個別株は何銘柄まで増やしていいの?|40代FIREが考える集中と分散のちょうどいい境界線 / FIRE計画の羅針盤

青基調の牧場で、大量の羊に囲まれたメガネの40代男性が頭を抱えて立ち尽くす実写風アイキャッチ。個別株を何銘柄まで増やすべきか迷うFIRE投資家の悩みを表現した一枚。 FIRE計画の羅針盤

個別株を買い始めると、最初は1銘柄、2銘柄だったポートフォリオが、いつの間にか増えていきます。
「この会社も面白そう」、「この業界も持っておきたい」、「半導体だけでは怖いから銀行株も」、「日本株だけでは不安だから米国株も」。
そんなふうに買い足しているうちに10銘柄、20銘柄と並び、証券口座の保有一覧がちょっとした株価指数のようになっていた、という人もいるでしょう。私もその一人です。

では、「個別株はいったい何銘柄まで増やしていいのでしょうか」。
5銘柄では集中しすぎなのか。10銘柄なら十分なのか。20銘柄あれば分散投資と呼べるのか。それとも30銘柄、50銘柄と増やした方が安全なのでしょうか。

先に答えを言えば、万人共通の「○銘柄が正解」という数字はありません。
個別株の銘柄数には、少なすぎることで起きる問題と、多すぎることで起きる問題の両方があります。
しかも、保有銘柄数だけを数えても、本当に分散できているかどうかは分かりません。

40代でFIREを目指すのであれば、狙うべきなのは「最も儲かりそうな銘柄数」でも「最も安全そうな銘柄数」でもないでしょう。
重要なのは、「1社の失敗でFIRE計画全体が壊れず、それでいて自分で管理できる範囲に収まっていること」です。

この記事では、「個別株は何銘柄持つべきか」というよくある問いから一歩進めて、「何銘柄まで増やす意味があるのか」を考えていきます。

スポンサーリンク
  1. 個別株は何銘柄まで増やしていい?まず全体像を整理
  2. 「銘柄を増やせば安全」は半分正しい。でも半分は間違っている
  3. 株式市場は「平均的な会社」がみんなを豊かにしてきたわけではない
  4. 分散投資は「負け株のダメージを減らす」だけではない
  5. 「今まで勝ってきた銘柄に集中すればいい」も簡単ではない
  6. 1銘柄の比率が高いとFIRE計画はどれくらい動く?
  7. 勝ち株は放っておくだけでもポートフォリオを支配する
  8. 5銘柄・10銘柄・20銘柄では何が変わる?
  9. 個別株は増やしすぎると「自作インデックス」になる
  10. オルカンやS&P500を持っている人は必要な個別株の数が変わる
  11. 個別株の上限は「管理できる銘柄数」で決める
  12. 新しい銘柄を買うより既存銘柄を増やす方がいい場合もある
  13. 新NISAだから個別株をたくさん持った方が得、ではない
  14. 40代FIREでは「市場平均に勝つ」より「一社に人生を壊されない」が大切
  15. 「個別株は何銘柄まで増やしていい?」への現実的な答え
  16. 個別株を増やす前に「その1社は何のため?」と考える
  17. 個別株の銘柄数でよくある疑問
    1. 個別株5銘柄では少なすぎる?
    2. 個別株10銘柄なら十分に分散できる?
    3. 個別株20銘柄は多すぎる?
    4. オルカンやS&P500を持っていても個別株を分散する必要はある?
    5. 銘柄数を増やせば暴落に強くなる?
  18. まとめ|何銘柄持つかより「一社へ人生を預けすぎていないか」
  19. こちらの記事もあわせてどうぞ

個別株は何銘柄まで増やしていい?まず全体像を整理

個別株の銘柄数を考えるとき、「10銘柄がベスト」、「20銘柄あれば安心」といった一つの数字だけで決めるのは少し乱暴です。
個別株だけでポートフォリオの大半を作っている人と、オルカンやS&P500など広く分散された投資信託を資産形成の中心に置き、余裕資金だけで個別株を持っている人では、個別株に求める役割がまったく違うからです。

まずは、銘柄数が増えていくとポートフォリオの性格がどう変わりやすいかを、大まかに整理してみます。

個別株の銘柄数ポートフォリオの特徴注意したいポイント
1~3銘柄かなり集中度が高い1社の業績悪化や不祥事が資産全体へ大きく影響しやすい
4~9銘柄ある程度分散するが個別企業の影響はまだ大きい業種や投資テーマが偏っていないか確認したい
10~19銘柄個別企業固有の影響を薄めやすくなるすべての会社を継続して確認できるかが重要
20~29銘柄かなり広く分散できる可能性がある保有理由が薄い銘柄まで増えていないか注意
30銘柄以上自分で小さなファンドを運用する状態に近づく管理コストに見合う違いを市場平均から作れているか考えたい

もちろん、これは「10銘柄なら安全」、「30銘柄を超えたらダメ」という意味ではありません。
米国SECが運営するInvestor.govでは、株式部分を個別株だけで十分に分散する場合、4~5銘柄では不十分であり、少なくとも十数銘柄を慎重に選ぶ必要があると説明しています。

一方、私たち個人投資家には「理論上どこまで分散できるか」だけではなく、「何社まで自分で管理できるか」という別の問題があります。

つまり、「分散するために必要な銘柄数」と「個人投資家が管理できる銘柄数」は同じではありません。
この二つの間に、自分なりの個別株ポートフォリオを作る必要があります。

「銘柄を増やせば安全」は半分正しい。でも半分は間違っている

分散投資の基本的な考え方はシンプルです。1社だけに投資していれば、その会社に何か起きたときに資産全体が大きな影響を受けます。
しかし複数の会社へ資金を分けていれば、1社の失敗がポートフォリオ全体へ与える影響は小さくできます。
金融庁も資産形成の基本として長期・積立・分散投資を挙げており、値動きの異なる複数の資産へ分散することで、価格変動をある程度抑えながら安定的な運用を目指せると説明しています。

ここまでは、よく知られた話ですが、問題は、「銘柄数を増やすこと」と「リスクを分散すること」は必ずしも同じではないことです。
たとえば10銘柄持っていても、全部が半導体関連企業だったらどうでしょうか。
会社は10社に分かれていても、半導体需要の減速、設備投資サイクル、米中関係、AI投資の鈍化といった共通の材料から影響を受けます。
銀行株を10銘柄持っていても同じです。個別企業の問題には多少強くなりますが、金利、景気、信用コストなど業界全体へ影響する変化から逃げられるわけではありません。
さらに、日本株を10社、米国株を10社持っていても、すべてAI・半導体・データセンター周辺企業なら、見た目ほど分散されていない可能性があります。

Investor.govも、分散は単に複数の株式を持つだけではなく、異なる業種や異なる値動きをし得る投資先へ広げることが重要だと説明しています。
銘柄数だけを見て「20銘柄あるから分散できた」と安心するより、「保有している会社がそれぞれ違う理由で利益を出しているか」を考えた方が、実際のリスクは見えやすくなります。

確認したい偏り10銘柄あっても偏る例なぜ確認するのか
業種半導体株ばかり業界固有の不況がまとめて効く可能性がある
地域日本企業ばかり日本固有の景気や制度の影響が大きくなる
収益源特定国への売上依存が高い企業ばかり同じ地域の景気悪化を受けやすい
為替円安恩恵銘柄ばかり円高へ転換したとき共通の逆風になり得る
テーマAI・防衛・宇宙など同じ人気テーマへ集中テーマ人気の剥落が複数銘柄へ同時に波及する可能性がある

個別株の分散では、「何社あるか」より「何種類のリスクを持っているか」を見ることが大切です。

株式市場は「平均的な会社」がみんなを豊かにしてきたわけではない

株式市場は長期的に大きな富を生み出してきました。そのため、「良さそうな個別株を長く持っていれば、だいたい報われる」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

ところが、個々の企業を一つずつ見ると景色が変わります。
アリゾナ州立大学のHendrik Bessembinder教授が2026年に公表した研究では、1926年から2025年までの米国普通株29,754銘柄が調査されています。
その結果、個別株の買い持ちリターンの中央値は「マイナス6.9%」でした。
一方、この100年間で株主にもたらされた純資産増加は約91兆ドルに達しています。さらに、長期投資家が資産を減らした銘柄は全体の約6割に及びました。

「典型的な個別株はそれほど強くなかったのに、どうして株式市場全体では莫大な富が生み出されたのか」と疑問に思うかもしれません。
理由は、「市場の成果が一部の非常に大きな勝ち組企業へ偏っているから」です。

同研究では、1926年から2025年までの約91兆ドルの純資産増加のうち、その半分をわずか46社が生み出したとされています。
これは、「個別株投資はやめた方がいい」という結論を意味するものではありません。むしろ個別株投資の面白さそのものでもあります。

何十倍、何百倍という長期リターンを生む企業は実際に存在するが、「将来どの会社がその少数の勝者になるのかを事前に選び続けることが難しい」、ここに、「個別株は何銘柄持つべきか」を考えるうえで重要なヒントがあります。

分散投資は「負け株のダメージを減らす」だけではない

分散投資というと、「1社が暴落しても他の株があるから助かる」という守りのイメージを持つ人が多いと思います。もちろん、それも大きな役割です。
しかし、先ほどの研究を反対側から見ると、もう一つ重要な意味が見えてきます。
それは、「未来の大化け株を最初からポートフォリオから外してしまうリスクを小さくすること」です。

もし株式市場全体の富の多くが少数の企業によって生み出されるのであれば、その少数を完璧に選び出せれば、大きなリターンを得られます。
問題は、未来の勝ち組企業の名前はまだ分からないことです。10年後、20年後に市場の中心になっている企業が、現在もっとも人気のある会社と同じとは限りません。
だから、広く分散されたインデックス投資には「平均点を取りに行く」以外の意味があります。
「未来の勝者が分からないから、市場そのものを広く持っておく」ためです。

外れ銘柄も大量に含まれる代わりに、将来の巨大な勝ち組企業もポートフォリオの中に残りやすくなります。
個別株でも同じ発想は使えます。1社だけへ大きく集中すれば、その会社が巨大な勝者になったときの利益は非常に大きくなります。しかし予想を外せば、その影響も大きくなります。

複数銘柄へ分ければ、1社当たりの爆発力は弱まりますが、「一つの予想を外しただけでゲームオーバーになる可能性を下げられる」、ここに集中投資と分散投資の本当のトレードオフがあります。

「今まで勝ってきた銘柄に集中すればいい」も簡単ではない

では、すでに大きく上昇している銘柄ならどうでしょうか。
過去に勝ってきた企業は、事業も強く、ブランド力があり、メディアでも高く評価されていることが多いです。
「よく分からない10社へ分散するくらいなら、実際に勝っている1社を持ち続けた方がいい」と考えたくなる気持ちは分かります。

ただし、過去の実績と未来のリターンをそのまま結びつけるのは慎重になった方がいいです。
Antti Petajisto氏が2023年に公表した研究では、1926年以降の米国個別株について、10年間の市場対比リターンの中央値はマイナス7.9%でした。
さらに、その前の5年間でリターン上位20%に入っていた「最近の勝ち組銘柄」に絞ると、その後10年間の市場対比リターンの中央値はマイナス17.8%でした。

もちろん、この研究から「上がった株はいずれ必ず下がる」と結論づけることはできません。
今後も長期間成長し続ける企業はありますし、過去の市場データが将来にもそのまま再現される保証もありません。

ただ、「ここまで勝ってきた会社だから、これからも資産の大部分を任せて大丈夫」という理由だけでは、集中投資の根拠として十分ではないことは分かります。
個別株の銘柄数を考えるときは、負けている銘柄だけではなく、「勝ちすぎた銘柄がポートフォリオを支配していないか」も確認する必要があります。

1銘柄の比率が高いとFIRE計画はどれくらい動く?

集中リスクは「危険です」と言われても、なかなか実感しにくいです。
そこで、非常に単純な例で考えてみます。他の資産価格は変わらないと仮定し、保有している1銘柄だけが50%下落した場合、その銘柄の比率によってポートフォリオ全体への影響は次のようになります。

1銘柄の資産全体に占める比率その銘柄の下落率資産全体への影響
5%-50%-2.5%
10%-50%-5%
20%-50%-10%
30%-50%-15%
50%-50%-25%

※他の資産価格が変わらないものとして単純計算。

同じ「保有株が半値になった」という出来事でも、資産全体の5%しか持っていなければ影響は2.5%です。
一方、その会社だけで金融資産の半分を占めていれば、資産全体は25%減る計算になります。

40代でFIREを目指している人にとって、この差は単なる株価の上下では済みません。
退職予定を1年延ばすのか。FIRE後の生活費を下げるのか。予定していた住み替えを延期するのか。あるいは再就職という選択肢を残すのか。
「個別企業一社の出来事が、自分の人生設計そのものを動かす状態」になります。

だから個別株の適正な銘柄数を考えるなら、「何銘柄持っているか」だけではなく、「1社に何か起きたとき、自分のFIRE計画がどれくらい動くのか」を考えた方が実用的です。

勝ち株は放っておくだけでもポートフォリオを支配する

集中投資というと、自分から一つの銘柄を大量に買った人だけの問題に見えるかもしれませんが、個別株への集中は意図せず起こります。

10銘柄をそれぞれ10万円ずつ、合計100万円買ったとします。その後、1銘柄だけが2倍になり、残り9銘柄の株価が変わらなかったとします。
全体は110万円になり、値上がりした銘柄は20万円ですから、その銘柄の比率は約18%まで上昇します。
さらにその銘柄だけが3倍になれば、全体120万円のうち30万円を占めるため、比率は25%になります。

つまり、「良い銘柄を当てたこと自体が、新しい集中リスクを作る」わけです。
投資に失敗した人だけが集中ポジションを抱えるのではありません。
むしろ大きな成功を経験した人ほど、一つの銘柄が資産全体を支配しやすくなります。

だから「20銘柄持っているから分散できている」と単純には言えません。
20銘柄あっても、1社だけで資産の40%を占めていれば、実際のポートフォリオはかなり一社依存です。
一方で、値上がりした銘柄を機械的に売ればいいという話でもありません。売却時の税金、その会社の将来性、自分の投資方針など、別の論点が入ってきます。その判断は、銘柄数の話とは分けた方が整理しやすいです。

5銘柄・10銘柄・20銘柄では何が変わる?

「いろいろ分かったけど、結局何銘柄なの?」と思う人もいるでしょう。
ここは一つの正解を出すのではなく、「銘柄数によって何が変わるか」を考えた方が分かりやすくなります。

5銘柄の場合、1銘柄を均等に持てば1社当たり20%です。一社が大きく下落したときの影響はまだかなり大きくなります。
一方で、保有企業を深く調べやすく、「なぜ持っているか」を把握しやすいというメリットがあります。

10銘柄を均等に持てば1社当たり10%です。企業固有の失敗が全体へ与える影響は5銘柄より小さくなりますが、すべて半導体、すべて高配当株といった構成なら、本当の意味で十分に分散されているとは限りません。

20銘柄を均等にすれば1社当たり5%です。一社の失敗によるダメージはさらに限定しやすくなります。
しかし今度は20社すべてについて決算や重要ニュースを確認する負担が増えてきます。

さらに30銘柄、40銘柄へ増やしていけば、一社の影響はもっと小さくできますが、その段階になると別の疑問が出てきます。「そこまで自分で個別株を集める必要があるのか」です。

個別株の銘柄数には、増やすほど良くなる直線的な関係はありません。
前半では分散効果が大きくても、ある程度から先は「もう1銘柄増やしたことによる安心」と引き換えに、管理する会社が一つ増えていきます。

だから個人投資家にとっては、「これ以上少ないと一社の失敗が怖すぎる」という下限と、「これ以上多いと自分では管理できない」という上限の間を探すことになります。

個別株は増やしすぎると「自作インデックス」になる

個別株を増やすことには、もう一つ問題があります。30銘柄、40銘柄、50銘柄とさまざまな企業を持つようになると、「ポートフォリオ全体の値動きが市場平均へ近づいていく」可能性があります。

もちろん、50銘柄持ったら自動的にTOPIXやS&P500と同じになるわけではありません。
銘柄や配分によっては、かなり特徴的なポートフォリオになります。
しかし、大型株を中心にさまざまな業種へ広く投資し、一社当たりの比率を小さくしていけば、個別株投資でありながら実質的には「自分で小さな投資ファンドを運営している状態」へ近づきます。

そこで一度考えたいのが、「それなら最初からインデックスファンドでよくないか?」という問いです。
インデックスファンドであれば、自分で数十社の決算を追い続ける必要はありません。
投資信託やETFを利用すれば、多数の企業へ比較的簡単に分散することもできます。
Investor.govも、個別の投資先だけで十分な分散を実現することは難しく、投資信託やETFを利用することで分散しやすくなると説明しています。

だからといって、個別株に意味がないわけではありません。
会社を調べ、自分なりに将来性を考え、その企業が実際に成長したときの喜びは個別株ならではです。
配当や株主優待を目的に保有する人もいますし、特定企業を応援したいという理由もあるでしょう。

ただ、50銘柄を持ち、毎日株価を確認し、決算を読み、売買判断に悩み、その結果がインデックスと大差なかったとしたら、「手間をかけて市場平均を自作しているだけ」という可能性もあります。

個別株の上限は、数学だけではなく、「ここまで増やしても、まだ個別株で持つ意味があるか」で考える必要があります。

オルカンやS&P500を持っている人は必要な個別株の数が変わる

ここは「個別株は何銘柄?」を考えるときに、かなり重要なのに忘れられやすいところです。
個別株だけを切り取って、「5銘柄では少ない」・「最低でも10銘柄」と判断することはできません。

たとえば資産形成の中心をオルカンのような広く分散された投資信託に置き、その上で余裕資金だけを5社の個別株へ投資している人がいたとします。
この人へ「個別株が5銘柄しかないから分散不足」と言うのは少し変です。
資産全体では、投資信託を通じてすでに多くの企業へ投資しているからです。
逆に、金融資産のほぼすべてを5社の個別株だけで保有している場合は、同じ「5銘柄」でも意味がまったく違います。

だから、個別株の銘柄数を考える前に、「個別株の中だけで分散を完成させるのか」、それとも、「インデックスを土台にして個別株を追加するのか」を決める必要があります。

後者なら、個別株部分まで30銘柄、40銘柄へ増やす必要性は低くなります。市場全体への分散はインデックスに任せ、個別株には「自分が特に投資したい会社へ少し厚めに投資する」という別の役割を持たせられるからです。

「個別株は何銘柄が正解か」より、「個別株に何の仕事をさせたいのか」、こちらを先に決めた方が、自分に必要な銘柄数は見えやすくなります。

▶ NISA・個別株の取扱いを楽天証券で確認する


個別株の上限は「管理できる銘柄数」で決める

個人投資家には機関投資家と違って、投資だけを考えていればいいわけではありません。
会社へ行き、仕事をして、家事をして、休んで、眠ります。
FIREを目指して投資しているのに、株式投資の管理だけで毎晩何時間も使うようになれば、自由を得るために始めた投資が新しい仕事になってしまいます。
そこで新しい個別株を追加するときは、単に「まだ買えるか」ではなく、その銘柄を持つ意味を確認してみます。

確認したいことYESならNOなら
その会社を持つ理由を自分の言葉で説明できるか保有理由が明確なんとなく保有になっている可能性
決算や重要ニュースを継続して確認できるか管理可能銘柄数を増やしすぎている可能性
既存銘柄と違う役割があるか新しい分散効果を期待できる同じリスクを増やしているだけかもしれない
1社が大きく下がっても資産計画を維持できるか集中度を許容できる可能性一社比率が高すぎる可能性
インデックスではなく個別株で持つ理由があるか個別株として保有する意味がある自作インデックス化を疑う余地がある

特に重要なのは、「保有理由を説明できるか」です。
10銘柄ならすべて説明できたのに、25銘柄になったら、「これは確か高配当だったから買った」、「国策だった気がする」、「昔ニュースで見て良さそうだった」という銘柄が混じってくるかもしれません。そうなると、分散というより「管理放棄」に近づいてきます。

個別株を増やせる上限は、「数学的に安全な銘柄数」だけではありません。
「すべての会社について、今でもなぜ持っているのか説明できる数」、これも、かなり現実的な上限の決め方です。


新しい銘柄を買うより既存銘柄を増やす方がいい場合もある

投資に使えるお金が10万円増えたとします。すでに10銘柄持っているなら、11銘柄目を探したくなるかもしれません。
しかし、ポートフォリオを作る目的は証券口座の保有一覧をにぎやかにすることではありません。
既存の10銘柄ですでに業種や収益源が分かれており、その中に現在でも投資したいと思える会社があるなら、無理に11社目を探す必要はないです。
反対に、10社すべてが同じテーマへ偏っているのであれば、今までとは違う値動きをし得る会社を加える意味はあります。

つまり、新しい銘柄を追加するたびに、「この1社を入れることで、ポートフォリオの何が変わるのか」を考える必要があります。
今まで持っていなかった業種が加わる。収益構造の違う企業が加わる。地域や通貨の偏りが少し変わる。明確に長期保有したい企業が新しく見つかった。そんな役割があるなら、新しい1銘柄には意味があります。
逆に何も変わらないなら、「銘柄数を増やすこと」自体が目的になっていないか考えた方がいいでしょう。

新NISAだから個別株をたくさん持った方が得、ではない

新NISAの成長投資枠では、対象となる個別株へ投資することもできます。
そのため、「成長投資枠が余っているから個別株を買おう」、「非課税なら個別株を増やした方がお得なのでは」と考える人もいるかもしれません。

しかし、「税制上有利であることと投資リスクが小さいことは別」です。
NISA口座で保有していても、その会社の業績が悪化すれば株価は下がります。特定銘柄への集中リスクが消えるわけでもありません。
「せっかく枠があるから何か買う」のではなく、「ポートフォリオに必要な投資先があり、その購入場所としてNISAを使う」という順番の方が自然です。

非課税枠を埋めること自体を目的に個別株を増やしてしまうと、「なぜ持っているのか分からない銘柄」を増やす原因にもなります。

40代FIREでは「市場平均に勝つ」より「一社に人生を壊されない」が大切

20代であれば、大きな投資失敗をしても、その後の給与収入と長い投資期間によって挽回できる可能性があります。
しかし40代でFIREを目指し、退職時期が少しずつ現実になってくると事情が変わります。
資産形成のゴールが近づくほど、大きな損失は「含み損が増えた」という証券口座の中だけの話ではなくなります。

退職時期をずらす。予定していた生活費を下げる。住み替えを延期する。もう少し長く働く。場合によっては再就職する。こうした人生側の変更が必要になるかもしれません。
Investor.govも、資産配分を考える際には投資期間とリスク許容度が重要であり、目標までの時間が短い人ほど大きな価格変動を取りにくくなると説明しています。

だからFIRE投資では、最大リターンだけではなく、「失敗したときに人生計画をどこまで守れるか」という視点が重要になります。

1銘柄集中で大成功すれば、FIRE時期が大きく早まることもあるでしょう。その可能性を否定する必要はありません。
ただ同時に、「その会社が想定外の結果になったらFIREが5年遠のく」という状態なら、それは株式投資だけへの賭けではなく、「自分の退職時期まで一社へ賭けている」ことになります。

FIREの目的は、資産額ランキングで誰かに勝つことではありません。
資産を作ることで、会社に依存しなくてもいい選択肢を増やしていくことです。
会社への依存を減らすために作った資産を、今度は特定企業一社へ過度に依存させてしまうのは、少しもったいない気もします。

「個別株は何銘柄まで増やしていい?」への現実的な答え

ここまでを踏まえると、個別株の上限を一つの数字で決めることはできませんが、かなり現実的な考え方はできます。
個別株だけで株式ポートフォリオを作るなら、4~5銘柄だけで「十分に分散できた」と考えるのは慎重になった方がいいです。
Investor.govでも、個別株だけで株式部分を十分に分散するには、少なくとも十数銘柄を慎重に選ぶ必要があると説明しています。
一方で、20銘柄、30銘柄、40銘柄へ増やせば、必ず良いポートフォリオになるわけでもありません。
個人投資家にとっては、銘柄を増やすほど企業分析の時間が増え、保有理由が薄くなり、自分で市場平均を再現するようなポートフォリオへ近づく可能性があります。

だから個別株の銘柄数は、「これ以上減らすと一社の失敗が怖すぎる」という下限と、「これ以上増やすと自分では全部を管理できない」という上限の間に置くことが一番現実的です。

さらに、オルカンやS&P500など広く分散されたインデックスファンドを資産形成の中心にしているなら、個別株部分だけで完全な分散を作る必要はありません。
「インデックスを土台にし、個別株は自分が特に投資したい企業へ絞る」、そうすれば、広い分散と個別企業へ投資する楽しさを両方残すこともできます。

個別株を増やすこと自体が悪いわけではありませんが、「新しく増やす1銘柄に役割があるか」は考えたいところです。

個別株を増やす前に「その1社は何のため?」と考える

証券口座の保有銘柄が増えてくると、銘柄数そのものが安心材料になることがあります。
20社持っている。30社持っている。だから分散できている。しかし、会社数が増えただけでは十分ではありません。
同じ業界、同じテーマ、同じ地域、同じ為替方向へ偏っていれば、20銘柄あっても一斉に下がる可能性があります。
反対に、インデックスファンドですでに広い分散を確保している人が、自分で理解できる数社だけを個別株として持つことも一つの考え方です。

個別銘柄を追加するとき、最後に一つ問いかけてみます。「この会社を追加すると、自分のポートフォリオは何が良くなるのか?」です。
その答えが、「なんとなく上がりそうだから」、「最近よくニュースで見るから」、「みんな買っているから」だけなら、11銘柄目も21銘柄目も急いで増やす必要はないです。
今まで持っていなかった収益源を加えられる。違うリスクを持つ会社を加えられる。企業を調べたうえで長期的に保有したい明確な理由がある。そう説明できるなら、新しい1銘柄には意味があります。

FIREを目指していると、どうしても「資産をもっと増やすこと」へ目が向きます。
しかし、ある程度まで資産が育ってくれば、どう増やすかだけではなく、「一つの失敗でどこまで減るか」も同じくらい重要になります。

個別株は何銘柄まで増やしていいのか。答えは、単純な「○銘柄まで」ではありません。
「一社の失敗で人生計画が壊れず、すべての保有理由を自分で説明できるところまで」、その境界線を越えたら、さらに個別株を増やすより、インデックスへ任せる方が楽なこともあります。
FIREを目指しているのに、50社の決算を追いかける新しい仕事を自分で作る必要まではありません。

個別株の銘柄数でよくある疑問

個別株5銘柄では少なすぎる?

5銘柄だから必ず少ないとは言えませんが、個別株だけで株式資産を構成している場合は、一社当たりの影響がかなり大きくなりやすい構成です。

仮に5社へ均等投資すれば、一社当たり20%です。一社が半値になり、他の4社が変わらなければ、単純計算で資産全体へ約10%の影響が出ます。
さらに5社すべてが同じ業種なら、企業数ほど分散効果を得られない可能性があります。

一方、資産の大部分を広く分散されたインデックスファンドで保有し、個別株部分だけが5銘柄という場合は話が違います。

5銘柄という数字だけではなく、資産全体に占める個別株の割合まで見ることが大切です。

個別株10銘柄なら十分に分散できる?

10銘柄になると、一社の失敗がポートフォリオ全体へ与える影響は、少数銘柄への集中より小さくしやすくなります。

ただしInvestor.govは、個別株だけで株式部分を十分に分散するには少なくとも十数銘柄を慎重に選ぶ必要があるという考え方を示しています。
また、10社すべてが同じ業種や同じ投資テーマなら、「10銘柄持っている」という数字ほど分散されていない可能性があります。

10銘柄かどうかより、10社がどれだけ違うリスクを持っているかを見る方が重要です。

個別株20銘柄は多すぎる?

20銘柄そのものが多すぎるわけではありません。
一社当たりの比率を小さくしやすく、業種や地域も分けやすくなります。

ただし20社になれば、それぞれの決算や業績、事業環境を確認する負担も増えます。
20社全部について「なぜ持っているか」を説明できるなら問題ありませんが、何社かについて「何で買ったんだっけ?」となるようなら、銘柄数を増やすメリットより管理コストの方が大きくなり始めている可能性があります。

分散できる最大数ではなく、自分が管理できる最大数として考えると分かりやすいです。

オルカンやS&P500を持っていても個別株を分散する必要はある?

資産全体ですでに広く分散されたインデックスファンドを保有しているなら、個別株部分だけで市場全体のような分散を作る必要はありません。

たとえば資産の大部分をインデックスファンドで運用し、残りの一部で個別株を楽しむのであれば、個別株には「市場全体へ分散する役割」ではなく、「特に投資したい企業へ少し厚く投資する役割」を持たせることができます。
ただし、一つの個別株が値上がりして資産全体の大部分を占めるようになれば、インデックスを持っていても集中リスクは大きくなります。

見るべきなのは個別株の銘柄数だけではなく、金融資産全体の中で各銘柄がどのくらいの比率を占めているかです。

銘柄数を増やせば暴落に強くなる?

必ずしもそうではありません。一社固有の悪材料によるダメージは分散しやすくなりますが、株式市場全体が下落する局面では、多くの株式が同時に下落することがあります。
金融庁が説明する分散投資も、国内・海外、株式・債券・不動産など値動きの異なる資産へ広げる考え方を含んでいます。

株を10社から30社へ増やしたからといって、株式市場全体の下落リスクまでなくなるわけではありません。
企業固有リスクを分散することと、株式という資産そのもののリスクを下げることは別と考えた方が分かりやすいです。

まとめ|何銘柄持つかより「一社へ人生を預けすぎていないか」

個別株投資では、何銘柄が正解なのか気になります。5銘柄では少ないのか。10銘柄なら安心なのか。20銘柄なら十分なのか。
しかし、銘柄数だけを追いかけても、自分に合ったポートフォリオにはなりません。

少なすぎれば、一社の失敗が資産全体へ大きく影響します。増やしていけば企業固有リスクは薄めやすくなりますが、今度は管理負担が増え、自分でインデックスファンドのようなものを作っている状態へ近づいていきます。
さらに、20銘柄持っていても同じ業種へ偏っていれば、本当の意味で分散できているとは限りません。

だから個別株の銘柄数を考えるときは、「何銘柄持っているか」ではなく、「一社の失敗で資産全体がどれだけ減るか」、「それぞれ違うリスクへ分散できているか」、「全部の企業を継続して管理できるか」、「その会社を個別株として持つ理由があるか」を見る方が実用的です。

40代でFIREを目指しているなら、なおさらです。資産形成の目的は、最も多くの銘柄を集めることでも、市場平均へ毎年勝つことでもなく、自分の人生から「会社にしがみつくしかない」という選択肢を減らしていくことです。
そのために作った資産を、一つの会社へ依存しすぎる必要はありません。

かといって、安心するためだけに個別株を50社へ増やし、毎晩決算を追いかける必要もありません。
「一社の失敗でFIRE計画が壊れず、それでも自分ですべての保有理由を説明できる範囲」、個別株を何銘柄まで増やしていいのか迷ったときは、そのくらいの距離感がちょうどいいのではないでしょうか。

こちらの記事もあわせてどうぞ

▶ 米国個別株はFIREに必要?|オルカン・S&P500だけでは物足りない40代独身の現実整理 / FIRE計画の羅針盤
・個別株を何銘柄持つか以前に、そもそもFIRE資産へ個別株を入れる必要があるのか迷っている人向けの記事です。インデックス投資との役割分担から整理できます。

▶ リバランスは何%ずれたらする?|株が増えすぎた時の「売る・積立・放置」判断 / FIRE計画の羅針盤
・値上がりによって特定銘柄の比率が大きくなってしまった場合、「売るのか、積立で調整するのか、何もしないのか」を考えたい人はこちらへ。

▶ 含み益は利確するべき?独身おじさんのFIRE視点で考える“売るか持つかの判断基準”/ FIRE計画の羅針盤
・大きく上昇した個別株をそのまま持ち続けるか、利益を確定するか迷っている場合は、銘柄数とは別に利確の判断軸を整理しておきましょう。

▶ FIREを目指す40代の資産配分|株・現金は何割が現実的か / FIRE計画の羅針盤
・個別株だけではなく、現金を含めた金融資産全体のバランスからFIREポートフォリオを考えたい人向けです。

※参考にした主な一次・公的情報
・Hendrik Bessembinder, One Hundred Years in the U.S. Stock Markets(2026年)。1926~2025年の米国普通株29,754銘柄について、長期リターンと株主価値創出の偏りを分析した研究。
・Antti Petajisto, Underperformance of Concentrated Stock Positions(2023年)。米国個別株および過去に大きく上昇した銘柄の、その後の市場対比リターンを分析した研究。
・Investor.gov, Beginners’ Guide to Asset Allocation, Diversification, and Rebalancing。資産配分、個別株の分散、投資信託・ETFによる分散について説明する米国SECの投資家向け資料。
・金融庁「資産形成の基本」。長期・積立・分散投資について説明するNISA特設ウェブサイト。

※本記事は一般的な資産形成・投資に関する情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。株式や投資信託等には価格変動があり、元本割れの可能性があります。過去の市場データや研究結果は、将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は、ご自身の資産状況、投資目的、投資期間、リスク許容度などを踏まえて行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました