地方FIREは本当にお得?|家賃だけでは見えない「生活圏コスト」を考える / FIRE計画の羅針盤

日本地図にダーツを投げながら、地方FIREの住む場所を考えているメガネおじさんが、家賃相場・車の維持費・通勤アクセス・買い物利便性・医療アクセスなどを見比べている、青基調の実写風アイキャッチ画像 FIRE計画の羅針盤

FIREするなら東京を出た方がいい。地方へ移住すれば家賃が下がる。家賃が半分になれば必要なFIRE資産も減る。こう言われると、かなり説得力があります。
実際、FIREにおいて住居費は大きな固定費です。東京23区の便利な場所に住み続けるのと、地方の比較的家賃が安い地域へ移るのでは、毎月の支出に大きな差が出る可能性があります。

FIREを目指す会社員にとって、毎月数万円の固定費削減は強烈です。
年間にすれば数十万円、それが20年、30年と続けばかなり大きな金額になります。
それなら、「地方FIREの方がお得」と考えたくなるのも当然です。

でも、ここで一つ疑問があります。私たちは地方移住のコストを、家賃だけで計算しすぎていないでしょうか。
家賃が安くなった代わりに車が必要になった。スーパーや病院まで距離がある。冬の光熱費が増えた。東京にいる親や友人へ会いに行く交通費が増えた。安い中古住宅を買ったら修繕費がかかった。若いうちは車で何でもできたけれど、70代になると同じ生活圏が不便になった。
こうした費用まで含めると、「東京より家賃が5万円安い」という一つの数字だけでは、FIRE後の本当の生活費は分かりません。

そこでこの記事では、住む場所を比較するときの考え方として、便宜的に「生活圏コスト」という言葉を使います。
ここでいう生活圏コストとは、単なる家賃や住宅価格ではありません。
その地域で自分が望む生活を維持するために必要な、住居、移動、光熱、買い物、医療アクセス、交際、帰省、住宅維持などを含めた実質的な生活コスト」です。

結論を先に言えば、FIREに向いている場所は「家賃が安い場所」ではありません。
自分に必要な生活を、長期間、無理なく低い総コストで維持できる場所」です。

地方が正解になる人もいます。東京が意外と正解になる人もいます。
そして実際には、東京か田舎かという二択ではなく、その中間にかなり魅力的な選択肢があります。
40代独身がFIRE後にどこへ住むのか。今回は「地方FIREは本当にお得なのか?」を、家賃だけではなく生活圏全体のコストから考えてみます。

スポンサーリンク
  1. 「東京の物価は地方の2倍」と単純に考えると見誤る
  2. 地方移住で家賃が下がっても、コストは別の場所へ移る
  3. FIRE後の住む場所は「住宅」ではなく「生活圏」を買っている
  4. 「地方FIRE=車が必要」と決めつけるのも違う
  5. FIREに必要なのは「最安の街」ではなく「固定費化しにくい街」
  6. 地方FIREで見落としやすい「光熱費」と住宅性能
  7. 40代では平気でも、70代では生活圏コストが変わる
  8. 病院が「ある」と「通える」は違う
  9. 帰省・友人・東京へのアクセスも立派な生活費
  10. 地方に安い家を買えばFIREは完成?――「出口」も考えたい
  11. FIRE後に賃貸で地方移住する場合にも注意点がある
  12. 東京FIREにも「高いけれど削れる費用」がある
  13. FIREの必要資産は「都道府県」ではなく「自分の年間生活圏コスト」で計算する
  14. 「地方へ行けば半額」は危険。でも地方FIREの優位性まで否定する必要はない
  15. 「地方移住すればFIREできる」は、仕事を辞める前に一度試した方がいい
  16. 地方FIREの「お得度」を判断する7つの質問
  17. 生活圏コストを下げると「FIRE必要資産」まで変わる
  18. 40代独身FIREなら「老後まで徒歩圏」を少し意識しておきたい
  19. FIRE後の最適解は「東京」でも「田舎」でもなく、自分専用の生活圏
  20. まとめ|FIREに向いているのは「家賃が安い場所」ではなく「生活圏コストが低い場所」
  21. こちらの記事もあわせてどうぞ

「東京の物価は地方の2倍」と単純に考えると見誤る

まず面白い公的データがあります。総務省統計局の「小売物価統計調査(構造編)」による2024年の消費者物価地域差指数を見ると、総合的な物価水準が最も高かったのは東京都の104.0、最も低かったのは群馬県の96.2でした。

全国平均を100とした指数で、最高と最低の比率は1.08倍です。
つまり、一般的な消費者物価全体を見れば、東京都の商品やサービスが地方の2倍、3倍高いわけではありません。
スーパーで売っている同じ商品。全国展開しているチェーン店。ネット通販。スマートフォン料金。動画配信サービス。こうしたものは、東京だから2倍になるわけではありません。

一方、同じ統計では、東京都の物価水準を全国平均より押し上げる要因として「住居」の寄与が特に大きく、10大費目の比較でも住居の物価水準が最も高かった都道府県は東京都となっています。
ここがFIREでは重要です。総合物価の地域差はそれほど極端でなくても、家計に占める金額が大きく、毎月繰り返し発生する支出に地域差があれば、FIRE必要額には大きく効きます。

だから、「東京の物価は地方の何倍か」という問いより、「自分の年間生活費の中で、住む場所によって変化する支出はいくらあるか」を見る方が実用的です。

なお、この地域差指数は住宅購入価格そのものを直接比較する指標ではなく、「総合」、「住居」には持家の帰属家賃も含まれていません。
したがって、これだけで東京FIREと地方FIREの必要資産を比較することはできません。
あくまで「地域差はすべての価格へ均等に発生するわけではない」と理解するための材料です。
そして、この「均等ではない」という点こそ、今回の生活圏コストの出発点です。

地方移住で家賃が下がっても、コストは別の場所へ移る

地方FIREを考えるとき、最も目につきやすいのは「家賃」です。
東京で月12万円の部屋に住んでいる人が、地方へ移住して月7万円になれば、毎月5万円、年間60万円の削減です。
かなり大きい。でも、「年間60万円得した」で計算を終えるのは早いです。

地方では地域によって、自動車が生活必需品になることがあります。
車はガソリン代だけで動いているわけではありません。購入費、あるいは購入価格を使用年数で割った実質的な負担があります。そこに自動車税、任意保険、車検、点検・整備、タイヤ、消耗品、ガソリン、駐車場などが加わります。
軽自動車なのか大型車なのか、新車なのか中古なのか、年間走行距離はいくらなのかで金額は大きく変わるため、「地方なら車は年間○万円」と一律には言えません。

ただ、FIRE家計で大事なのは、家賃という固定費が減った一方で、「移動」という新しい固定費・準固定費が生まれていないかを見ることです。説明用に極端に単純化した例を考えてみます。

項目都市型生活の例地方・車中心生活の例
住居費月12万円月7万円
主な移動徒歩・鉄道中心自動車中心
自動車関連原則なし購入・保険・税・車検・燃料等が発生
買い物徒歩圏に複数店舗車移動が前提になる場合あり
通院公共交通で選択肢が多い場合あり距離・移動手段の影響を受ける場合あり
老後の移動公共交通を継続利用しやすい場合あり運転できなくなった後の代替手段が重要

これは平均値を示す表ではありません。言いたいのは、「家賃だけなら地方が圧勝しても、生活システム全体では差が縮む人もいる」ということです。

もちろん、家賃が大幅に下がり、軽自動車一台で生活でき、駐車場代もほぼかからない地域なら、地方移住の経済メリットは非常に大きいでしょう。
逆に、夫婦で二台必要、長距離移動が多い、冬用タイヤも必要となれば、話は変わります。

地方FIREが得かどうかは、「住宅費の差額 - 地方で増える費用」まで見て初めて分かります。

FIRE後の住む場所は「住宅」ではなく「生活圏」を買っている

ここで考え方を一つ変えます。家を借りる、あるいは買うとき、私たちは住宅そのものだけを買っているように見えます。
実際には、「その住宅を中心にした生活圏」も一緒に買っています。

駅まで何分か。スーパーまで何分か。病院までどう行くか。ドラッグストアはあるか。飲食店はあるか。趣味を楽しめる場所はあるか。空港や新幹線へのアクセスはどうか。車なしで生活できるか。年を取ってからも同じ生活を続けられるか。こうした条件が、家賃には見えない形で付いています。
東京の家賃が高いのは、単に部屋そのものが高いだけではありません。
ある場所では、「徒歩圏・公共交通圏の中に、生活に必要な機能が密集していることにお金を払っている」とも考えられます。

反対に地方の住宅が安い場合、「住居費を抑える代わりに、自分で移動能力を用意する」という構造になることがあります。その代表が自動車です。
つまり、都会では「立地」に払い、地方では「移動」に払う。
もちろんすべての地域に当てはまるわけではありませんが、FIREの住まい選びではかなり重要な視点です。
住宅だけ比べるのではなく、「住宅 + その住宅から生活を成立させるコスト」を比べる。これが生活圏コストです。

「地方FIRE=車が必要」と決めつけるのも違う

ここで逆側にも振れすぎないようにしたいと思います。
地方へ行けば必ず車が必要、というわけでもありません。
地方都市の駅周辺や中心市街地であれば、徒歩、自転車、バス、鉄道で生活できる地域もあります。

さらに、「東京都心か、人口数千人の田舎か」の二択でもありません。
FIRE後の住む場所としては、むしろその中間がかなり面白い。

例えば、住宅費は大都市中心部より抑えられる。徒歩圏にスーパーやドラッグストアがある。総合病院や複数の医療機関がある。駅まで徒歩や自転車で行ける。鉄道やバスがそれなりに使える。
車を持つとしても「なければ生きられない」ほど依存しなくていい。
新幹線や空港、大都市へのアクセスも極端に悪くない。
こうした「地方中核都市や大都市近郊のコンパクトな生活圏」は、FIREとの相性がかなり良い可能性があります。

住居費だけを最安値にするのではなく、住居費と生活インフラのバランスが良い場所を探す。
これは「田舎暮らし」ではありません。言ってしまえば、「生活圏のコスパが良い場所を探す」ということです。

FIREに必要なのは「最安の街」ではなく「固定費化しにくい街」

地方FIREで怖いのは、家賃が安い代わりに「別の支出が固定費化すること」です。
車がないと生活できないなら、自動車は嗜好品ではなく固定費に近くなります。冬に暖房が必須なら、光熱費も削りにくい。遠距離の病院へ定期的に通う必要が出れば、交通費も生活必需費になります。
逆に徒歩圏に生活機能がある地域なら、今日は電車。明日は徒歩。必要な日だけタクシー。ネットスーパーも使うと、手段を選べる。

FIREでは、この「選択肢の数」が意外と重要です。
給与収入がある会社員なら、少々固定費が増えても給料で吸収できます。
FIRE後は、資産取り崩しや運用収益の範囲で生活します。
だから「必ず毎月払うもの」が多いほど、相場下落時にも支出を調整しにくい。
そう考えると、FIRE向きの場所には、「支出を必要に応じて可変にできるという価値もあります。
これは家賃相場だけを眺めても見えてきません。

地方FIREで見落としやすい「光熱費」と住宅性能

地方移住では「広い家が安い」という魅力があります。
同じ家賃なら東京より広い。中古住宅ならかなり安く買える。FIRE生活として非常に魅力的です。
ただし、広さはそのまま維持費にもつながります。
冷暖房する空間が増える。古い住宅なら断熱性能に差がある。給湯設備が古ければ交換費用が必要になる。屋根や外壁、水回りの修繕もある。雪の多い地域なら除雪や冬用装備も考える。
総務省の2024年の地域差指数でも、10大費目のうち「光熱・水道」の物価水準が最も高かった都道府県は北海道となっており、地域によって支出構造が違うことが分かります。

もちろん、地方の住宅は必ず光熱費が高いという話ではありません。新しい高断熱住宅なら事情は変わりますし、温暖な地域もあります。

重要なのは、「家賃7万円という数字だけで住宅コストを見ない」ことです。
FIREで長期間住むなら、家賃または住宅取得費。固定資産税。管理費。修繕。冷暖房。将来の設備交換。
こうした「住宅を使い続ける費用」まで見る必要があります。
安く買える家と、安く住み続けられる家は同じではありません。

40代では平気でも、70代では生活圏コストが変わる

40代で地方FIREを考えると、「スーパーまで車で15分? 別に何の問題もない」と思います。
確かに今ならそうでしょう。病院まで20キロ。駅まで車。買い物も車。むしろ好きな時間に移動できて快適かもしれません。

でもFIREは長い。50代、60代、70代へ進みます。
そのとき、「今の移動方法をそのまま続けられるのか」は別問題です。

内閣府の2025年版高齢社会白書でも、65歳以上の外出手段は都市規模によって違い、大都市ではバス・路面電車、電車・地下鉄など公共交通の利用割合が高い一方、都市規模が小さくなるほど「自分で運転する自動車」の割合が高くなっています。
国も現在、「交通空白」を地域課題として扱い、買い物や医療を支える地域交通の維持・再設計を進めています。
つまりこれは個人の思い込みではなく、政策上も現実の課題になっているということです。

FIRE民が考えたいのは、「今、車を運転できるか」ではなく、「車がなくても将来その地域に住み続けられるか」です。
もし70代で運転をやめたら、スーパーへどう行くのか。病院へどう行くのか。銀行や役所へどう行くのか。駅へどう行くのか。タクシーや配車サービスを使えば、月いくらになるのか。宅配やネットスーパーは利用できるのか。家族に送迎してもらえるのか。
独身FIREなら、特に最後の選択肢を当然の前提にはしにくいでしょう。
つまり、40代の地方FIREでは、「現在の家賃だけでなく、老後の移動費まで含めて生活圏を選ぶ」必要があります。
これが30年、40年FIREする人と、数年だけ地方生活を楽しむ人の大きな違いです。

病院が「ある」と「通える」は違う

地方移住を調べると、「病院あり」、「総合病院まで○km」という情報が出てきます。
でもFIRE後、特に年齢が上がってから重要なのは、「病院が存在するかではなく、継続的に通えるか」です。

徒歩で行けるのか。公共交通があるのか。車が必要なのか。専門診療が必要になった場合、どの都市まで行くのか。通院が月1回なら問題なくても、週数回になったらどうか。
40代では医療アクセスの優先順位が低くても、70代では住む場所を決める重要条件になるかもしれません。

ここでも、東京だから正解、地方だから不正解という話ではありません。
都市部でも病院が遠い場所はありますし、地方でも医療機関が集中した便利な地域があります。
だから見るべきなのは都道府県名ではなく、「自宅を中心とした実際の生活圏」です。

FIRE後に住む場所をGoogleマップで見るなら、住宅だけをピン留めするのではなく、スーパー。病院。駅。ドラッグストア。役所。金融機関。趣味の施設。このあたりを一緒に見る。
そうすると、同じ家賃7万円でも価値が全然違って見えてきます。

帰省・友人・東京へのアクセスも立派な生活費

地方FIREの試算で忘れられやすいのが、「今いる人間関係との距離」です。
地方へ移った結果、親に会うため毎月新幹線に乗る。昔の友人と会うため東京へ戻る。通院だけは以前の病院を続ける。コンサートやイベントを見るため遠征する。海外旅行のたびに空港まで長距離移動する。

これらも、本人にとって必要な生活なら生活圏コストです。
地方の家賃が月5万円下がったとしても、毎月2万円、3万円と都市部への移動費が増えるなら、実質的な削減額は小さくなります。
逆に、地元へUターンして親や友人の近くへ住む。趣味が登山や釣りで、地方へ行くほど移動費が下がる。大都市へ出る必要がほとんどない。このような人なら地方移住のメリットは大きくなるでしょう。

要するに、「住居から離れた場所に、自分の人生の重要なものがどれくらい残っているか」を見る必要があります。
地方移住は、住宅だけを移すことではありません。
自分の人間関係、医療、趣味、移動パターンまで含めて生活圏を移す」ことです。

人間関係にも固定費がある|40代独身FIREが「友達は多いほどいい」を疑う / FIRE計画の羅針盤

人間関係にはお金だけでなく時間や移動も必要です。地方移住後も維持したい関係が多い人ほど、「家賃が下がったから得」だけでは計算しにくくなります。

地方に安い家を買えばFIREは完成?――「出口」も考えたい

地方FIREの魅力として、「安い中古住宅を現金で買えば、家賃ゼロ」という戦略があります。
これは条件が合えば強いです。毎月の家賃がなくなれば、FIRE後の固定費は大きく減ります。

ただ、購入価格だけで判断するのは危険です。家は金融資産と違って、売りたいときに必ず希望価格で売れるとは限りません。

将来、もっと便利な地域へ移りたい。医療アクセスの良い場所へ移りたい。高齢者向け住宅へ移りたい。親の近くへ移りたい。
このような事情が出たとき、家を売却できるか。貸せるか。売却に時間がかかるか。解体費用などが必要になるか。これは30年単位のFIREでは無視できません。

FIREでいう住居の価値は、「今安く住めること + 将来そこから動けること」まで含めて考えたいところです。
私はこれを、「住居の出口コスト」として生活圏コストに含めていいと思います。

東京の高い賃貸は毎月の負担が大きい。一方、地方の安い持ち家には流動性の低さがある場合がある。
どちらにもコストがあり、形が違うだけです。

FIRE後に賃貸で地方移住する場合にも注意点がある

それなら買わずに地方で賃貸すればいい」という考え方もあります。身軽さという意味ではかなり合理的です。
地方生活が合わなければ移る。年齢とともに病院近くへ移る。車を手放したら駅前へ移る。
賃貸には、この「生活圏を変更できるオプション」があります。

ただしFIRE後は会社員時代と比べ、賃貸審査で収入の見え方が変わる可能性があります。
十分な金融資産があっても、給与収入がなくなることで、希望物件によっては審査への対応が必要になることがあります。

FIREすると賃貸は借りられる?|無職でも審査を通す資産の見せ方と住宅戦略 / FIRE計画の羅針盤

FIRE後に住み替える可能性があるなら、「会社を辞めてから住む場所を考える」のではなく、会社員のうちから候補地と賃貸戦略まで見ておいた方が動きやすくなります。

大切なのは、「地方なら持ち家」・「東京なら賃貸」のように決めつけないことです。
どこに住むかと同じくらい、「どういう住み方なら将来の変更がしやすいか」も生活圏コストの一部です。

東京FIREにも「高いけれど削れる費用」がある

ここまで地方の見えないコストを挙げてきましたが、「じゃあ東京FIRE最強じゃん」という話でもありません。
東京の最大の弱点はやはり「住居費」です。住居費は毎月発生し、完全に削ることが難しい。
特に駅近、築浅、広さ、人気エリアなどの条件を求めるほど高くなります。

FIREでは、この固定費が必要資産を押し上げます。さらに都市部には、お金を使える場所が大量にあります。
飲食。買い物。イベント。娯楽。移動。住む場所によっては、周囲の生活水準に合わせて支出が上がることもあるでしょう。

ただし、東京に住んでいても、車はいらない。広い家もいらない。高級店にも興味がない。徒歩と電車で十分。無料・低価格の施設をよく利用する。このような人なら、東京の「高い選択肢」が大量にあっても、全部買う必要はありません。

FIREは「節約力」より「満足力」で決まる?|少ないお金でも幸せな人が強い理由 / FIRE計画の羅針盤

こちらでは「いくら削れるか」ではなく、「自分に何があれば十分なのか」を考えています。
今回の生活圏コストは、その人間側ではなく「場所側の問題」です。

つまり、「満足力 × 生活圏コスト」の組み合わせで、FIRE後の生活費が決まる。
地方に住んでも車、広い家、旅行、高額趣味が必要なら生活費は上がる。
東京に住んでも小さな部屋と徒歩生活で十分なら、意外に抑えられる。
住む場所だけではFIRE必要額は決まりません。

FIREの必要資産は「都道府県」ではなく「自分の年間生活圏コスト」で計算する

FIRE必要資産を考えるとき、「東京だから1億円」、「地方だから5,000万円」というような地域名だけで決めるのはかなり粗いと思います。
見るべきなのは、「その地域で自分が実際に年間いくら使うのか」です。
生活圏コストを簡単に整理すると、こうなります。

生活圏コスト確認するもの
住居コスト家賃、住宅取得費、固定資産税、管理費、修繕費
移動コスト車の購入・維持、公共交通、タクシー、自転車など
光熱コスト冷暖房、給湯、住宅性能、地域の気候
買い物コスト食料品価格だけでなく、店舗への移動・宅配等
医療アクセスコスト通院距離、交通手段、専門医療へのアクセス
交際・帰省コスト家族・友人との往来、都市部への移動
趣味・余暇コストその地域から趣味を続けるための移動等
将来の移動コスト運転をやめた後の交通・宅配・住み替え
住み替えコスト売却しやすさ、賃貸選択肢、引っ越し費用など

この合計を出してから、「東京より地方が安いか」を判断する。この順番です。

家賃だけを先に比べると、最も目立つ数字に引っ張られます。
でもFIREで重要なのは、「一番安い費目を探すことではなく、年間支出の総額を持続可能にすること」です。

FIREは年収より貯蓄率で決まる?|収入と支出の差を広げる40代独身の現実戦略 / FIRE計画の羅針盤

FIREまでの距離を決めるのは、最終的には収入と支出の差です。
住む場所の変更も、家賃だけでなく年間支出全体へどれだけ効くかで考える必要があります。

「地方へ行けば半額」は危険。でも地方FIREの優位性まで否定する必要はない

ここまで読むと、「結局、地方移住しても安くならないってこと?」と思うかもしれません。
そうではありません。条件が合えば、地方FIREは非常に強いです。

住宅費が大幅に安い。コンパクトな生活圏で車一台、あるいは車なしで暮らせる。医療や買い物も徒歩圏。親や友人も近い。趣味もその地域で完結する。住宅性能も良い。
こういう条件なら、東京から地方へ移ることで生活圏コストを大きく下げられる可能性があります。

むしろ言いたいのは逆で、「地方FIREの本当の強さを知るためにも、家賃以外まで計算した方がいい」ということです。
家賃が8万円下がった。車や光熱費などが3万円増えた。それでも毎月5万円安い。だったら、それはかなり強い地方FIREです。
一方、家賃5万円減。車4万円増。都市への移動1万円増。それなら、生活費面の優位性はほぼなくなります。
それでも自然や広い住居が好きなら移住する価値はあります。

つまり地方移住は、「安いから行く」だけではなく、「安さも含めて、自分にとって良い生活だから行く」方が失敗しにくい。FIREのためだけに好きでもない土地へ移る必要はありません。

「地方移住すればFIREできる」は、仕事を辞める前に一度試した方がいい

地方FIREで一番避けたいのは、会社を辞める。家を売る。地方へ家を買う。住んでみたら合わない。こういう順番です。
FIREは自由になるための計画なのに、自分から住む場所を固定して逃げ道をなくしたら少しもったいない。
可能なら、候補地へ実際に何度か滞在してみる。観光シーズンだけでなく、普通の日に行く。スーパーへ行く。病院まで歩く。駅まで行く。車なしで一日動いてみる。可能なら夏と冬も見る。夜の街も見る。ネット回線も確認する。
そして、「ここで旅行ではなく生活できるか」を見る。

旅行で素晴らしい場所と、30年間暮らしやすい場所は同じとは限りません。
また、地方移住というと人口の少ない地域ほど「地方らしい」と思いがちですが、FIRE目的ならそこへこだわる必要はありません。
県庁所在地。地方中核都市。大都市近郊。私鉄やJR沿線の郊外。こうした場所も全部選択肢です。

FIREは田舎暮らしコンテストではありません。「自分の生活圏コストが下がればいい」、それだけです。

地方FIREの「お得度」を判断する7つの質問

地方移住を考えるなら、物件サイトで家賃を見る前か、少なくとも同時に次のようなことを確認してみるといいと思います。

確認項目自分への質問
住居家賃以外に、修繕・管理・冷暖房まで入れて本当に安いか
車が「あると便利」なのか「ないと生活不能」なのか
買い物10年後、20年後も無理なく日用品を買えるか
医療車を運転できなくなっても通院できるか
人間関係会いたい人への交通費が大幅に増えないか
趣味自分がやりたいことをその地域で続けられるか
出口合わなくなったら別の場所へ移れるか

この7つへ答えて、それでも地方の方が低コストなら、かなり有力です。
逆に家賃だけ圧倒的に安く、他の項目で全部困るなら、少し考え直した方がいい。
FIREでは、「安く住むことより、安定して住み続けること」の方が長期的には大切だからです。

生活圏コストを下げると「FIRE必要資産」まで変わる

生活圏コストを考える最大の意味は、単なる引っ越し節約ではありません。FIRE必要資産そのものに影響します。

例えば、住む場所を変えることで無理なく年間生活費が60万円下がったとします。
これは毎年60万円浮くというだけではありません。FIRE後に必要な年間取り崩し額そのものが60万円減ります。
よく知られている4%ルールを単なる比較用の「年間支出×25」という粗い目安として使えば、年間60万円の差は、「1,500万円」の必要資産差に相当します。

もちろん、これはあくまで単純化した比較です。4%ルールには前提がありますし、日本の税金、社会保険、年金、インフレ、資産配分、FIRE開始年齢などによって実際の必要資産は変わります。

FIREの4%ルールは安全なのか?|40代独身が知るべき取り崩しの現実 / FIRE計画の羅針盤

それでも、「毎月5万円の持続可能な生活費差が、FIRE必要資産へかなり大きく効く」ことは分かります。
だからこそ、地方移住で本当に月5万円下がるのかを正確に見たい。
家賃5万円下がる、ではありません。生活圏コストが5万円下がる。この違いが重要です。

▶ 住む場所や固定費を見直して生まれた余剰資金を、FIREに向けた資産形成へ回すなら、楽天証券で新NISAや投資信託を確認する


40代独身FIREなら「老後まで徒歩圏」を少し意識しておきたい

今回いろいろ考えてきましたが、40代独身FIREの住む場所として、私なら一つかなり重視したい条件があります。
それが、「年を取っても徒歩圏+公共交通でかなり生活できること」です。

40代では車を運転できます。大きな荷物も持てます。駅まで20分歩けます。
でも80歳でも同じとは限りません。独身の場合、配偶者に運転してもらうことも前提にはできません。
だから、スーパー。ドラッグストア。病院。駅またはバス停。日常的な飲食店。このあたりがある程度まとまっている場所には、数字に出にくい価値があります。
家賃が月1万円、2万円高くても、将来車を持たずに済む、タクシー利用を減らせる、住み替えを回避できるという可能性があります。

つまり、「便利な立地へ払う家賃の一部は、将来の移動費を前払いしている」とも考えられます。
逆に、住宅費だけは非常に安いけれど車が永続的に必須という場所では、「家賃を節約する代わりに移動能力を自分で買い続ける」ことになります。

どちらが正しいわけではありません。大切なのは、この交換関係を理解した上で選ぶことです。

FIRE後の最適解は「東京」でも「田舎」でもなく、自分専用の生活圏

結局、FIRE後にどこへ住むのが正解なのでしょうか。
東京。地方。田舎。実家。海外。答えは一つではありません。
むしろ「どの都道府県が一番安いか」という問い自体が、少し違うのだと思います。
FIRE後に必要なのは、「自分の生活に必要な機能が、無理なく低いコストでまとまっている生活圏」です。

車が好きなら車前提の郊外でもいい。電車と徒歩が好きなら都市型生活でもいい。自然が大好きなら田舎へ行けばいい。旅行が好きなら空港アクセスを優先してもいい。病院への安心を重視するなら医療機関の多い街を選ぶ。
重要なのは、「他人が安いと言っている場所ではなく、自分の生活が安くなる場所」を選ぶことです。

FIREにおける住まいは、単なる家計簿の「住居費」ではありません。
人生の時間。移動。健康。人間関係。趣味。老後。それらすべてが交差する場所です。
だからこそ、「家賃が安いから地方」だけで決めるには、少し大きすぎる選択なのだと思います。

まとめ|FIREに向いているのは「家賃が安い場所」ではなく「生活圏コストが低い場所」

地方FIREには大きな魅力があります。特に住宅費は、地域によってかなり違います。
住居費を無理なく下げることができれば、毎年の生活費が減り、FIREに必要な金融資産も少なくできます。

一方で、「家賃が安い = 生活費が同じだけ安くなる」とは限りません。
車が必要になる。光熱費が変わる。買い物や病院への移動費が増える。都市部に残った親や友人へ会う交通費がかかる。持ち家なら維持・修繕が必要になる。そして年を取れば、現在使えている車をいつまでも使えるとは限りません。

だから地方FIREのお得度を測るなら、家賃ではなく「生活圏コスト」を見る。
住居。移動。光熱。買い物。医療。人間関係。趣味。老後の交通。住み替え。
これらを合わせて、自分が望む生活を年間いくらで維持できるのかを考える。

東京の方が高くなる人もいるでしょう。地方へ移るだけで大幅に下がる人もいるでしょう。
そして多くの人にとっては、「大都市中心部でも、車必須の田舎でもない、生活機能がまとまった中間地点」がかなり有力な選択肢になるかもしれません。

FIREの住まい選びは、最安の家を探すことではありません。
自分に必要な暮らしを、最も低い総コストで、年を取っても続けられる場所を探すこと」です。

東京だから高い」、「地方だから安い」、その一言で決めず、「自分にとっての生活圏を一つのポートフォリオとして見る」、そう考えると、FIRE後どこに住むかは、かなり違って見えてきます。
そして地方移住で本当に生活圏コストが下がるなら、そのとき初めて「地方FIREは、お得です」と自信を持って言えます。

こちらの記事もあわせてどうぞ

FIREは「節約力」より「満足力」で決まる?|少ないお金でも幸せな人が強い理由 / FIRE計画の羅針盤
・今回の記事が「どの場所なら生活コストを抑えられるか」という立地側の話なら、こちらは「自分はいくらあれば満足できるか」という人間側の話です。FIRE生活費を考えるなら二つをセットで考えると分かりやすくなります。

FIREは年収より貯蓄率で決まる?|収入と支出の差を広げる40代独身の現実戦略 / FIRE計画の羅針盤
・生活圏コストを下げることがFIREまでの期間へどう効くのか。収入と支出の差からFIREを考えたい人はこちらへ。

FIREすると賃貸は借りられる?|無職でも審査を通す資産の見せ方と住宅戦略 / FIRE計画の羅針盤
・地方FIREを含め、FIRE後に住み替える予定がある人が考えておきたい賃貸審査と住居戦略を整理しています。

こどおじFIREは最強なのか?|実家暮らし・家賃ゼロ・親の介護で変わる40代独身の現実ライン / FIRE計画の羅針盤
・住居費を劇的に下げられる「実家」という選択肢も、家賃だけでは判断できません。今回の生活圏コストとかなり近い考え方で整理できます。

FIREの4%ルールは安全なのか?|40代独身が知るべき取り崩しの現実 / FIRE計画の羅針盤
・生活圏コストからFIRE後の年間生活費が見えてきたら、次はその生活費を金融資産でどう支えるかを考える段階です。

※本記事における「生活圏コスト」は、FIRE後の住む場所を住居費だけでなく、移動、光熱、買い物、医療アクセス、交際、帰省、住宅維持、将来の住み替え等を含めて考えるため、本記事で便宜的に用いている表現です。経済学・不動産・行政上の正式な用語ではありません。
※地域ごとの家賃、住宅価格、交通事情、光熱費、医療環境、税・社会保険、公共サービス等は自治体、物件、世帯構成、生活スタイル等によって大きく異なります。本記事は特定地域への移住や不動産の購入・売却を推奨するものではありません。実際に移住を検討する際は、自治体、交通事業者、医療機関、不動産会社等の最新情報をご確認ください。
※本記事で示した生活費等の例は考え方を説明するためのものであり、特定地域の平均的な生活費や将来の費用を示すものではありません。
※本記事は、FIREや早期リタイア、退職、転職、地方移住を推奨・保証するものではありません。働き方や居住地の判断は、収入、金融資産、健康状態、家族関係、仕事、生活環境、医療アクセス、将来の介護等によって大きく異なります。
※投資には元本割れのリスクがあります。FIREに必要な資産額や取り崩し可能額は、運用成績、税制、社会保険、インフレ、年金、支出等により変動します。新NISA、投資信託、株式、債券等を利用する場合は、制度内容とリスクを確認したうえでご自身の判断で行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました