事もあわせてどうぞ

ドルコスト平均法は何をしてくれるのか

最初に、「ドルコスト平均法」そのものを確認しておきましょう。
ドルコスト平均法とは、「価格の上下にかかわらず、一定額を定期的に投資していく方法」です。

米国証券取引委員会(SEC)の投資家向けサイトInvestor.govでも、同額を定期的に投資することで、価格が低いときには多く、高いときには少なく購入する仕組みとして説明されています。
金融庁の資産形成教材でも、定額購入によって投資時期を分散し、一度に資金を投入した場合に比べて購入タイミングによる影響を抑える考え方が紹介されています。

ここで大事なのは、ドルコスト平均法が主に働く対象です。それは、「これから投資するお金」です。
今月3万円。来月3万円。再来月3万円。相場が下がれば、次の3万円でより多くの口数を買えます。相場が上がれば少ない口数を買います。
それを繰り返すことで、一度に高値で買ってしまうリスクを和らげやすくします。

ところが、すでに買ってある3,000万円についてはどうでしょう。
明日株式市場が20%下がっても、「毎月3万円積み立てている」という事実が、その3,000万円を値下がりから守ってくれるわけではありません。
ここに、積立投資で最も誤解されやすいところがあります。

積立は「買い方」であって「守り方」ではない

積立投資を長く続けていると、「自分はドルコスト平均法を使っているから、相場が下がっても大丈夫」という感覚を持ちやすくなります。
確かに、下落後も積立を続けられるなら、以前より安い価格で追加購入できます。
長期投資を続けるうえでは大きなメリットです。
ただし、積立投資はあくまで「新しい資金をどう市場へ投入するかという買い方」です。

すでに保有している資産の価格変動リスクを直接小さくする仕組みではありません。
例えば株式1,000万円を持ちながら月3万円積み立てている人と、株式5,000万円を持ちながら同じ月3万円を積み立てている人がいるとします。
どちらも「月3万円積立」です。でも、総資産に対する3万円の存在感は大きく違います。

「資産形成」という“安全そうな言葉”の罠|新NISA・積立投資でも消えないリスクを40代独身目線で考える / FIRE計画の羅針盤

積立投資は、投資リスクを消す魔法ではありません。むしろ資産が大きくなってきたら、「毎月何万円買うか」と「既に何千万円持っているか」を別々に考える必要が出てくるのです。

月3万円積立の「存在感」は資産が増えるほど小さくなる

では、数字で見てみましょう。毎月3万円、年間36万円を積み立てているとします。

分かりやすくするため、「年間積立額 ÷ 現在の投資資産額」を便宜的に「積立影響度」と呼びます。
積立額が既存資産に対してどれくらいの大きさなのかを見るためだけの簡易指標です。

現在の投資資産年間積立額積立影響度
100万円36万円36.0%
500万円36万円7.2%
1,000万円36万円3.6%
3,000万円36万円1.2%
5,000万円36万円0.72%

資産100万円のとき、年間36万円の積立はかなり大きな力を持っています。
今ある資産の36%に相当する新しいお金が、一年間で市場へ入ってくるからです。

ところが資産3,000万円になると1.2%。5,000万円なら0.72%です。
同じ月3万円でも、資産形成初期にはポートフォリオを大きく動かす力があったのに、資産が増えるほど「追加するお金」の影響は相対的に小さくなっていきます。

これは積立投資が悪くなったのではありません。「資産が積立額より大きく育った結果」です。
むしろ資産形成としては喜ばしいことなのですが、その瞬間から投資のゲームが少し変わります。

20%暴落すると、積立額との大きさが逆転していく

今度は同じ資産額に20%の下落が起きた場合を見てみます。単純化のため、その瞬間の価格下落だけを比較します。

投資資産20%下落時の減少額年間積立36万円との比較
100万円20万円年間積立額の方が大きい
500万円100万円積立額は減少額の36%
1,000万円200万円18%
3,000万円600万円6%
5,000万円1,000万円3.6%

ここで言いたいのは、「36万円積み立てれば20万円の損を取り戻せる」という話ではありません。
市場価格がその後どう動くかは分からず、積立額と評価損を単純に相殺できるものでもありません。
見るべきなのは「大きさの違い」です。

資産100万円の時代なら、暴落による20万円の値下がりに対して、年間36万円の新規資金は非常に大きな存在です。
下がった価格で新しく買える金額も、既存資産に対して十分な規模があります。

一方、資産5,000万円が20%下落すると1,000万円です。
そこへ年間36万円を積み立てても、安値で買えるメリットはありますが、5,000万円という既存資産全体から見れば小さな追加になります。

だから資産が増えた後に、「暴落したら安くたくさん買えるからラッキー」という言葉だけで安心するのは、少し無理があります。
安く買えるのは本当です。でも、安く買える新規資金より、「既に持っている資産の値動きの方が圧倒的に大きくなっている」かもしれないです。

「暴落は買い場」が間違いなのではなく、自分のステージが変わる

投資初心者へ「暴落時にも積立を続けよう」と説明することには意味があります。
値下がりを見て怖くなり、積立を止めたり、すべて売却したりしてしまえば、長期投資そのものを続けられなくなるからです。
Investor.govでも、市場が下落したときに一定額の積立を続けることで、同じ金額でより多くの口数を購入できるという考え方が紹介されています。

ただし、「暴落は買い場」という言葉の意味は、資産形成の段階によって変わります。
資産100万円で、今後20年間給与から積み立てる人なら、将来入ってくる投資資金の方が今の資産よりはるかに大きいかもしれません。

ところが資産5,000万円で、FIREまであと2年の40代会社員なら事情が違います。
あと2年間に積み立てる金額が年間120万円でも240万円です。
一方、現在の5,000万円は10%動くだけで500万円変動します。
ここではもう、投資人生の主役が「これから入れるお金」から「すでに持っているお金」へ移り始めています。

資産形成には「入金力と相場の交差点」がある

ここで、もう一つ別の数字から見てみましょう。
年間の積立額と、保有資産が5%動いた金額が同じになるところを計算します。

例えば年間60万円を積み立てている人なら、60万円 ÷ 5% = 1,200万円です。
資産1,200万円が5%動けば60万円。つまり、年間かけて新しく入れるお金と、保有資産がたった5%動いた金額が同じになります。同じ計算をすると次のようになります。

年間積立額5%の値動きが積立額と同じになる資産額
36万円720万円
60万円1,200万円
120万円2,400万円
180万円3,600万円

もちろん「資産1,200万円を超えたら何かを変えなければならない」という境界ではありません。
ただ、この数字は一つの感覚を与えてくれます。年間60万円を必死に積み立てている横で、資産1,200万円なら5%の相場変動だけで60万円動く。資産3,000万円なら2%動くだけで60万円です。
ここまで来ると、「いくら入金できるか」だけを考える資産形成から、「今ある資産をどう持つか」を考える資産形成へ移る必要があることが分かります。
つまり「入金力と相場の交差点」に差し掛かったということになります。

一年かけて貯めた金額が、一日で動くようになる

資産が増えてくると、投資を続けている人なら一度は妙な感覚を経験します。
一年かけて100万円貯めた。毎月節約して、賞与も投資へ回して、ようやく100万円増えた。
ところが相場が悪い日に、資産全体が150万円減る。翌週には100万円戻る。
俺が一年頑張った100万円って何だったんだ」という世界です。

これは資産形成が失敗したわけではありません。反対です。
自分の労働による入金より、資産そのものが生み出す値動きの方が大きくなるところまで来た」ということです。

資産100万円なら、給与が主役です。資産500万円でも、入金力の存在感はかなりあります。
しかし3,000万円、5,000万円と増えてくると、給与から10万円多く投資したかどうかより、株式比率が何%なのか、どの市場へ投資しているのか、現金はいくらあるのかの方が資産全体へ大きな影響を与えます。ここで資産形成の主役が交代します。

40代FIREでは「積立できる残り年数」も短くなる

40代FIREには、さらにもう一つ事情があります。給与から積み立てられる期間が、20代より短いことです。
25歳で投資を始め、65歳まで働くなら40年間あります。途中で大きな暴落が起きても、その後も給与から新しい資金を長期間投入できる可能性があります。
ところが48歳で、52歳にFIREする予定なら、会社員給与から積み立てられる期間はあと4年です。
FIREした後も副収入などから投資する人はいるでしょうが、完全FIREなら給与という大きな新規投資資金はなくなります。

するとドルコスト平均法の強みの一つである、「下がったときにも、新しいお金を追加して買い続けられる」という力そのものが小さくなります。

FIRE直前は株式比率を下げるべき?|「年齢とともに守りに入る」の定説を疑う / FIRE計画の羅針盤

FIREが近づくほど重要なのは、単純な年齢ではありません。
給与があと何年入るのか」、「資産をいつから使うのか」、「積立から取り崩しへ、いつ切り替わるのか」、この時間軸です。

「積立しているから大丈夫」と「資産配分が大丈夫」は別物

ここまで来ると、積立投資と資産配分を分けて考える必要があります。
例えば資産5,000万円のほぼすべてを株式へ投資していて、毎月5万円を積み立てている人がいるとします。
長期・積立・分散をしています」と言われれば、一見かなり安心感があります。

しかし、毎月5万円の「積立」をしていることと、5,000万円の「資産配分」が自分のFIRE計画に合っていることは別問題です。

積立方法が合理的でも、資産全体としてリスクを取りすぎていることはあります。
逆に、株式比率が低すぎて、40代から数十年間のFIRE生活に必要な成長力を十分に持てていない場合もあります。

だから「積立か一括か」だけで投資を考えない。「どう買うか」と「何をどれくらい持つか」は別の問題です。


資産が増えたら「何本積み立てるか」より「全体を何%持っているか」

新NISAの積立設定を見ていると、どうしても毎月の金額が目に入ります。
オルカン3万円。S&P500を2万円。日本株ファンド1万円。合計6万円。
すると、「ちゃんと6万円投資している」という安心感が出ます。

でも資産3,000万円を持っているなら、その6万円は総資産の0.2%です。
もちろん毎月続ければ意味があります。ただ、資産全体のリスクを考えるなら、積立設定画面より先に3,000万円の中身を見る必要があります。

世界株式が何%。日本株が何%。現金が何%。会社の持株会や自社株はいくらあるのか。近いうちに使う資金まで市場へ入っていないか。資産額が増えた40代ほど、この視点が重要になります。

オルカンを買っても分散できていない?|40代会社員が見落とす“人生ポートフォリオ”の集中リスク / FIRE計画の羅針盤

積立先が分散されていても、人生全体では会社、給与、自社株、住宅などが同じリスクへ偏っていることがあります。
資産が大きくなるほど、月々の買い方より、「既に出来上がったポートフォリオ全体を見る時間」を増やした方がいいのです。

だからといって、資産3,000万円で積立をやめる必要はない

ここで一番やってはいけない誤解があります。「じゃあ資産が増えたら積立投資は意味がないのか」。
それは違います。積立の相対的な影響が小さくなることと、積立する意味がなくなることはまったく別です。

定期積立には、相場を予想して売買タイミングを決めなくて済むという大きな利点があります。
投資を自動化でき、余った給与を継続的に資産へ移す仕組みにもなります。
さらに、既存資産を売却せず、新規積立によって少しずつ資産配分を調整することもできます。

例えば株式比率が高くなりすぎたなら、その後の新規資金を現金や別の資産へ振り向ける方法もあります。
資産が増えた後の積立は、「暴落から守ってくれる盾」ではなく、「ポートフォリオを少しずつ整える補助エンジン」くらいに考えると分かりやすいと思います。

資産額が増えたら見るべき数字は「積立額」から増えていく

資産形成初期なら、「家計の余剰資金」を増やすことがかなり重要です。
月1万円を3万円へ。3万円を5万円へ。年収を上げる。固定費を下げる。新NISAを利用する。
入金力を高めるほど、資産形成は前へ進みやすくなります。

でも資産が大きくなると、それだけでは足りません。
例えば3,000万円を運用しているなら、毎月の積立額と一緒に、「株式が30%下落したらいくら減るか」、「そのとき何年分の現金が残るか」、「FIRE予定日をずらさずに済むか」、「生活費を資産から出し始めるのはいつか」、こうした数字も見るようになります。

投資アレルギーの人はFIREできない?|「株は怖い、現金だけも不安」な40代の“取れるリスク”と“取れないリスク” / FIRE計画の羅針盤

リスク許容度とは「株価が下がっても平気と言える性格」の話だけではありません。
実際にいくら減ったら生活計画へ影響するのか」、そこまで金額へ直して初めて、資産が増えた後のリスクが見えてきます。

20%下落に耐えられる人が、5,000万円でも耐えられるとは限らない

自分は過去に20%下落を経験したから大丈夫」。これは一見頼もしい経験です。
でも、そのとき資産が300万円だったなら、20%下落で60万円です。資産5,000万円なら1,000万円。
下落率は同じ。グラフの形も同じ。でも人間が見るのはパーセントだけではありません。
1,000万円減った証券口座を見て、本当に同じ感覚でいられるかは別問題です。

これは理屈ではなく、「金額の心理」です。資産額が増えると「投資経験が長いからリスク許容度も高くなっている」と考えがちですが、同時に失う金額も大きくなっています。
だからリスク許容度も、資産100万円時代の経験をそのまま使わず、今の金額で見直す必要があります。

FIRE直前では暴落が「買い場」から「退職延期イベント」になることもある

さらにFIREを目指す人には、一般的な長期投資家とは違う事情があります。「FIRE予定日」があることです。
例えば3年後に5,000万円でFIREする予定だった人が、直前に20%下落して4,000万円になったとします。
長期投資だけを考えるなら、「そのうち戻るかもしれないので積立継続」という判断もできます。
でもFIRE予定がある人には、会社を予定どおり辞めるのか、あと1年働くのか、生活費を下げるのか、現金を多めに使うのかという人生上の判断が加わります。

暴落が単なる「安値で買えるイベント」ではなく、「退職予定そのものを動かすイベント」になる可能性があります。

FIRE中に暴落が来たらどうなる?|40代独身のリアルと生存戦略 / FIRE計画の羅針盤

特にFIRE開始直後は、資産を取り崩しながら市場下落を受けるシーケンスリスクも考える必要があります。
だからFIREが近づくほど、「下がったら買う」という入口の発想だけではなく、「下がっても予定どおり生活できるかという出口の発想」が重要になります。

現金は「積立を邪魔する遊休資金」ではなくなる

資産形成初期には、現金を多く持つことがもったいなく感じることがあります。
100万円余っているなら新NISAへ入れた方がいいのではないか。普通預金に置いても増えない。インフレにも弱い。その感覚も理解できます。

しかしFIREが近づくと、現金の役割は変わります。暴落時に株式を売らずに生活できる。退職後の税金や社会保険料を払える。突然の支出にも対応できる。そして市場が回復するまで待つ時間を買える。

FIREを目指す人は現金いくら持つべきか?|キャッシュ比率の最適解 / FIRE計画の羅針盤

現金には株式のような期待リターンはありません。
でも資産3,000万円、5,000万円を持つようになると、「全部を最大効率で増やす」より「大きな資産を不利なタイミングで売らなくて済む」という価値が大きくなってきます。
これも、積立が主役だった頃には見えにくかった変化です。

積立投資には“賞味期限”があるのではなく、役割が変わる

ここまで読むと、「ドルコスト平均法には賞味期限がある」と表現したくなるかもしれません。
でも厳密には少し違います。積立投資そのものに期限が来るわけではありません。
資産が大きくなっても、給与がある限り新規投資を続ける意味はあります。
価格が下がったときに多く買える仕組みも変わりません。

変わるのは、「資産形成全体の中で積立が占める役割の大きさ」です。
資産100万円の頃は主役。資産1,000万円では大事な一員。資産5,000万円では、既存資産という巨大な主役を支える補助役になっていく。そんなイメージです。

だから「積立をやめるか続けるか」という二択ではなく、「積立以外に何を見るべき段階へ来たのか」と考える方が自然です。

40代FIREは「入金ゲーム」から「資産管理ゲーム」へ移る

20代の資産形成では、「入金力」が圧倒的に重要です。
投資元本が少ないので、運用利回りを1%高めるより、毎月1万円多く積み立てる方が効くこともあります。

40代になり資産が育つと、この関係が逆転していきます。
年間100万円積み立てていても、3,000万円が10%動けば300万円です。5,000万円なら500万円。
この段階になると、資産形成は「毎月いくら証券口座へ入れるか」というゲームだけではありません。

どう分散するか。どれくらい現金を残すか。FIREまで何年あるか。暴落時に売る必要があるか。資産をいつ生活費へ変えるか。ここが中心になります。
資産には「いつ使える状態にしておく必要があるのか」という時間軸もあります。

債券は「利回り」より満期日で選ぶ?|40代FIREが見落とす“お金を使える日のズレ” / FIRE計画の羅針盤

積立設定は一度作ればかなり自動化できます。でも、資産全体の役割はFIRE予定日が近づくたびに変化します。
積立は自動化しても、人生まで自動運転にはできない」、ここが40代FIREの難しくて面白いところです。

資産が増えた40代が年1回だけ確認したい「主役交代チェック」

では、資産形成の主役が入金から保有資産へ移っているか、どう確認すればいいでしょうか。
難しい計算は必要ありません。次のように考えるだけでも十分です。

確認項目見るポイント
年間積立額一年で新しくいくら入れられるか
投資資産額積立額の何倍まで育ったか
10%下落額相場10%でいくら動くか
FIREまでの年数給与から積み立てられる期間はあと何年か
現金・守り資産暴落時に売らずに済む余裕があるか
使い始める時期いつから資産を生活費へ変えるか

例えば年間120万円積み立てていて、投資資産600万円なら、まだ入金力はかなり大きな存在です。
同じ年間120万円でも資産5,000万円なら、市場が2.4%動くだけで120万円です。

積立額は変わっていない。でも自分の資産形成の構造は大きく変わっています。
その変化に気づいたら、積立額をさらに増やすことだけではなく、ポートフォリオ全体を見る段階へ来ています。

資産が増えたから守りに入る、でもない

ここでもう一つ注意したいのは、「資産が増えたら株を減らせばいい」と短絡しないことです。
5,000万円持っていても、生活費が年間150万円で、まだ給与収入があり、FIRE予定も10年以上先なら、比較的大きな値動きを受け入れられる人もいるでしょう。
反対に3,000万円でも、来年FIREして年間300万円を取り崩す予定なら、短期の市場変動が生活へ与える影響は大きくなります。

つまり重要なのは資産額そのものではありません。
資産額 × 資産配分 × 使い始める時期 × 生活費 × 給与の残り期間」です。

だから「3,000万円を超えたら株式50%」のような万能ルールは作れません。
積立の影響が小さくなったことは、守りへ一律に移る合図ではなく、「自分の資産全体を初めて本気で管理する合図」と考えるくらいがちょうどいいと思います。

まとめ|積立投資が弱くなるのではなく、自分の資産が大きくなった

積立投資は強い仕組みです。一定額を定期的に投資することで、投資時期を分散し、高値や安値を毎回当てようとせずに長期の資産形成を続けやすくできます。
新NISAとの相性が良いのも、こうした自動化や継続性があるからです。

ただし、ドルコスト平均法にもできることと、できないことがあります。
できるのは、「これから買うお金の投入時期を分散すること」です。
できないのは、「すでに持っている大きな資産を暴落から守ること」です。

資産100万円のとき、年間36万円の積立は非常に大きな力を持っています。
資産5,000万円になると、年間36万円は0.72%です。
同じ20%の暴落でも、100万円なら20万円、5,000万円なら1,000万円動きます。

だから「積立を続けているから、暴落しても安く買えて大丈夫」という説明は、資産形成初期にはかなり心強くても、資産が増えるにつれてそれだけでは足りなくなります。

でも、これは悪いニュースではありません。積立投資の効果がなくなったのではなく、「自分の資産が、毎月の入金より大きな存在へ育った」、それだけです。
ここから資産形成の主役が交代します。「給与から何万円入れるか」の世界から、「既に持っている何千万円をどう持つか」という世界へ移ります。

40代でFIREが見えてきたら、積立をやめる必要はありません。
淡々と続けながら、同時に株式比率、現金比率、集中リスク、FIREまでの残り年数、資産を使い始める時期を見る。
暴落したらいくら減るのかを、パーセントではなく円でも確認する。
そして、その金額が下がっても会社を予定どおり辞められるのかを考える。
ここまで来ると、積立投資はもう初心者向けの「毎月買う仕組み」だけではありません。
大きくなった資産をどう扱うかを考える入口になります。

積立投資は、資産を作るには強いですが、「作った資産を守る仕事」まで全部やってくれるわけではありません。
そのことに気づいたときが、積立投資を卒業するときではなく、「資産形成そのものが次のステージへ進んだとき」なのだと思います。

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・資産が増えた後に、すべてを投資へ回さず現金を持つ意味を考える記事です。

※本記事における「積立影響度」「入金力と相場の交差点」「資産形成の主役交代」等は、積立額と既存資産の関係を分かりやすく説明するための便宜的な表現であり、正式な金融・経済用語ではありません。
※本文中の資産額、積立額、下落率等は考え方を説明するための仮想例です。「年間積立額」と「暴落時の評価額減少」を比較した表は、それぞれの金額規模を理解するためのものであり、積立によって評価損を直接相殺できることや、将来の市場回復を保証するものではありません。
※ドルコスト平均法は投資時期を分散する方法の一つですが、利益を保証するものではなく、価格下落による損失を防止するものでもありません。投資対象自体の価格変動、信用、為替その他のリスクは残ります。
※本記事は特定の金融商品、新NISAでの特定商品、積立額、株式比率、現金比率等を推奨するものではありません。実際の投資判断は、ご自身の収入、生活費、資産、負債、年齢、FIRE予定時期、投資期間、リスク許容度、必要資金の時期等を踏まえてご判断ください。

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