「投資は早く始めるほど有利」の定説に抗う|40代会社員には若者にないFIREの武器がある / FIRE計画の羅針盤

超近未来型のレーシングカーでFIREへ急ぐ若者たちを横目に、クラシックカーで自分のペースでFIREを目指すメガネおじさんを描いた、青基調の実写風アイキャッチ画像 FIRE計画の羅針盤

投資は一日でも早く始めた方がいい」、資産形成について調べれば、ほぼ必ず目にする言葉です。

20代から新NISA。30代までに資産1,000万円。長期・積立・分散。複利を味方につける。
こうした話を読んでいると、40代になってから投資やFIREに興味を持った人は、だんだん嫌な気分になってきます。
しまった。20代から始めればよかった」、「もう20年も無駄にした」、「40代から投資を始めても遅いのでは?」、「今からFIREなんて無理なのでは?」、気持ちはとても良く分かります。

しかも困ったことに、「投資は早く始めるほど有利」という話そのものは、基本的に間違っていません。
同じ金額を、同じ利回りで運用できるなら、長く運用した方が複利が働く期間は長くなります。
金融庁も、安定的な資産形成では長期・積立・分散投資の重要性を示しています。もちろん長期投資をすれば利益が保証されるという意味ではありませんが、時間を味方につけることに合理性があるのは確かです。

だから、「40代からでも全然余裕!若者なんて関係ない!」という根性論を言うつもりはありません。
時間では若者が強い。そこは認めます。ただし、ここで一つ疑いたい。
FIREというゲームは、本当に「投資を始めた年齢」だけで勝敗が決まるのでしょうか。

25歳で投資を始めた人。45歳で投資を始めた人。この二人を、「25歳の方が20年早い。したがって圧倒的に有利」だけで比較していいのか。

45歳の人には、すでに20年以上働いているからこそ持っているものがあります。
金融資産。預貯金。給与水準。退職金の見込み。厚生年金の加入実績。会社員として残り数年~十数年に得られる収入。自分が年間いくら使う人間なのかという実績。住宅事情。
さらには、「あと何年働けばいいか」が若い頃より具体的に見えていること。

つまり40代は、「時間という資産では若者に負ける一方、すでに積み上がっている資産では若者より前にいる」可能性がある。
ここを無視すると、「40代から投資 = 手遅れ」という、かなり雑な結論になります。

FIREは投資歴の長さを競う大会ではありません。
必要なのは、「自分が働かなくなったあと、人生の資金繰りが成立すること」です。

この記事では、「投資は早く始めるほど有利」という定説を認めたうえで、それでも40代会社員には若者にはないFIREの武器がある、という少し違う角度から考えてみます。

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  1. 「若いうちから投資」が有利なのは事実。でも、それだけではFIREは決まらない
    1. 20年早く始めても、入金額が違えば景色は変わる
  2. 40代には「すでに積み上がっている元本」がある
    1. 40代のFIRE資産は「証券口座」だけではない
    2. 40代には「自分の生活費」という強力な実績データもある
  3. 40代FIREは「一生分を今すぐ用意するゲーム」ではない
    1. 40代からのFIREは「橋の長さ」が短い
    2. FIREは「資産額」より「キャッシュフローの継ぎ目」で考える
  4. 40代からでも資産形成は動く。ただし「若者に追いつこう」としてはいけない
    1. 一番やってはいけないのは「時間がないからリスクを上げる」
  5. 40代会社員には若者にない「六つのFIRE武器」がある
    1. 武器1:すでにある金融資産
    2. 武器2:若い頃より大きくなりやすい入金力
    3. 武器3:退職給付という見えにくい資産
    4. 武器4:公的年金までの距離が短い
    5. 武器5:生活費の「実績値」を持っている
    6. 武器6:「もう十分」が分かり始める
  6. ただし40代には「残り時間が短い」という弱点もある
    1. 全財産を成長資産に入れればいいわけではない
    2. 退職金は「予定資産」であって「確定資産」ではない
  7. 40代からFIREを狙うなら「時間」で戦わず、総合力で戦う
    1. 40代FIREの最大の武器は「会社を利用する期間を選べること」かもしれない
  8. 「20代から始めればよかった」は正しい。でも、それは今日何もしない理由にはならない
    1. 「始めるのが遅かった」より「遅かったから無茶をした」の方が怖い
  9. まとめ|若者には「長い時間」がある。40代には「積み上げてきた時間」がある
  10. こちらの記事もあわせてどうぞ

「若いうちから投資」が有利なのは事実。でも、それだけではFIREは決まらない

投資では時間が強い」、これは否定しません。
100万円を年4%で運用できたと仮定すると、単純な複利計算では10年後より20年後、20年後より30年後の方が増えます。
毎月積み立てる場合も同じです。早く始めれば、それだけ積立期間を長くできます。

さらに若い人には、もう一つ大きな強みがあります。
失敗してもやり直せる時間が長い」です。
25歳で相場が大きく下落しても、定年まで何十年もあります。
一方、55歳でFIRE直前に大きな損失を出せば、同じ30%下落でも意味はかなり違います。

つまり、「長い運用期間」と「長い回復期間」の両方を持っている。これは若者の明確な強みです。
だから20代や30代の人がこの記事を読んでいるなら、「じゃあ40代まで投資しなくていいんだ」とは思わないでください。

できる範囲で早く資産形成を始められるなら、その方が選択肢は増えやすい。問題はそこではありません。
問題なのは、「早く始めた方が有利」→「40代は若者より不利」→「40代からでは手遅れ」と、途中をすっ飛ばしてしまうことです。

有利」と「勝敗が決まっている」は別です。
100メートル走なら、スタートが20秒遅れたらほぼ終わりですが、FIREはそういう競技ではありません。

人によって、現在資産も違う。給与も違う。年間生活費も違う。退職金も違う。年金も違う。住居費も違う。FIRE後に少し働くのか、完全に働かないのかも違う。そして何歳で仕事を辞めたいのかも違います。
つまりFIREでは、「投資を始めた年齢」は数ある変数の一つでしかありません。

20年早く始めても、入金額が違えば景色は変わる

極端な例を考えてみます。25歳から毎月1万円投資する人。45歳から毎月15万円投資する人。
どちらが最終的に大きな資産を作るかは、「開始年齢」だけでは決まりません。

もちろん若者に時間があります。しかし40代になると、若い頃より給与が上がっていたり、教育費がない独身者なら可処分所得の一部を大きく投資へ回せたりする場合があります。

FIREではしばしば、「複利の力」ばかりが強調されます。
でも実際の資産形成にはもう一つ、とても地味で強い力があります。「入金力」です。
特に資産形成の前半では、運用益より入金額の影響が大きいケースも珍しくありません。
年間36万円積み立てる人と、年間180万円積み立てる人では、スタート年齢の差を一部埋めることがあります。

もちろん「40代ならたくさん入金できる」と決めつけるつもりはありません。
住宅ローン。子どもの教育費。親の介護。健康問題。40代だからこそ支出が重い人もいます。
だから大切なのは、「年齢だけで比較しないこと」です。
若者には若者の強みがあり、40代には40代の条件があります。

40代には「すでに積み上がっている元本」がある

40代からFIREを考えるとき、私は最初に「これから何年投資できるか」だけを見るのはもったいないと思っています。
先に見るべきなのは、「今までの20年間で何が積み上がっているか」です。

例えば45歳の会社員。投資経験はほとんどない。そう聞くと、「資産形成初心者」に見えます。
でも、普通預金500万円。定期預金300万円。財形200万円。企業型DC400万円。合計1,400万円。という人ならどうでしょう。

この人は投資歴ゼロでも、「資産形成のスタート地点が0円」ではありません。ここが重要です。
若い頃から投資をしてこなかった = 何も積み上げてこなかった」とは限らない。

特に日本では長く預貯金中心だった人も多いので、40代になってから資産配分を見直すだけで、すでに存在するお金が投資可能資産として見えてくることがあります。

以前も扱いましたが、現金はすべて投資へ回せばいいわけではありません。

▶ 「貯金は日本円への集中投資」は本当か?|インフレ時代でも現金を持つ合理的な理由 / FIRE計画の羅針盤

生活防衛資金や近い将来使うお金には現金の役割があります。
ただ、「何十年も使う予定のない資金まで含めて、自分が何を持っているか棚卸しする」、これは40代からでもできます。

40代のFIRE資産は「証券口座」だけではない

40代会社員の資産を考えるなら、私は大きく分けて次のように見ます。

40代会社員が持っている可能性のあるものFIREでの意味
現在の預貯金・投資資産すでに存在するFIRE元本
今後の給与・賞与残りの会社員期間で追加できる元本
退職給付退職時または老後に利用できる可能性のある資産
企業年金・確定拠出年金等老後資金の一部
公的年金の加入実績65歳以降などの生活費を支える将来収入
支出実績FIRE必要額を現実的に計算する材料
勤務歴・専門性・人脈必要なら再び収入を得る選択肢

この表で面白いのは、「40代の武器には、今日の証券口座に表示されないものが多い」ことです。

その代表が「退職給付」です。
厚生労働省の2023年就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業は全体の74.9%。企業規模1,000人以上では90.1%でした。ただし企業によって制度は大きく異なり、退職金がない企業も当然あります。

さらに同調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、大学・大学院卒の管理・事務・技術職では平均退職給付額が1,896万円でした。これはあくまで条件に該当する企業・退職者の平均であり、誰でもこの金額を受け取れるという意味ではありません。自己都合退職や勤務年数、企業制度などでも金額は大きく変わります。

でもFIREを考える40代にとって、この存在は無視できません。
例えば、現在資産2,000万円。FIRE目標5,000万円。だけを見ると、「あと3,000万円も必要」となります。
しかし会社の制度を確認した結果、将来の退職給付や企業年金がある。今後10年間働けば追加で貯蓄できる。65歳以降には公的年金がある。となれば、計画の見え方は変わります。

もちろん「退職金を今の資産と同じように使えると数えるのは危険」です。
途中退職で減るかもしれない。制度変更もあり得る。受取時期も違う。だから「見えない2,000万円だから今使っていい」ではありません。
そうではなく、「FIRE計画の将来キャッシュフローに入れて検討する価値がある」ということです。

40代には「自分の生活費」という強力な実績データもある

20歳の人が、「老後は年間200万円で暮らします」と言っても、50年後に本当にそうかは分かりません。
就職。結婚。子ども。住宅。転職。離婚。介護。人生の条件がまだ大きく変わります。

一方、45歳独身で生活スタイルがある程度固まっているなら、家賃。食費。通信費。光熱費。趣味。旅行。医療。年間生活費。について、かなり実績があります。
これはFIREでは大きい。必要資産を決めるとき、「利回り1%の差を議論するより、年間生活費が200万円なのか300万円なのかを知る方が影響が大きい」場合があります。

年間100万円違えば、25年間で単純に2,500万円違います。
つまり40代は、「資産形成できる時間は短くなっている一方、人生の必要コストが若い頃より見えている」、これも立派な武器です。

▶ FIREは年収より貯蓄率で決まる?|収入と支出の差を広げる40代独身の現実戦略 / FIRE計画の羅針盤

FIREでは高い投資リターンだけでなく、手取り収入からいくら残せるかが非常に重要です。
40代からの巻き返しでは、特にこの「残せる金額」が効いてきます。

40代FIREは「一生分を今すぐ用意するゲーム」ではない

FIREの必要資産について考えるとき、「年間生活費 × 25」のような数字を使うことがあります。
4%ルールの考え方、もちろん参考にはなります。

ただ、日本の40代会社員がFIREを考えるとき、「退職した瞬間から死ぬまでの全生活費を、金融資産だけで永久に賄う」と考える必要がある人ばかりではありません。

なぜなら将来、「公的年金」という収入が始まるからです。
日本年金機構によれば、老齢基礎年金は一定の受給資格期間を満たした場合、原則65歳から受給できます。
また厚生年金加入期間があれば、老齢厚生年金が上乗せされます。

例えば50歳でFIREする人。65歳まで15年間。65歳以降は公的年金という別のキャッシュフローが加わる。
もちろん、年金だけで生活できるとは限らない。将来の制度変更もあり得る。受給額は加入歴によって違う。

だから「年金があるから資産はいらない」ではありません。
でも、「50歳から65歳まで」と「65歳以降」では、必要な金融資産の役割が変わる可能性があります。
私はこれを、「FIREの橋渡し資金」と考えると分かりやすいと思っています。

40代からのFIREは「橋の長さ」が短い

25歳で完全FIREするとしましょう。公的年金まで約40年。非常に長い橋を金融資産だけで渡る必要があります。
一方55歳なら、65歳まで約10年。必要な橋の長さはかなり違います。

FIRE開始年齢のイメージ公的年金開始までの距離
30歳約35年
40歳約25年
50歳約15年
55歳約10年
60歳約5年

※公的年金を原則65歳から受け取る前提の単純なイメージです。実際の年金額・受給開始時期は個人ごとに確認が必要です。

これを見ると、ちょっと面白くないでしょうか。
普通は、30歳FIRE=若くてすごい。55歳FIRE=遅い。と見えます。
しかし資金計画だけなら、「若くFIREするほど、資産で支える期間が長くなる」という別の難しさがあります。

つまり40代・50代は、投資期間では若者に負けますが、「FIRE後に資産だけで耐える期間では有利になる」、ここが「投資は早い者勝ち」という話だけでは見えない部分です。

FIREは「資産額」より「キャッシュフローの継ぎ目」で考える

例えば55歳で会社を辞める人なら、「55~60歳」、「60~65歳」、「65歳以降」と分けて考えられます。

退職金をいつ受け取るのか。企業年金はどうなるか。公的年金はいくら見込めるか。現金はいくら必要か。投資資産をいつから取り崩すか。必要なら少し働くのか。こうやって人生を区切る。

すると、「FIREするには1億円必要か?」という巨大な一問より、「55歳から65歳までをどう橋渡しするか?」の方が、はるかに具体的になります。
これこそ40代からFIREを考える人の強みだと思います。
若者より未来が短い」、これは一見ネガティブです。でも裏返せば、「未来の不確実性も少し減っている」。

残りの会社員期間。年金までの年数。住宅。生活費。退職金。かなりのものが見えている。
FIRE計画は夢物語から資金繰り表に変わります。
私はむしろ、40代はここからがFIREを現実的に設計しやすい年代だと思っています。

▶ FIREの4%ルールは安全なのか?|40代独身が知るべき取り崩しの現実 / FIRE計画の羅針盤

FIRE後の資産取り崩しは「4%なら絶対安全」という単純な話ではありません。
年齢や生活費、公的年金までの期間も含めて考える必要があります。

40代からでも資産形成は動く。ただし「若者に追いつこう」としてはいけない

ここで簡単なシミュレーションをしてみます。あくまで仕組みを理解するための仮定です。

45歳。現在金融資産1,000万円。これから15年間、毎月10万円を積み立てる。
年率4%で運用できたと仮定します。税金・手数料等は考慮しない単純計算です。
この条件なら60歳時点の資産は、概算で約4,260万円になります。
もちろん年4%で必ず運用できるわけではありません。暴落もあります。逆にもっと高い年もあります。
だから将来予測ではなく、「現在資産 + 入金 + 時間」がどう働くかを見る例です。条件を変えるとこうなります。

仮定期間終了時の概算
現在500万円+毎月8万円を15年間、年4%約2,870万円
現在1,000万円+毎月10万円を15年間、年4%約4,260万円
現在1,500万円+毎月15万円を10年間、年4%約4,430万円
現在2,000万円+毎月10万円を10年間、年4%約4,430万円

※すべて一定の年率4%で運用できたという仮定による単純シミュレーションです。実際の投資成果を示したり保証したりするものではありません。税・手数料・相場変動も考慮していません。

ここから分かるのは、「40代なら4,000万円作れる」ではありません。そういう意味では使わないでください。
注目したいのは、「40代では『これから投資するお金だけでなく『すでに持っている元本が効く」ということです。

2,000万円持っている45歳は、投資を今日始めても元本2,000万円からスタートできます。
一方、25歳で資産10万円なら、運用期間は長くても元本は小さい。
どちらが優れているという話ではありません。「ゲームの条件が違う」、それだけです。

一番やってはいけないのは「時間がないからリスクを上げる」

40代投資で怖いのは、「若者より時間がない」という事実そのものではありません。
その焦りから、「若者に追いつこうとすること」です。

20代なら30年かけて増やせる。自分には10年しかない。だったら3倍のリターンを狙えばいい。これが危ない。
個別株集中。レバレッジ。信用取引。短期売買。よく分からない高利回り商品。
こういう方向へ行けば、「遅れて始めた」という弱点を埋めるどころか、残された資産形成期間まで失う可能性があります。

40代の戦略は、本来逆です。時間が若者より短いからこそ、「大事故を避ける」です。
複利で追いつくのではなく、現在資産。入金力。退職給付。年金。支出。これら全部を使う。

金融庁も安定的な資産形成において長期・積立・分散の重要性を示しています。
特定の金融商品を買えば安心という意味ではありませんが、「残り時間が短いから一発逆転」という考え方とはかなり距離があります。

▶ 40代から長期の資産形成を始めるなら、楽天証券で新NISAや投資信託を確認する

▶ 投資を始めるほど人生が苦しくなる?|資産額で自分を採点し始めた人がFIREから遠ざかる理由 / FIRE計画の羅針盤

遅れている」、「追いつかなければ」という感覚から投資成績と自己評価を結びつけると、必要以上のリスクを取りやすくなります。

40代会社員には若者にない「六つのFIRE武器」がある

ここまでを一度整理します。私は40代会社員のFIRE戦略には、少なくとも六つの武器があると思っています。

武器1:すでにある金融資産

預金でもいい。投資信託でもいい。株でもいい。企業型DCでもいい。
40代まで何も投資していなくても、預金が積み上がっているなら元本はゼロではありません。

重要なのは、「投資歴ではなく、現在の純資産から考え始めること」です。

武器2:若い頃より大きくなりやすい入金力

会社員の場合、40代は給与が若い頃より高くなっているケースがあります。
一方で独身なら、教育費がない。住宅ローンが終盤に入っている人もいる。生活スタイルも固まっている。
その結果、「資産形成へ回せる年間金額が20代より大きい」場合があります。

もちろん誰にでも当てはまるわけではありません。
しかし「投資期間 × 利回り」だけでなく、「投資期間 × 入金額 × 現在資産」を見るべきです。

武器3:退職給付という見えにくい資産

企業によっては退職一時金、企業年金、企業型DCなどがあります。
ここは必ず自分の会社制度を確認してください。「平均で○千万円らしいから自分ももらえる」は危険です。

早期退職すれば金額が変わるケースもあります。
逆に、会社員をあと数年続けることで退職給付が大きく変わる制度もあり得ます。

これを調べると、「今すぐ辞める」と「あと3年だけ働く」でFIRE計画が大きく変わることがあります。
これは40代だからこそ現実味を持つ情報です。

▶ 希望退職を打診されたらFIREを考えるべき?|40代独身が会社都合の下り坂で詰まないための現実戦略 / FIRE計画の羅針盤

希望退職や早期退職では、割増退職金だけを見ず、今後の給与や社会保険、再就職可能性までまとめて考える必要があります。

武器4:公的年金までの距離が短い

FIREに必要な資金を考えるとき、65歳以降に見込める公的年金は無視できません。
年金見込額が月15万円の人と月5万円の人では、65歳以降に必要な資産取り崩し額が違います。

40代になると、これまでの加入実績も積み上がっています。
だから、「ねんきん定期便等で自分の数字を確認する」、ここからFIRE設計がかなり現実的になります。

若者には時間があります。40代には、年金という次の収入源までの距離が短い」という別のメリットがあります。

武器5:生活費の「実績値」を持っている

FIRE必要資産は支出で大きく変わります。年間180万円で暮らせる人。年間400万円必要な人。
同じ5,000万円でも意味が全然違います。

40代になれば、「自分は節約すれば月12万円で暮らせます」という妄想ではなく、「実際に何年も生活してきたデータ」があります。これがFIRE計算の精度を高めます。

武器6:「もう十分」が分かり始める

20代では、これから何が欲しくなるか分かりません。
大きな家。高級車。子ども。海外移住。起業。人生の選択肢がまだ非常に広い。

40代になると良くも悪くも、「自分は別に高級車はいらんな」、「海外移住もしないな」、「年間数回旅行できれば十分だな」など、自分が何にお金を使いたいのかが分かってきます。

これはFIREではかなり重要です。なぜならFIREのゴールは、「最も多くのお金を持つことではなく、自分が満足できる生活を維持できること」だからです。

20年早く投資を始めた人より資産額が少なくても、自分に必要な金額へ先に到達すれば、その人にとっては十分です。FIREは他人との資産額競争ではありません。

ただし40代には「残り時間が短い」という弱点もある

ここまで40代の強みを書いてきましたが、当然弱点もあります。
一番大きいのは、「失敗から回復する時間が若者より短いこと」です。

55歳でFIRE予定なのに、50歳で資産を半分失った。これは重い。
20代なら働く時間を伸ばして立て直せる可能性があります。50代ではそう簡単ではありません。
だから40代からの資産形成では、「もっと儲ける」以上に、「FIRE計画を壊さない」ことが重要になります。

全財産を成長資産に入れればいいわけではない

40代は時間がない」→「だから現金を全部株へ」というのも危険です。
数年後に使う予定のお金まで価格変動の大きい資産へ入れれば、必要なタイミングで暴落している可能性があります。

住宅。医療。親の介護。退職直後の生活費。
40代以降は、資産形成と同時に「使う時期」も見始める必要があります。

▶ FIREを目指す人は現金いくら持つべきか?|キャッシュ比率の最適解 / FIRE計画の羅針盤

資産を増やすことだけではなく、暴落時に売らなくても済む現金をどう持つかもFIREでは重要です。

▶ 資産を増やすべきか守るべきか?|40代独身の投資バランスの考え方 / FIRE計画の羅針盤

FIREが近づくほど、「最大リターン」より「計画を壊さない資産配分」の重要性が増えてきます。

退職金は「予定資産」であって「確定資産」ではない

退職給付も同じです。会社に制度があるからといって、「退職金2,000万円あるから大丈夫」と先取りするのは危険です。
会社ごとに、算定方法。勤続年数。自己都合・会社都合。退職年齢。企業年金との関係。が違います。
必ず自社制度を確認する。FIREを理由に早期退職すると、定年までいた場合より退職給付が減る可能性もあります。

ただ、これは逆に言えば、「40代で確認する価値が非常に高い数字」ということです。
50歳退職なら○万円。55歳なら○万円。60歳なら○万円。
ここが分かれば、「会社をあと何年使うか」というFIRE戦略が立てられます。

▶ 正社員を続けながら「辞めないFIRE」は可能?|ブラック企業・ホワイト企業で変わる“辞めない戦略” / FIRE計画の羅針盤

会社員という立場自体を資産形成装置として利用し、すぐ辞めずにFIREへの距離を縮める考え方もあります。

40代からFIREを狙うなら「時間」で戦わず、総合力で戦う

ここまで考えると、40代の戦略がかなり見えてきます。
若者には30年という時間があります。そこへ、「俺も30年分の複利を10年で作ってやる」と勝負してはいけません。勝てない土俵です。

40代は別のゲームをする。私は次の順番で考えるのが現実的だと思っています。

  1. 現在資産を全部棚卸しする
    …預金。証券。財形。企業型DC。個人年金。負債。まず純資産を知る。
  2. 今後の会社員収入をざっくり見る
    …あと5年働く。10年働く。年間いくら残せるか。給与をすべて生涯収入として数える必要はありません。FIREまでに追加できる元本を見るためです。
  3. 退職給付制度を調べる
    …会社規程や人事資料などで確認する。早期退職した場合の扱いも重要です。
  4. 年金見込額を確認する
    …65歳以降に資産からいくら補う必要があるのかを知る。
  5. 実際の年間生活費を出す
    …理想ではなく実績。FIRE後に増える支出・減る支出も考える。
  6. FIRE開始から年金までの橋を作る
    …例えば55歳なら10年間。その期間に、現金。投資資産。退職金。必要なら少額の労働収入。をどう組み合わせるか。
  7. 残った長期資産を運用する
    …ここで初めて、株式比率。債券。現金。新NISA。などを考える。

こうすると、「40代から投資して1億円作れるか?」という巨大な問いが、「自分の資産と収入で、仕事を辞めても人生のキャッシュフローが成立するか?」に変わります。FIREで本当に知りたいのはこちらでしょう。

40代FIREの最大の武器は「会社を利用する期間を選べること」かもしれない

20代の新入社員が、「あと30年会社を利用して資産を作る」と言っても、未来は長すぎます。
会社がどうなるか分からない。本人もどうなるか分からない。

40代なら、「あと5年」、「50歳まで」、「55歳まで」という期間が現実的に見えます。
私はここに大きな強みがあると思っています。

会社員には、給与。賞与。社会保険。有給休暇。健康診断。福利厚生。信用力。退職給付。などがあります。
会社が嫌だからといって、これらの価値まで捨てる必要はありません。

▶ 会社員の福利厚生はいくら得している?|FIRE後に失う健康診断・団体保険・休暇制度の隠れ価値 / FIRE計画の羅針盤

FIREすると給与だけでなく、会社員だから使えていた福利厚生も失います。
退職時期を考える際は、こうした見えにくい価値も含めて考える必要があります。

40代なら、「会社に一生しがみつく」でも「明日辞める」でもない。「あと数年間だけ利用」する。
その間に資産を作る。退職金の条件を満たす。年金受給までの距離を縮める。
そして「自分の方から会社を手放す」、これができる。

会社員歴が長いというのは、「人生を無駄にした証拠」ではなく、「すでに給料・年金・退職給付・金融資産へ変換してきた時間」でもあります。
ここを全部無視して、「20代からオルカンを買っていなかったから負け」というのは、あまりに単純です。

「20代から始めればよかった」は正しい。でも、それは今日何もしない理由にはならない

40代になって投資を始めた人なら、おそらく一度は思います。
20年前に始めればよかった」、私もこの感情そのものを否定する気はありません。

20年前に優良な資産へ投資し続けていたら、今より資産が多かった可能性はありますが、それを言い始めると終わりません。
ビットコインを初期に買えばよかった。Amazonを買えばよかった。Appleを買えばよかった。あの不動産を買えばよかった。もっと若いうちから節約すればよかった。もっと年収の高い会社へ行けばよかった。
全部、結果を知っている今だから言えます。問題は、「過去の20年は投資できない」ことです。投資できるのは今日から先だけ。

だから40代の資産形成で比較すべきなのは、「25歳から投資した架空の自分」ではありません。
比較すべきなのは、「今日から何もしない自分」です。

45歳で始める。55歳まで10年間積み立てる。それと、45歳で「もう遅い」と何もしない。
55歳になったとき、どちらが選択肢を持っているでしょう。答えはかなり分かりやすいです。

「始めるのが遅かった」より「遅かったから無茶をした」の方が怖い

私は40代投資で本当に注意したいのはこれだと思います。
遅く始めたこと自体ではありません。「遅れを取り戻さなければ、と焦って無茶をすること」。
あるいは逆に、「もう遅い、と完全に諦めること」。

どちらも極端です。40代には20代ほど時間がありません。
だからこそ、「人生を一発逆転させる投資ではなく、すでに持っているものを整理してFIREへ近づける投資」の方が相性がいい。

新NISAを満額にできなくてもいい。毎月30万円積み立てられなくてもいい。資産1億円がなくてもいい。
大切なのは、自分の生活費。現在資産。今後の収入。退職給付。年金。退職希望年齢。
これらをつないだときに、「あと何年働けば選択肢が持てるか」が見えることです。
その数字が分かった瞬間、FIREは夢から計画に変わります。

まとめ|若者には「長い時間」がある。40代には「積み上げてきた時間」がある

投資は早く始めるほど有利」、これは間違いではありません。

若い人には、長い運用期間。長い積立期間。失敗から回復する期間。複利が働く時間。があります。
これらは非常に強い武器です。だから若いうちに無理なく資産形成を始められるなら、それに越したことはありません。

でも、そこから「40代は手遅れ」と結論づける必要はないです
40代会社員には、すでに形成した金融資産があるかもしれない。若い頃より大きな入金力があるかもしれない。退職給付があるかもしれない。厚生年金の加入実績が積み上がっている。公的年金までの距離も短くなっている。自分の実際の生活費も分かっている。会社員としてあと何年働けばいいのかも見え始めている。

つまり、若者には「これから積み上げられる時間」がある。
一方で40代には、「すでに積み上げてきた時間」がある。

20年間投資していなかったからといって、その20年間が全部ゼロだったわけではありません。
働いた。給料を得た。預金した。厚生年金に加入した。退職給付の算定期間を積み上げた。生活のサイズを知った。自分に必要なものと不要なものも分かってきた。その全部をFIRE計画へ持ち込めばいい。

だから40代からFIREを目指すなら、20代の真似をする必要はありません。

  • 20代より高いリターンを取ろうとしない
  • 20年の遅れを10年で取り返そうとしない
  • SNSの若年FIRE達成者と競争しない
  • 自分がすでに持っている資産を数える
  • これから得られる収入を数える
  • 退職給付を確認する
  • 年金を確認する
  • 生活費を確認する

そして、「何円あれば勝ちか」ではなく、「何歳になれば会社を手放しても生活が成立するか」を計算する。

FIREとは、若いうちに投資を始めた人だけが参加できるゲームではありません。
まして、「一番早く1億円を作った人が優勝」という競技でもない。
自分が必要な自由を買えるだけのお金を、自分の残り時間の中で作る」、それでいいはずです。

25歳から始められなかった。それはもう変えられません。
でも45歳から何もしなければ、55歳になったとき、今度は、「10年前に始めればよかった」と思うことになります。
だったら、「今日がこれからの人生で一番若い日」という、少々使い古された言葉も、投資に限っては案外バカにできません。

ただし40代は、若者と同じスタートラインに戻る必要はない。
あなたには、もう20年以上積み上げてきたものがある」、そこから始めればいいのです。

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※本記事は、特定の金融商品への投資、FIRE、早期退職、退職時期等を推奨または保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。新NISA、株式、投資信託、債券等を利用する場合は、商品内容、リスク、手数料、税制、家計状況等をご確認のうえ、ご自身の判断で行ってください。
※退職金・企業年金・確定拠出年金等の制度内容や給付額は、勤務先、勤続年数、退職理由、規程等によって大きく異なります。本記事中の統計値は個人の将来の受取額を示すものではありません。FIRE計画へ織り込む際は、勤務先の規程・制度資料等でご自身の条件をご確認ください。
※公的年金の制度・受給額等は将来変更される可能性があります。具体的なFIRE計画を立てる際は、日本年金機構等の最新情報およびご自身の年金記録・見込額をご確認ください。

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