「最近、世の中からものすごい圧を感じませんか?」、新NISAを始めよう。預金だけではインフレに負ける。老後資金は自分で作ろう。若いうちから投資した方がいい。長期・積立・分散が大切。オルカン。S&P500。高配当株。新NISAを満額まで使おう。
テレビを見ても、ネットを見ても、SNSを見ても、金融機関の広告を見ても、「とにかく投資を始めましょう」という方向へ世の中全体が動いているように見えます。
もちろん投資には合理性があります。私自身、FIREを目指しているくらいですから、「預金だけ持って株式なんて絶対買うな」と言いたいわけではもちろんありません。
長期の資産形成に株式や投資信託を利用することには十分な意味があります。
新NISAも、投資によって利益が出た場合の税負担を軽減できる便利な制度です。
ただ、あまりにも全方向から、「投資しよう」と言われ続けると、一度くらい立ち止まって「これ、誰のためなんだ?」と考えてみたくなります。
投資家のため。もちろんそうでしょう。でも、本当に投資家だけでしょうか。
政府も投資を促進している。証券会社もNISA口座獲得に力を入れる。運用会社は投資信託を作る。銀行も金融商品を販売する。金融メディアでは新NISAの記事が増える。SNSでは投資関連の投稿が大量に流れてくる。そこには当然、それぞれの目的があります。
だったら一度、「投資ブームによって誰が、どのように得をするのか」を全部並べてみた方がいい。
ただし最初に言っておきます。この記事は、「新NISAは国民をハメるための陰謀だ」なんて話ではありません。
逆です。政府が投資を増やしたいことは別に隠されていません。
政府は2022年に「資産所得倍増プラン」を決定し、NISA総口座数を5年間で1,700万から3,400万へ、NISA買付額を28兆円から56兆円へ増やす目標を掲げました。つまり「貯蓄から投資へ」は、かなり明確な政策目標です。
だから問題は、「誰かが裏で悪いことをしているか」ではありません。もっと単純です。
政府にも目的がある。金融業界にも目的がある。メディアにも目的がある。そして投資家にも目的がある。
それぞれの目的が重なった結果、大きな投資ブームができている。
そこで個人投資家が確認すべきなのは、「『みんなが投資を勧める理由』と『自分が投資する理由』は、本当に同じなのか?」という点です。
私は、投資ブームの本当の怖さは「誰かだけが儲かること」ではないと思っています。
「自分が何のために投資するのか分からないまま、他人の目的に乗せられてしまうこと」、こちらの方がずっと怖い。
特にFIREを目指している人は、普通の人以上に資産額や投資情報へ敏感です。
だからこそ一度、投資ブームそのものを少し離れたところから眺めてみましょう。
新NISAの投資ブームは「自然発生」したわけではない
まず現在地です。新NISAが始まったのは2024年。その後の伸びはかなり大きなものになっています。
金融庁が2026年7月に公表した最新資料では、2025年12月末時点のNISA口座数は「2,821万口座」です。
NISA制度開始後の累計買付額は「71兆円」となっています。
政府が掲げていた2027年12月末までの目標は、NISA口座数3,400万口座。買付額56兆円。
つまり買付額については、目標期限より前に当初目標を上回っています。なお71兆円は「現在の残高」ではなく「累計買付額」なので、そこは区別が必要です。
これは単なる流行とは言いにくい規模になっています。
しかも政府は最初から、「家計のお金を預貯金から投資へ動かす」ことを政策として掲げています。
「資産所得倍増プラン」では、家計による投資を増やし、中間層の資産形成につなげる方針が示されました。
ここで、「ほら!政府が国民の貯金を狙っている!」と飛躍すると話がおかしくなります。
政府側には政府側の論理があります。家計が金融資産から所得を得られるようにする。企業や市場へ資金を供給する。資本市場を活性化する。経済成長につなげる。こうした政策目的がある。
つまり政府にとって、「国民が投資をすることには、個人の資産形成以外の意味もある」わけです。ここが重要です。
国全体の最適解と、私たち個人の最適解は同じとは限らない
政府から見れば、1,000万人が投資を始める。2,000万人が投資を始める。3,000万人が投資を始める。というのは政策目標として意味があります。
でも私たち個人にとって重要なのは、日本全体のNISA口座数ではありません。
来年使う生活費が足りるか。住宅費はいくらか。生活防衛資金はあるか。借金はないか。何年後に使うお金なのか。値下がりしても耐えられるか。FIREまで何年あるのか。こっちです。
つまり、「社会全体として投資家が増えた方がいい」という話と、「私たちが今日100万円を投資した方がいい」という話は別です。この二つが、投資ブームではしばしば一緒になります。
「日本は貯金が多すぎる」だから、「あなたももっと投資すべき」。
でも、その「あなた」の事情は本来一人ずつ違います。
▶ 「貯金は日本円への集中投資」は本当か?|インフレ時代でも現金を持つ合理的な理由 / FIRE計画の羅針盤
「現金だけでは危険」という説明にも正しい部分がありますが、近いうちに円で使うお金まで投資へ回すべきかは別問題です。現金にも流動性や暴落時の売却回避という役割があります。
投資ブームで得をするのは誰なのか
では「みんな投資しましょう」という社会になったとき、誰にメリットがあるのでしょう。
ざっくり整理するとこうなります。
| 立場 | 投資家が増えることで得られるもの | 個人投資家が注意したい点 |
|---|---|---|
| 政府・政策当局 | 家計の資産形成促進、資本市場への資金流入、成長資金の供給 | 国全体の目標と個人の家計事情は同じではない |
| 証券会社・金融機関 | 口座増加、預かり資産増加、取引・金融サービス利用拡大 | 販売側と顧客側の利益が常に完全一致するとは限らない |
| 運用会社 | 投資信託などの運用資産増加、運用管理費用等 | 低コストでも保有期間が長ければ費用は継続する |
| 上場企業・市場 | 株式流動性向上、株式市場の厚み、将来の資金調達環境改善など | 既存株の売買代金がそのまま企業へ直接入るわけではない |
| メディア・情報発信者 | 閲覧数、広告、関連サービスへの送客機会 | 情報提供者の収益構造を知っておく |
| 個人投資家 | 非課税制度、長期的な資産成長への参加機会 | 投資損失・価格変動リスクを直接負う |
ここでポイントなのは、「別に一人だけが得する仕組みではない」ことです。
政府も得する可能性がある。金融会社も得する。企業も得する。投資家も得する可能性がある。
ビジネスでは普通のことです。例えばスーパーで野菜を買えば、農家も儲かる。物流会社も儲かる。スーパーも儲かる。そして消費者も野菜を手に入れる。
誰かが利益を得ているから、消費者が騙されているとは限りません。
金融商品も同じです。ただし金融商品には一つ大きな特徴があります。
「買ったあとに価値が下がる可能性がある」、ここが野菜とは違います。
証券会社は「売買手数料ゼロ」でも慈善事業ではない
最近は「手数料無料」を大きく打ち出す証券サービスも珍しくありません。
すると、「証券会社はどうやって儲けているんだ?」となります。
当然ですが、証券会社は営利企業です。証券会社の仕事は単なる株式売買の取り次ぎだけではありません。
日本証券業協会も、証券会社の業務としてブローカレッジ、自己売買、企業の株式・債券発行を支える引受業務、M&Aアドバイザリーなどさまざまな業務を説明しています。
個人向けビジネスでも会社によって、株式取引。投資信託。信用取引。外国証券。為替関連取引。その他の金融サービス。など収益源は異なります。
だから、「株の売買手数料が無料 = あなたが顧客でいても会社は一円も儲からない」とは考えない方がいい。
企業側からすれば、まず口座を作ってもらう。資産を預けてもらう。長く利用してもらう。そこからさまざまなサービスとの接点が生まれます。
これは証券会社だけ特殊なのではありません。どんなビジネスでも、「顧客を獲得し、長くサービスを利用してもらう」ことには価値があります。
投資ブームによって数百万人規模で新しい投資家が生まれるなら、金融業界にとって巨大な市場になるのは当然です。
投資信託は「買ったとき」だけがお金になるわけではない
投資信託の場合は、さらに分かりやすいです。投資信託には「運用管理費用(信託報酬)」があります。
投資信託協会によれば、信託報酬は投資信託を保有している間、信託財産から日々差し引かれる費用で、運用会社だけでなく販売会社や信託銀行にも支払われます。
つまり運用会社にとって、100億円運用するファンドと、1兆円運用するファンドでは、同じ信託報酬率でも金額としての収益規模が変わります。
だから運用会社にとって、「運用資産残高が増えること」には大きな意味があります。
ここで、「じゃあ信託報酬は全部ぼったくりか」というのも違います。
運用にはコストがかかります。指数への連動。資産の売買。管理。報告。信託財産の保管。さまざまな仕事があります。その対価が信託報酬です。
問題なのは、「費用が存在することではなく、自分が何にいくら払っているのか知らないこと」です。
つみたて投資枠では対象商品の手数料・コストについて一定の基準が設けられており、制度側も長期資産形成に適した商品へ絞る設計をしています。金融庁も、投資信託を保有している間は信託報酬がかかることを説明しています。
つまり、「低コスト化が進んだこと」と「金融業界が投資家増加によって利益を得ること」は両立します。
金融庁自身も「販売側のインセンティブ」を問題にしてきた
「金融会社と客の利益が完全には一致しないかもしれない」というのは金融業界への陰謀論ではありません。
むしろ金融庁自身が長年取り組んできたテーマです。
金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を設け、金融事業者が顧客本位の良質な商品・サービスを競って提供する環境づくりを進めています。
さらに、つみたてNISA制度を検討した際には、販売手数料の多寡が「販売側のインセンティブを歪めないようにする」観点も示されていました。
要するに、「売る人には売る人の都合がある」から商品を選ぶ側には「自分の都合で選ぶ力が必要」、それだけの話です。
「株を買えば企業を応援できる」は半分正しく、半分省略されている
投資を勧める話で、「株式投資によって企業へ成長資金を供給できる」という説明もあります。
これも大筋では理解できます。ただし少し丁寧に分けた方がいいです。
株式市場には、「発行市場」と「流通市場」があります。
企業が新しく株式を発行して投資家から資金を調達するのが発行市場です。
一方、私たちが証券取引所で通常行っている、Aさんが株を売る、Bさんがその株を買う、という取引は流通市場です。
日本取引所グループも、企業が新しく株式等を発行して資金調達する場を「発行市場」と説明しています。
だから例えば、あなたが今日、上場企業Xの既存株式を証券取引所で100万円買った。
すると、「100万円がそのままX社の銀行口座へ振り込まれる」わけではありません。
売り手へ渡ります。ここは意外と誤解されやすいところです。
では流通市場は企業と関係ないのか。それも違います。
活発な流通市場があり、株式に十分な流動性があれば、企業は将来的な増資などで資金調達しやすくなります。
JPXも、上場によって株式の流動性が確保されることで、公募増資などの資金調達手段が広がることを上場メリットの一つとして挙げています。
だから、「個人投資家が市場に参加することは、間接的に資本市場を支える」。
ただ、「自分が株を買った=その金額を企業へ直接出資した」とまでは言えない。
こういう細かな違いを知っておくと、「投資は社会のため」という話にも、「金融業界のためだけ」という話にも、極端に引っ張られなくなります。
では個人投資家は損をさせられているのか?
政府も得する。証券会社も得する。運用会社も得する。企業も得する。メディアも得する。
「じゃあ個人投資家だけカモなのか」と思うかもしれません。
もちろん、そんな単純な話ではありません。個人投資家にも明確なメリットがあります。
新NISAはその代表です。通常、株式や投資信託から得られる売却益や配当・分配金には税金がかかりますが、NISA口座内の対象投資から得た利益は非課税になります。
利益が出るなら、これは大きなメリットです。さらに長期的な企業成長や経済成長に参加し、現金だけでは得られないリターンを得られる可能性もあります。
つまり、「金融業界が儲かることと、投資家が儲かることは両立する」、Win-Winになることは普通にあります。
私はここを無理に対立構造へしたくありません。
問題は、「投資家にも利益がある可能性がある」が、「だから誰でも今すぐ投資すべき」へ変わる瞬間です。
NISAは「儲かる制度」ではない
NISAそのものが利益を生むわけではありません。
NISAは、「投資によって利益が出た場合、その利益を非課税にする制度」です。
私はこれを、「投資商品」ではなく「税制上の箱」と考える方が分かりやすいと思っています。
箱の中へ何を入れるかによって結果は変わります。
投資信託。株式。ETF。それぞれ値下がりする可能性があります。
そして金融庁の資料にもある通り、NISA口座で損失が出ても、特定口座など他の口座の利益との損益通算や損失の繰越控除はできません。
つまり、NISAだから損しないではなく、「利益が出れば税制上有利」、「損失が出れば普通に損失」です。
この当たり前の部分が、「NISAをやらないと損」という言葉になると消えやすいです。
「非課税枠を全部使う」と「豊かになる」は別
年間投資枠があると、人間は不思議なもので、「使い切らないともったいない」と感じます。
でもこれはクーポン券ではありません。300万円投資すれば300万円得するわけではない。
むしろ手元資金が不足しているのに、枠を埋めるために生活を圧迫すれば本末転倒です。
▶ NISA貧乏とは何か?|新NISAで生活が苦しくなる40代独身の落とし穴 / FIRE計画の羅針盤
非課税枠を埋めることが目的になり、日々の生活費まで削り始めたら、資産形成と生活のバランスを一度見直した方がいいかもしれません。
ここは投資ブームの重要な特徴です。制度には年間上限がある。SNSでは満額投資が目立つ。
すると、「上限 = 目標」に見えてしまう。
でも上限は、「そこまで使っていい」という数字であって、「そこまで使わなければならない」という数字ではありません。
クレジットカードの利用限度額が300万円だからといって、「毎月300万円使わないともったいない!」とは思わないです。NISA枠にも少し似たところがあります。
▶ 新NISA満額後はどうする?|特定口座・現金・iDeCoの優先順位を40代独身FIRE目線で整理 / FIRE計画の羅針盤
NISAを使い切った後も、必ず投資を増やし続けなければならないわけではありません。
特定口座、現金、iDeCoなど、それぞれ役割があります。
投資を勧める言葉を「翻訳」してみる
投資の世界でよく見る言葉があります。ほとんどは完全な間違いではありません。
むしろ「半分以上正しいから強い」。でも、その言葉だけでは省略されている条件があります。
それを一つずつ翻訳するとこんな感じです。
| よく見る言葉 | 確かに正しい部分 | 一緒に確認したいこと |
|---|---|---|
| 「現金だけではインフレに負ける」 | 物価上昇で現金の実質購買力は低下し得る | そのお金をいつ、何の通貨で使うのか |
| 「NISAを使わないともったいない」 | 利益が出た場合の非課税メリットがある | そもそも今投資に回せる資金なのか |
| 「若いうちから投資すべき」 | 長い運用期間は大きなメリット | 生活防衛資金や現在の生活を犠牲にしていないか |
| 「積立なら安心」 | 購入時期を分散できる | 元本保証になるわけではない |
| 「オルカン一本で十分」 | 世界株へ簡単に分散できる | 株式100%で自分のリスク許容度に合うのか |
| 「今始めないと機会損失」 | 相場上昇を逃す可能性はある | 機会損失は実際に請求される損失ではない |
| 「投資しない方が危険」 | 長期的なインフレ・機会損失リスクはある | 価格変動リスクを取る必要のない資金まで投資する必要はない |
こう見ると、「広告が嘘だから騙される」というより、「正しい一部分だけを強く見せられると判断を誤りやすい」という方が近いと思います。
「投資しないリスク」ばかり語られると「投資するリスク」が消える
最近は、「投資しないこともリスクです」という説明をよく見ます。
これ自体は正しい。現金にも、インフレ、円安、機会損失などがあります。
ただ、「投資しないリスク」を強調しすぎると、反対側にある、「投資するリスク」が小さく見えてしまう。
株価下落。為替変動。売却時期。商品選択。手数料。こうしたリスクも普通に存在します。
金融庁自身も、金融商品には安全性・収益性・流動性のすべてが最高という商品はなく、目的に応じた使い分けが必要だと説明しています。
だから、「現金か投資か」という二択にする必要はありません。
生活防衛資金は現金。近く使うお金も現金。10年以上使わない資金の一部は投資。というように役割を分ければいい。
▶ 「貯金は日本円への集中投資」は本当か?|インフレ時代でも現金を持つ合理的な理由 / FIRE計画の羅針盤
「貯金=悪、投資=正義」と単純化せず、使う時期によって現金と投資の役割を分けています。
「オルカンが人気」と「自分にも最適」は同じではない
投資ブームでは、ある商品が人気になると、「みんな買っている」が安心材料になります。
でも、「人気は商品選択の理由にはなっても、自分との適合性の証明にはなりません」。
全世界株式は非常に幅広く分散された商品ですが、それでも株式です。大きく下落する可能性があります。
数年後に使う資金なら、世界分散されていることより価格変動の方が問題になるかもしれません。
▶ オルカン1本でいいのか?|“それで十分な人・足りなくなる人”の違いを現実ベースで徹底整理 / FIRE計画の羅針盤
商品として優れているかどうかと、「自分の全資産をそれ一つにしていいか」は別問題です。
投資情報を見たら「誰が得するか」を一度だけ考える
だからといって、「証券会社の言うことは全部疑え」、「金融メディアを読むな」、「投資系YouTubeを見るな」ではありません。そんなことをしたら、情報が入らなくなります。
私がおすすめしたいのはもっと簡単です。情報を見たとき、「この人は私がこの行動をすると、何を得るんだろう?」と一度だけ考える。それだけです。
証券会社なら、口座開設。預かり資産。サービス利用。運用会社なら、ファンド残高。メディアなら、閲覧。広告。発信者なら、再生数。広告収益。アフィリエイト。有料サービス。などがあり得ます。
そして、「インセンティブがある = その情報が間違っている」でもありません。ここが大事です。
例えば証券会社が、「長期分散投資をしましょう」と言った。
証券会社にとって顧客資産が増えるメリットはある。
でも、そのアドバイス自体が個人投資家にとって合理的なケースも普通にあります。
利害が存在することと、情報が間違っていることは別です。
自分と相手の利益が同時に成立するなら何も問題ない
証券会社、儲かる。運用会社、儲かる。投資家、長期的に資産形成できる。政府、家計の資産形成が進む。企業、資本市場が厚くなる。
全員得する。別に悪くありません。むしろ経済は基本的にこういうWin-Winを作ろうとします。
問題になるのは、「自分だけ違う目的で参加しているとき」です。
例えば、証券会社は長期顧客になってほしい。運用会社は資産を預け続けてほしい。SNSは毎日投資情報を見てほしい。
でも自分は「FIREしたら投資のことをあまり考えず静かに暮らしたい」、目的が全然違います。
だったら、毎日売買する必要はない。新商品を追いかけなくてもいい。全部の金融サービスを使う必要もない。投資ニュースを毎日見る必要もない。
「自分に必要なところだけ利用すればいい」、これが一番強いです。
広告を見るときは「広告」というだけで一段割り引く
日本証券業協会も、金融商品の広告は金融商品の販売促進のために作られるものであり、広告だけで判断せず、商品性やリスクを十分理解したうえで投資判断するよう案内しています。
広告の役割は、「あなたの人生設計を完成させること」ではありません。これは当たり前ですが、かなり重要です。
広告の役割は、その商品やサービスに興味を持ってもらうことです。
だから、「広告 = 悪」でもなければ、「広告 = 自分」への最適解でもない。そういう距離感で見ればいい。
なおSNSでは、通常の金融広告とは別に、著名人や金融機関を装った投資詐欺も問題になっています。
金融庁はSNS上の投資詐欺が疑われる広告・投稿の情報受付窓口を設置して注意喚起しています。
「絶対儲かる」、「必ず上がる」、「今だけ」、「借金してでも」のような勧誘は、通常の投資情報とはまったく別物として警戒した方がいいでしょう。
FIREを目指す人は投資ブームと少し距離を取った方がいい
FIREを目指す人が、普通の会社員以上に投資情報へ触れやすいのは当然です。
資産3,000万円。5,000万円。1億円。4%ルール。高配当。インデックス投資。新NISA。
FIREと金融市場は切り離しにくい。だから知らないうちに、「投資家であること」そのものが目的になりやすい。
でも本来の目的は違います。FIREするために投資する。FIREしたあと生活するために資産を持つ。
つまり投資は、「人生の自由を増やすための手段」です。
金融業界の「理想的なお客さん」と、FIRE民の理想像は違うかもしれない
金融会社にとってありがたい顧客は、口座を持つ。たくさん資産を預ける。新しいサービスを利用する。長期間取引関係を続ける。という人でしょう。
一方FIRE民にとって理想的な状態は、必要な商品だけ買った。低コストの商品を長期保有。ほとんど売買しない。十分な資産を作った。あとは市場を毎日見ない。という状態かもしれません。
つまり、「自分にとって最適な金融行動が、金融業界にとって一番売上の立つ行動とは限らない」、ここを理解しておけばいい。
逆に言えば、金融会社が利益を得る商品でも、自分に必要なら利用すればいい。それだけです。
▶ 投資を始めるほど人生が苦しくなる?|資産額で自分を採点し始めた人がFIREから遠ざかる理由 / FIRE計画の羅針盤
投資が人生を自由にする手段ではなく、「毎日自分を採点する装置」になってしまう問題を扱っています。
FIRE民にとって「何も買わない」が最適な日もある
金融情報を毎日見ていると、何かしなければいけない気になります。
株価が下がった、買おう。株価が上がった、乗り遅れる。新しいETFが出た、調べよう。高配当株が話題、買おうかな。新制度、使わなきゃ。
でも資産形成では、「何もしない」という選択肢もかなり重要です。
もう必要な資産配分になっている。積立設定も済んでいる。生活防衛資金もある。
だったら、今月何もしなくてもいい。金融商品を買わなければ経済的に遅れている、ということではありません。
▶ 資産を増やすべきか守るべきか?|40代独身の投資バランスの考え方 / FIRE計画の羅針盤
FIREが近づけば「最大リターンを取る」より、すでに作った資産をどう守り、どう使うかの重要性が高くなります。
当ブログにも広告があります
このブログにも証券会社などの広告を掲載することがあります。
広告経由で申込み等があれば、このブログに収益が発生する場合があります。
つまり私も、「投資関連サービスを紹介することで利益を得る可能性がある側」です。
だからこそ広告は広告。記事は記事。分けて見てもらえばいいと思っています。
広告があるからサービスが悪いわけでもない。広告があるからサービスが良いわけでもない。
「最終的には公式情報で商品内容、リスク、手数料等を確認して、自分に必要なら利用する」ことです。
「投資するか」ではなく「誰のゲームをしているのか」を考える
最終的に投資ブームとの付き合い方は、かなりシンプルになります。
投資情報を見たら、次のように考える。「誰が言っているのか」です。
政府。証券会社。運用会社。銀行。メディア。インフルエンサー。個人投資家。立場によって目的が違います。
次に、「その人は自分が行動すると何を得るのか」です。
口座開設。手数料。運用資産。広告収益。政策目標。再生数。何かあるかもしれません。
でも、そこで終わらない。一番大切なのは、「自分は何を得るのか」です。
この3段階です。例えば、「新NISAを始めよう」という情報を見た。
金融会社には顧客獲得メリットがある。それは分かった。では自分は?
20年間使わない余裕資金がある。生活防衛資金も十分。投資リスクも理解している。低コストの分散投資をしたい。それなら、「普通に使った方がいい」です。
逆に、貯金50万円。来年引っ越す。カードの支払いも多い。
それなのに、「NISAをやらないと損!」と焦って50万円全部投資する。
これは金融会社が悪い以前に、「自分の状況と投資行動が合っていない」です。
「誰が得するか」を知る目的は、投資を疑うためではない
伝えたいのは、「投資を疑え」ではありません。むしろ、「投資を自分のものにする」ということです。
みんながやっているから買う。政府が勧めるから買う。SNSで人気だから買う。銀行に勧められたから買う。FIRE界隈では常識だから買う。これではまだ、「他人の投資」です。
自分の生活費を知る。使う時期を決める。必要な現金を残す。許容できるリスクを考える。商品の仕組みを知る。手数料を確認する。そのうえで買う。ここまで来て初めて、「自分の投資」になります。
「投資しないと損」と言われたから始めた人と、「このお金は20年間使わないから株式へ置く」と決めた人。
同じ投資信託を買っていても、中身はかなり違います。
後者の方が暴落したときにも、「なぜこれを持っているのか」を説明しやすい。その差は大きいです。
投資ブームから一歩離れるための確認項目
最後に、何か投資したくなったとき、これだけ確認すればかなり違うと思います。
- このお金はいつ使うのか
- 投資しなくても生活は成立しているか
- 生活防衛資金は別にあるか
- なぜこの商品なのか自分の言葉で説明できるか
- 価格が大きく下がっても持ち続けられるか
- 購入時・保有中・売却時のコストを把握しているか
- 「NISAだから」ではなく商品そのものを理解しているか
- SNSの人気ではなく自分の資産配分から判断しているか
- 情報提供者にどんな利益があるか理解しているか
- 今日買わないと本当に困るのか
最後の「今日買わないと本当に困るのか」が重要です。
大抵の長期資産形成では、今日、明日、来週の違いで人生が決まるわけではありません。
だから、「今すぐ!」と急かされたら、一晩考える。それだけでも投資ブームとはかなり健全な距離を取れます。
▶ 「投資は早く始めるほど有利」の定説に抗う|40代会社員には若者にないFIREの武器がある / FIRE計画の羅針盤
投資は早く始めるほど時間面では有利ですが、「早く始めなかったから手遅れ」とは限りません。
40代には既存資産、入金力、退職給付、年金までの距離など別の武器があります。
まとめ|「みんなが得する投資」でも、自分まで得するとは限らない
新NISA時代。日本は本当に大きな投資ブームの中にいます。
2025年末のNISA口座数は2,821万。制度開始以降の累計買付額は71兆円。
もはや一部の投資好きだけが株を買う時代ではなくなってきました。
では、この投資ブームは誰のためなのでしょう。
政府には、家計の資産形成。投資資金の拡大。資本市場の活性化。という政策目的があります。
証券会社には、顧客や預かり資産を増やすビジネス上のメリットがあります。
運用会社には、投資信託などの運用資産が増えるメリットがあります。
企業や市場にも、流動性や資金調達環境が改善する可能性があります。
メディアや情報発信者には、閲覧、広告、送客などのメリットがあります。
そして個人投資家にも、「税制優遇を利用しながら企業や経済の成長へ参加できるメリット」があります。
つまり答えは、「一人だけではない」です。うまくいけば、みんな得をする。それでいい。
ただし、政府が得する。証券会社が得する。運用会社が得する。企業が得する。メディアが得する。
そこまで全員得しても、あなたの投資が値下がりすれば、あなたは損をする。
投資の価格変動リスクを直接引き受けるのは、最後は投資家自身です。
だから、「みんな投資しています」は投資理由にならない。「政府が推奨しています」も投資理由にはならない。
「NISAだから」だけでも足りない。「オルカンが人気だから」でもない。
最終的には、「自分の人生にこの投資が必要だから」、ここまで戻るしかありません。
そしてFIREを目指しているなら、なおさらです。
FIREの目的は、金融商品をたくさん買うことではありません。証券口座の残高を最大化することでもありません。投資家として誰かに勝つことでもありません。
「会社、お金、時間に対する自分の選択肢を増やすこと」、そのために投資が役立つなら利用する。
現金が必要なら現金を持つ。十分資産ができたらリスクを減らす。必要のない商品なら買わない。それでいい。
投資ブームの中で一番強い人は、最も早く新商品へ飛びつく人でも、NISA枠を最速で埋める人でもないと思います。
周囲がどれだけ「投資しろ」と言っても、「自分のお金に何をさせるかを自分で決められる人」、その人こそ、投資ブームを利用する側です。
逆に、政府が言ったから。広告で見たから。SNSでみんな買っているから。やらないと損と言われたから。という理由だけでお金を動かすなら、知らないうちに「他人のゲームに参加している」のかもしれません。
誰が得するかを見る。そして最後に、「で、私は何を得るの?」と聞く。
投資ブームとの付き合い方は、それくらいでちょうどいいのだと思います。
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・NISA枠を使ったあとまで「もっと投資」と考えず、現金や他制度も含めて次の一手を整理します。
※本記事は、特定の金融商品、証券会社、投資手法、新NISAの利用等を推奨・否定するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。株式、ETF、投資信託等の利用を検討する場合は、商品内容、価格変動リスク、為替リスク、手数料、税制、ご自身の家計・資産状況等を確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。
※NISAは投資による利益を保証する制度ではありません。また、NISA口座内で生じた損失については、課税口座との損益通算や繰越控除ができません。制度内容は変更される場合があるため、利用時には金融庁や金融機関等の最新情報をご確認ください。
※本記事にはアフィリエイト広告を含む場合があります。広告掲載の有無にかかわらず、金融商品の利用判断にあたっては各金融機関の公式情報、交付書面等をご確認ください。



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