「自己投資は惜しむな」は本当か?|40代FIREは人的資本を高め続ける必要があるのか / FIRE計画の羅針盤

自己投資と金融資産のどちらにお金と時間を振り向けるか考え、40代FIREと人的資本のバランスを見つめるメガネおじさんを描いた、青基調の実写風アイキャッチ画像 FIRE計画の羅針盤

若いうちは貯金より自己投資」、「経験には惜しまずお金を使え」、「一番リターンの高い投資先は自分自身」、こういう言葉を、一度は聞いたことがあると思います。

確かに分かります。20代で仕事に必要なスキルを身につけ、年収が50万円上がった。その効果が30年続くなら、かなり大きなリターンになります。
英語を学んだ。資格を取った。専門知識を身につけた。新しい仕事へ挑戦した。
それによって給料が上がったり、仕事の選択肢が増えたりするなら、お金を株や投資信託へ入れるより大きな成果になることさえあるでしょう。
だから「若いうちは自己投資」という考え方には、かなり合理性があります。

ただし、私は40代になってから少し引っかかるようになりました。
自己投資って、何歳まで無条件で増やし続ければいいのでしょうか?」。
40歳。45歳。50歳。55歳。会社員として残っている時間は少しずつ短くなります。
ましてFIREを目指しているなら、自分から労働期間を短くしようとしているわけです。

例えば50歳で会社を辞める予定の48歳会社員が、100万円を払って「将来の年収を高めるための勉強」を始める。
もちろん意味がある場合もあります。でも、「その100万円、いつ回収するのでしょう」。

資格取得に2年。取得した頃には50歳。そしてFIRE。これでは、人的資本への投資としてはかなり不思議なことになります。
もちろん学ぶこと自体が楽しいなら問題ありません。退職後にも使いたい資格なら意味があります。別の仕事へ移る準備なら価値がある。
問題なのは、「自己投資だから良いお金の使い方に決まっている」と考えてしまうことです。

金融投資なら、いくら投資するのか。期待できるリターンは何か。リスクはどの程度か。いつまで運用するのか。かなり細かく考えるのに、なぜか「自己投資」という言葉が付いた瞬間、「金額も回収期間も考えなくていい聖域」になってしまう。これは少し変です。

この記事では自己投資を否定しません。40代から勉強しても意味がない、という話でもありません。
むしろAIや技術変化が激しい現在、学び続けることの重要性は高まっています。

ただ、FIREを目指す40代なら、「人的資本へお金を追加投入するだけでなく、それまで積み上げた人的資本を『金融資本』と『自由』へ回収していく時期に入っているのではないか」という別の視点も必要だと思います。

20代と40代では、同じ100万円でも役割が違います。
人生には時間がある。投資にも時間がある。ならば、「自己投資にも回収期間がある」はずです。

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  1. 「自己投資は正義」と思う前に、そもそも何へ投資しているのかを考える
    1. 日本でも自己啓発をする40代は珍しくない
  2. 人的資本にも「回収期間」がある|40代では残りの労働年数が重要になる
    1. 自己投資は「費用」だけでなく時間も使っている
    2. 40代FIREなら「残り何年働くのか」が最初の質問になる
  3. 40代は人的資本を「最大化する時期」から「回収する時期」へ入っているのかもしれない
    1. 「もっと稼げる自分」を作ることだけが40代の正解ではない
    2. FIREとは人的資本を否定することではなく「依存度」を下げること
  4. 「自己投資」という言葉で、ただの消費まで正当化しなくていい
    1. 消費と自己投資と金融投資を分ける
    2. 「自己投資は意味ない」という極論にも行かなくていい
  5. それでも40代でお金を使う価値が高い自己投資はある
    1. 仕事で明確に使うスキルは40代でも強い
    2. 会社の外でも使える能力は「保険」になる
    3. 健康への支出は単純な「回収期間」で切らない
  6. 40代FIREでは「人的資本・金融資本・今の人生」の三つを同時に見る
    1. FIREが近づくほど「さらに稼ぐ」以外の選択肢が大きくなる
    2. 人的資本への投資と金融投資は敵ではない
  7. その自己投資、本当にFIRE前の自分に必要か?7つの質問で考える
    1. 高額であるほど「自己投資」という言葉から離れて考える
  8. 40代から目指したいのは「人的資本最大化」ではなく、人生全体の資本配分かもしれない
    1. 40代には「これまで積み上げた人的資本」がすでにある
  9. まとめ|40代の自己投資は「増やす」だけでなく「回収する」まで考える
  10. こちらの記事もあわせてどうぞ

「自己投資は正義」と思う前に、そもそも何へ投資しているのかを考える

最初に「人的資本」という言葉を整理しておきます。
かなり広く使われる言葉ですが、個人のFIREという文脈なら、「自分が将来、働いて収入を得たり、仕事の選択肢を持ったりするための能力や知識、経験など」と考えると分かりやすいです。

資格、専門知識、技術、語学、仕事の経験などが典型です。
会社員にとって給与は、突然空から降ってくるものではありません。
自分が持つ能力と時間を会社へ提供し、その対価として受け取っている。
その意味では、会社員生活そのものが、「人的資本 → 給与」への変換です。

そして給与の一部を貯金や投資へ回せば、「人的資本 → 給与 → 金融資本」へ変わります。
FIREを目指す人は、この変換をかなり意識的に行っている人たちとも言えます。
働けるうちに給与を得る。生活費を差し引く。残りを金融資産へ変える。
やがて金融資産が十分大きくなったら、「人的資本を毎日会社へ差し出さなくても生活できる状態を目指す」、これがFIREです。

日本でも自己啓発をする40代は珍しくない

厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」では、自己啓発を実施した労働者は全体で36.8%、正社員では45.3%でした。
年齢別では、30~39歳が45.0%、40~49歳が38.3%、50~59歳が31.4%、60歳以上が20.6%と、30歳以降では年齢が上がるにつれて実施率が低下しています。

これを、「ほら、40代から勉強しても無駄だから減っている」と読むのは乱暴です。
仕事、家事、介護、子育てなど、年齢によって使える時間も変わりますし、すでに必要な能力を蓄積した人もいます。
ただ一つ言えるのは、「人生のどの年代でも同じように人的資本へ投資し続けるわけではない」ということです。

そして興味深いのが、「人的資本への投資と賃金の関係」です。
内閣府の2025年の分析では、企業による訓練は多くの期間で賃金を押し上げる関係が確認された一方、個人が行う自己啓発だけの場合、その効果は3年目以降では限定的でした。
企業訓練と自己啓発の両方を行った場合には、どちらか一方だけの場合より賃金上昇幅が大きく、持続的な傾向がみられています。

もちろん、この分析だけで、「自己啓発は意味がない」とは言えません。
自己啓発の内容も人によって違いますし、収入以外の効果もあります。
ただし少なくとも、「自己投資をすれば必ず年収が上がる」という単純な話でもない。ここは重要です。

金融商品なら「元本保証ではありません」と注意するのに、自己投資になると突然、「やれば必ず成長する」という元本保証付き商品みたいに語られることがあります。

本来は自己投資にも、目的、費用、時間、成功確率、回収期間、使う場所があるはずです。

人的資本にも「回収期間」がある|40代では残りの労働年数が重要になる

例えば、ある資格を取るために60万円使うとします。受講料、教材費、試験料などを合わせて60万円。
資格取得後、年間の手取り収入が12万円増えると仮定します。
単純化すれば、「60万円 ÷ 年12万円 = 5年」で金銭的な投資額を回収する計算です。

これはあくまで説明用の仮定で、資格取得による収入増加を保証するものではありません。
25歳なら、5年間で回収した後も長い労働期間が残っています。35歳でも十分あるでしょう。

では48歳で、50歳に完全FIREする予定だったら?
予定どおりなら収入増加を享受する期間は2年間。単純計算では24万円しか回収できません。

もちろん資格そのものがFIRE後にも役立つなら話は違います。
退職後に週2日だけその資格を使って働く。困ったときに再就職できる。社会参加として仕事を続けたい。
そういう目的なら「退職後の選択肢」という別のリターンがあります。
でも、「今の会社であと2年だけ年収を上げるため」なら、60万円を投入する合理性はかなり変わります。

自己投資は「費用」だけでなく時間も使っている

さらに忘れやすいのが「時間」です。資格取得に年間300時間。100万円の大学院。毎週末のスクール。平日夜のオンライン講座。こうした自己投資には、お金だけでなく時間が必要です。
特に40代会社員にとって時間は安くありません。仕事がある。家事もある。親のこともある。健康管理もしなければならない。

そしてFIREを目指しているなら、「自由な時間そのものを買おうとしている」わけです。
そこから年間300時間をさらに仕事能力向上へ投入する。それによって早くFIREできるなら合理的かもしれない。
反対に、FIRE時期がほとんど変わらないなら、「自由になるために、自由時間をさらに仕事へ投資する」という妙なことになる可能性があります。

私は自己投資を考えるとき、お金だけではなく、「回収までに投入する時間も投資額」として見た方がいいと思います。

40代FIREなら「残り何年働くのか」が最初の質問になる

例えば同じ100万円の自己投資でも、意味はかなり変わります。

ケース人的資本への投資としての見方
45歳、60歳まで今の仕事を続ける予定回収期間が15年近くあるため、収入増や昇進につながる学びには比較的長い時間を使える
45歳、50歳でFIRE予定回収期間は約5年。投資額が大きい場合は、収入増やFIRE時期への効果をより慎重に見る必要がある
45歳、FIRE後も専門職として少し働く予定会社員収入だけでなく、FIRE後の収入源や再就職可能性として価値を持つ可能性がある
48歳、高額資格を取得するが仕事では使う予定なし学ぶこと自体が目的なら消費・趣味としては成立するが、「稼ぐための投資」としては回収経路を確認したい
50歳、会社負担で業務に必要な研修を受けられる自己負担が小さく、現在の仕事にも直結するため合理性は比較的高い

これは株式投資と似ています。1年後に使う予定のお金と、30年使わないお金では運用方法を変える。
だったら人的資本も、「あと3年働く人と、あと30年働く人で同じ投資戦略になるはずがない」。

▶ 「投資は早く始めるほど有利」の定説に抗う|40代会社員には若者にないFIREの武器がある / FIRE計画の羅針盤

金融投資では若い人ほど時間を持っていますが、40代には既存資産、収入、公的年金までの距離など別の武器があります。「人的資本への投資にも残り時間がある」ということです。

40代は人的資本を「最大化する時期」から「回収する時期」へ入っているのかもしれない

ここで一度、人生をかなり乱暴に単純化してみます。
20代は金融資産が少ない。でも働ける時間は長い。つまり人的資本が大きい。
50歳では20代より金融資産が増えている可能性が高い一方、これから働ける期間は短くなっています。
これは人としての価値が下がるという話ではありません。「将来給与へ変換できる残り時間が減る」というだけです。

だから資産形成の役割も変わります。若い頃は、「人的資本を育てる」→「給料を増やす」→「金融資産を作る」という順番が合理的です。
でも40代、50代になれば、「すでに育てた人的資本から得られる給与を、金融資本へ回収する」という段階も重要になってきます。
私はこれを、FIRE目線ではかなり大事な発想だと思っています。

「もっと稼げる自分」を作ることだけが40代の正解ではない

年収600万円。資格を取れば650万円になるかもしれない。さらに頑張れば700万円。管理職になれば800万円。MBAを取れば転職できるかもしれない。この考え方には終わりがありません。

人的資本を最大化するゲームを続ける限り、「もっと稼げる自分」は永久に存在します。
でもFIREを目指す人が本当に欲しかったのは、最高年収なのでしょうか。違う人も多いはずです。
十分な金融資産ができたら、年収をさらに50万円上げることより、残業を減らす。休日を守る。責任を増やさない。健康を維持する。会社を辞められる状態を作る。こちらの方が価値を持ち始めます。

つまり40代では、「人的資本の限界利益」を考えた方がいい。
資格ゼロの人が業務に必要な資格を取る。これは大きな変化です。
必要なデジタル知識がまったくない人が基礎を学ぶ。これも意味がある。
でもすでに十分仕事ができる45歳会社員が、さらに100万円使って「年収をあと3%伸ばす能力」を作る。
その100万円を金融資産へ回せば、FIREは少し近づくかもしれません。
あるいは旅行や趣味に使えば、今の生活が豊かになる。
何へ振り向けるのが正解かは、その人が人生のどの地点にいるかで変わる」ことを考える必要があります。

FIREとは人的資本を否定することではなく「依存度」を下げること

FIREしたら人的資本は不要になる」、そういう話ではありません。
知識も能力も経験も、人間関係も役立ちます。むしろFIRE後に、少し働く。好きな仕事だけ受ける。地域活動に参加する。新しいことを学ぶ。何かを教える。人的資本があるほど選択肢は広がります。

ただし、「生活するために人的資本を毎月必ず現金化しなければならない状態」から離れていくことがFIREです。
人的資本100・金融資本0より、人的資本80・金融資本50の方が自由かもしれない。
そして最終的には、「働けるけれど、働かなくてもいい」へ近づいていく。

▶ 40代会社員の「辞められる力」が価値になる時代|FIREできる人が強くなる日本の未来 / FIRE計画の羅針盤

AIや人手不足で労働市場が変わるなか、会社員にとって金融資産は「退職後のお金」だけではありません。
仕事を辞めても生活が破綻しない選択肢そのものが価値になります。

人的資本を最大化することより、「人的資本への依存を下げること」、40代FIREでは、こちらも立派な戦略になります。

「自己投資」という言葉で、ただの消費まで正当化しなくていい

もう一つ、自己投資という言葉について考えたいことがあります。
自己投資は非常に便利な言葉です。本を買った、自己投資。旅行した、自己投資。高い服を買った、自己投資。スクールへ行った、自己投資。高級ホテルへ泊まった、自己投資。
もちろん、そこから何かを学ぶことはあります。でも、全部を無理に「投資」と呼ぶ必要があるのでしょうか。

旅行へ行きたかった、楽しかった。それで十分です。
美味しいものを食べたかった、満足した。それも立派なお金の使い方です。
趣味の道具を買った、何時間も楽しんだ。これも失敗ではありません。
むしろ「将来の収入につながらない支出は全部無駄」という発想になってしまう方が、FIREとは相性が悪いと思います。
FIREは最終的には、「お金を使って時間や自由を得るための仕組み」だからです。

消費と自己投資と金融投資を分ける

私は40代からは、お金の使い方をこう分けると分かりやすいと思います。

分類目的成功の判定
消費今の満足や快適さを得る旅行、趣味、外食、娯楽など本人がその経験に納得できたか
人的資本への投資将来の収入・仕事の選択肢を増やす業務資格、専門教育、語学、職業訓練など収入、職業選択、仕事継続などへ結びついたか
健康・生活基盤への支出働く能力と生活の質を守る健康管理、住環境改善など生活・活動を維持しやすくなったか
金融資本への投資労働所得への依存を減らす新NISA、投資信託、株式、債券など目的に合ったリスクで長期資産形成に使えたか

ここで重要なのは、「どれが一番偉いかを決めないこと」です。
消費も必要です。人的資本も必要です。金融資産も必要です。健康も必要です。

問題になるのは、「全部を自己投資と呼んで評価を曖昧にすること」です。
例えば30万円の旅行へ行く。「自己投資だから将来稼げるようになる」と言えば、それらしく聞こえます。
でも将来の収入とは特に関係なくても、「行きたかったから30万円使った。最高だった」なら十分です。むしろ、その方が健全です。

投資と呼ぶなら回収方法を考える」、「楽しむためなら楽しむ」、この線引きができると、「自己投資したから無駄遣いじゃない」という自己正当化も減ります。

「自己投資は意味ない」という極論にも行かなくていい

ネット検索すると、「自己投資 意味ない」という言葉も出てきます。これも極端です。
厚生労働省の労働経済白書では、キャリアチェンジを伴う転職について、転職前に自己啓発を行った人の方が賃金増加につながる確率が高いという関係も示されています。
ただし白書自身が、これをそのまま因果関係と断定できるものではないと注意しています。

つまり、「役に立つ自己投資もある、役に立たない自己投資もある」、当たり前です。
株式投資でも、何でも買えば儲かるわけではありません。不動産も同じ。資格も同じ。スクールも同じ。
重要なのは、「自己投資かどうか」ではなく、「何を目的に、どれだけ投入して、どこで回収するのか」です。

それでも40代でお金を使う価値が高い自己投資はある

ここまで読むと、「じゃあ40代から勉強するなってこと?」と思うかもしれません。
むしろ逆です。40代では「使える時間が20代より短いからこそ、投資先を選ぶ意味が大きくなる」と思います。

何となく勉強するのではなく、今の仕事へ直結する。会社の外でも使える。FIRE後にも使える。自分の弱点を補える。短期間で効果を出せる。こうしたものへ絞る。

仕事で明確に使うスキルは40代でも強い

例えば現在の仕事でAIやデータ分析を使う機会が増えている。そこに数万円と数十時間を使って基礎を身につける。
その結果、仕事が早くなる。残業が減る。異動や転職でも説明できる。なら十分価値があります。

重要なのは、「何を勉強したかではなく、何が変わるのか」です。
AI講座を受けました」で終わるなら自己満足かもしれません。
毎月10時間かかっていた業務を5時間にできるようになった」なら、かなり明確です。

会社の外でも使える能力は「保険」になる

次に価値が高いのが、「今の会社がなくなっても残る能力」です。
業界知識。専門資格。顧客対応。プロジェクト管理。文章作成。データ分析。語学。制度対応。何でも構いません。
ポイントは、「会社名を外しても説明できること」です。

○○社で20年働いた」ではなく、「私は○○ができます」と言える能力です。
これは年収を上げるためだけではありません。転職。再就職。FIRE後の短時間労働。一時的な収入獲得。こうした選択肢にもつながります。

だから40代FIREにおける人的資本は、「攻めるためだけではなく、戻れる場所を増やす保険」として考えると分かりやすいです。

健康への支出は単純な「回収期間」で切らない

もう一つ例外があります。「健康」です。
体力維持、歯の管理、必要な健診や治療、適切な睡眠環境などは、単純に、「これに10万円使ったら年収がいくら上がる?」とは考えにくい。
なぜなら健康は、働くための土台であると同時に、「FIRE後の時間を使うための土台」でもあるからです。

1億円持っていても、自由な時間を楽しめる状態でなければ使い道は狭くなります。
だから健康関連まで、「FIREするから人的資本への投資は終了」とは考えない方がいいでしょう。
これは人的資本というより、「人生を使うための基盤への支出」として別枠で考える方が自然です。

▶ 「長生きリスク」を怖がりすぎていないか?|死ぬまで資産を減らせないFIREの落とし穴 / FIRE計画の羅針盤

FIREでは100歳まで資産を残すことだけでなく、健康や行動力がある時期にお金を使えるかも重要です。
人的資本と同じように、金融資産も「最大化し続ければ正解」とは限りません。

40代FIREでは「人的資本・金融資本・今の人生」の三つを同時に見る

では実際に、お金をどう配分すればいいのでしょうか。ここには万人共通の正解はありません。
年収300万円の人と1,000万円の人。金融資産500万円の人と5,000万円の人。45歳でFIREしたい人と60歳まで働く人。同じ配分になるはずがありません。

ただ、考える順番は作れます。まず、「その自己投資によって何が変わるのか」。
次に、「変化が起きるまで何年かかるのか」。そして、「その後、何年間使えるのか」。
最後に、「同じお金を金融資産や今の生活へ使った場合と比べて、それでもやりたいか」。ここまで考えます。

例えば自由に使える年間120万円があるとします。
全部を投資信託へ入れる必要はありません。全部自己投資する必要もない。

例えばある人なら、30万円を職業能力へ。60万円を金融資産へ。30万円を旅行や趣味へ。
別の人なら、今年は転職準備が重要だから60万円を学習へ振り向ける。翌年から金融投資を増やす。
人生の時期によって配分を変える」、これが自然です。

FIREが近づくほど「さらに稼ぐ」以外の選択肢が大きくなる

30歳、資産100万円。年収を100万円上げられる勉強がある。これは非常に魅力的かもしれません。
48歳、金融資産5,000万円、2年後FIRE予定。同じ勉強が必要か。答えは変わるでしょう。
後者なら、100万円を金融資産へ加える、仕事を少し減らす、旅行する、健康へ使う、FIRE後の住環境を整えるという選択肢もあります。

自己投資をやめる」のではありません。「自己投資以外の選択肢の価値が上がってくる」、これが40代の特徴です。

▶ FIREは年収より貯蓄率で決まる?|収入と支出の差を広げる40代独身の現実戦略 / FIRE計画の羅針盤

FIREでは年収を高めることだけが資産形成ではありません。収入をどれだけ金融資産へ残せるかという視点も重要です。

人的資本への投資と金融投資は敵ではない

自己投資と株式投資、どちらがいい?」という疑問もあります。私は二者択一にする必要はないと思います。
人的資本は給与を生む。給与から金融資本を作る。金融資本が増えると、会社への依存度が下がる。会社への依存度が下がると、自分に合った仕事を選びやすくなる。この循環です。

ただし40代になると、「人的資本100%の人生から、金融資本の比重を高めていく」ことが重要になる。それだけです。

▶ 会社に依存しない資産形成を始めるなら、楽天証券で口座開設を検討する

ただ一つだけ注意したいのは、金融投資にもやりすぎがあることです。
人的資本へ使うのはもったいない」、「旅行ももったいない」、「外食ももったいない」、「全部新NISA」となれば、今度は逆方向へ振り切れます。

▶ NISA貧乏とは何か?|新NISAで生活が苦しくなる40代独身の落とし穴 / FIRE計画の羅針盤

資産形成は今の生活を破壊してまで行うものではありません。
自己投資と同様、金融投資も「投資だから正義」ではないということは忘れない方がいいです。

その自己投資、本当にFIRE前の自分に必要か?7つの質問で考える

高額なスクール、資格、大学院、リスキリング講座などを申し込む前に、一度立ち止まって考えます。
難しい計算は必要ありません。この7つで十分です。

質問見るポイント
① このお金で何が変わるのか?「成長する」ではなく、収入増、転職、仕事時間短縮など具体的に言えるか
② 効果が出るまで何年かかるのか?資格取得や学習終了までの時間も含めて考える
③ 効果が出たあと何年間使えるのか?FIRE予定年齢や退職予定までの期間と合っているか
④ 今の会社以外でも使えるか?社内専用の能力なのか、転職・再就職・FIRE後にも持ち出せる能力なのか
⑤ お金以外の価値が残るか?純粋に好き、人生で学びたい、退職後にも楽しめるなら収入だけで判断しなくてよい
⑥ 会社のお金で学べないか?研修費、資格補助、教育制度などを使えるなら自己負担を減らせる
⑦ 同じお金を別の用途へ使っても、それでも選ぶか?金融資産、旅行、健康、時間などとの機会費用を比べる

特に重要なのは「同じお金を別の用途へ使っても、それでも選ぶか?」です。

100万円を自己投資へ使う。その選択自体は自由です。でもその100万円には別の人生もあります。
投資信託になる未来。旅行になる未来。半年分の生活防衛資金になる未来。FIREを数か月早める未来。仕事を辞めた後の生活費になる未来。
全部を見た上で、「それでも私はこの100万円を自分の能力へ投資したい」と思えるなら、かなり納得感があります。
逆に、「成功者はみんな自己投資しているらしいから」だけなら、少し怪しいです。

高額であるほど「自己投資」という言葉から離れて考える

3,000円の本なら、失敗しても大したことはありません。
10万円、30万円、100万円、300万円と金額が上がるほど、「自己投資だから」という言葉だけでは弱くなります。

資格スクールであれば、取得率。仕事で使えるか。求人があるか。給与へ反映されるか。FIRE後にも使うか。これらを見る。
大学院なら、学位そのものが必要なのか。学びたいから行くのか。転職に使うのか。純粋に知的好奇心なのか。目的を分ける。
後者なら、投資ではなく「人生でやりたいことへの支出」でも構いません。むしろそちらの方が潔い。
学ぶことは、必ずお金に変換しなければならないものではありません。
FIREを目指しているのに、「人生のすべてへROIを要求する必要もない」です。

ただしROIを期待して「投資」と呼ぶなら、「回収期間」くらいは考えたい。
私はそのくらいの線引きがちょうどいいと思います。

40代から目指したいのは「人的資本最大化」ではなく、人生全体の資本配分かもしれない

投資家は資産配分を考えます。株式100%でいいのか。現金はいくら持つか。債券は必要か。ゴールドはどうするか。
でも人間そのものについては、「人的資本100%」のような考え方を長く続けがちです。
もっと働けるようにする。もっと評価されるようにする。もっと稼げるようにする。もっと専門性を高める。もっと人脈を増やす。
それが20代、30代では大きな武器になります。ただ40代になると、人生全体の資本配分を変えてもいい。
人的資本」、「金融資本」、「健康」、「自由時間」、「経験」、この五つへ分ける。

人的資本を110にするために、健康を70へ落とす必要はありません。
金融資産を最大化するために、経験をゼロへする必要もない。
自由時間を増やすために、すべての能力開発を止める必要もありません。
要するに、「何か一つを最大化するゲームから降りる」、これがFIREに近づくということでもあると思います。

40代には「これまで積み上げた人的資本」がすでにある

若者には「これから積み上げられる時間」があり、40代には「すでに積み上げてきた時間」があります。
40代会社員には、20年近い職歴。専門知識。社内外の人間関係。失敗経験。判断経験。業界知識。会社員として働いてきた年月があります。

もちろん、全員がその経験を市場価値へ変えられるわけではありません。
それでも、「ゼロから人的資本を作る年代ではない」人は多いでしょう。
だったら、これからの10年を、さらに積み上げることだけへ使うのか。それとも積み上げたものを給与として回収し、金融資本へ移していくのか。そこを考える。これは20代にはできない40代特有の資産形成だと思います。

そして十分な金融資本ができたなら、人的資本を完全に捨てる必要もありません。
働いてもいい。働かなくてもいい。勉強してもいい。何もしなくてもいい。収入になる勉強だけでなく、純粋に好きなことを学んでもいい。
学ぶ理由まで会社から自由になる」、これは結構大きいです。

会社員時代には、「この資格は評価されるか」、「昇進に役立つか」、「年収が上がるか」を気にする。
FIRE後なら、「面白いから勉強する」でもいい。自己投資という言葉さえ必要なくなります。
ただの勉強です。私はそちらの方が、ずっと自由に見えます。

まとめ|40代の自己投資は「増やす」だけでなく「回収する」まで考える

自己投資は惜しむな」、この考え方は間違いではありません。
若いうちに能力を高めれば、その能力を何十年も使えます。
収入が増える。仕事の選択肢が増える。転職できる。働き方を変えられる。
厚生労働省の分析でも、自己啓発と転職後の賃金増加との間に一定の関係がみられています。

一方で、自己啓発をしたからといって、長期的に必ず賃金が増えるわけでもありません。
内閣府の分析では、自己啓発単独による賃金への効果は時間が経つと限定的になる結果も示されています。

つまり、「自己投資も投資」です。成功するものもある。失敗するものもある。
お金を回収できるものもある。できないものもある。
そして何より、「回収するためには時間が必要」です。

25歳なら、人的資本へ大きく投資する合理性は高い。45歳でも、まだ十分意味のある自己投資はあります。
でも50歳でFIREするつもりなら、「この100万円はいつ回収する?」という疑問も持った方がいい。

明確な答えがあるなら投資する。会社の外でも使えるなら投資する。FIRE後にも選択肢として残るなら投資する。純粋に学びたいなら、投資という名前を付けずに楽しんでもいい。

反対に、何となく成長できそう。みんな勉強している。取り残されるのが怖い。自己投資なら無駄遣いではないという理由だけなら、一度止まって考える。

40代FIREに必要なのは、「人的資本を最大まで高めてから会社を辞めることではありません」。
それまで積み上げた人的資本から給与を得る。給与から金融資本を作る。金融資本が増える。会社への依存度が下がる。
そして最終的には、「自分の時間を自分へ返す」、私は、この流れこそFIREだと思います。

20代では、自分へ投資して、稼げる人になる。40代からは、それにもう一つ加える。
稼げる自分を使って、働かなくてもいい自分を作る」、この切り替えです。

人的資本を100から110へ上げるために100万円使うことと、その100万円を金融資産へ移してFIREを近づけること、どちらが正しいかは人によって違います。
でも少なくとも、「自己投資だから前者が必ず正しい」わけではない。そして金融資産へ入れることだけが正解でもありません。

今しかできない経験へ使ってもいい。健康へ使ってもいい。自由時間へ使ってもいい。
FIREとは、あらゆるお金を未来へ送る競争ではありません。いつか自分で使うために、お金を作っているはずです。

だから40代になったら、「もっと自分へ投資しなければ」だけでなく、「これまで自分へ投資してきた20年間を、そろそろ回収し始めてもいいのではないか」、そんなことを考えてみてもいい。

人的資本は、最後まで最大化しなくていい。金融資産も最後まで最大化しなくていい。人生そのものも最大化しなくていい。
十分働ける」、「十分貯まった」、「十分学んだ」、そう思えたときに、「もっと」をやめられること。
それも40代FIREが手に入れたい自由の一つなのではないでしょうか。

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・人的資本だけでなく金融資産にも「いつ使うか」という出口があります。資産を増やし続けるだけでは終わらないFIREを考えます。

※本記事は、特定の資格取得、教育サービス、転職、退職、FIRE等を推奨・保証するものではありません。人的資本への投資効果は、年齢、職種、勤務先、資格・教育内容、労働市場、本人の適性、利用期間等によって大きく異なります。
※本記事における「自己投資の回収期間」「人的資本を金融資本へ回収する」等の表現は、FIREとの関係を分かりやすく説明するための便宜的な考え方です。学習や経験の価値を金銭的収益だけで評価する趣旨ではありません。
※投資には元本割れのリスクがあります。新NISA、投資信託、株式、債券等の利用を検討する場合は、制度内容、価格変動リスク、手数料、税制、ご自身の家計・資産状況等を確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。

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