FIREを目指していると、毎日のようにお金のことを考えます。
新NISAにいくら入れるか。オルカンかS&P500か。高配当株を持つか。現金比率をどうするか。生活防衛資金はいくら必要か。FIRE資産は3,000万円で足りるのか。5,000万円なら安心なのか。4%ルールは日本でも使えるのか。
こうした問いは、どれも大事です。FIREは、きれいごとだけでは成立しません。
生活費が必要です。税金もかかります。国民健康保険もあります。住民税もあります。医療費も、家電の買い替えも、親の介護も、老後の住まいもあります。
だから、資産を増やすことは大事です。これは間違いありません。
ただ、ある程度FIREについて考え続けていると、ふと別の不安が出てきます。
- お金を貯めれば、本当に自由になるのか?
- 資産が増えても、結局使えなかったら意味がないのではないか?
- お金を減らすのが怖くて、FIRE後もずっと不安なままなのではないか?
- 自由になりたくて貯めているはずなのに、お金に支配されていないか?
これは、FIREを目指す人ほど刺さる問いだと思います。
お金がないから不安。これは分かりやすいです。
でも、お金が増えても不安が消えない。これは少し厄介です。
FIRE資産が増えるほど、今度は「減らしたくない」という気持ちが強くなる。
新NISAの評価額が増えるほど、売るのが怖くなる。高配当株を持っても、元本を減らしたくない。現金を持てば安心するけれど、インフレで目減りする気もする。
つまり、お金は自由をくれるはずなのに、同時に不安も増やすのです。
ここで思い出したいのが、「ミヒャエル・エンデ」です。
ミヒャエル・エンデといえば、『モモ』や『はてしない物語』の作家として知られています。
ただ、晩年のエンデは、お金や経済のあり方にも強い関心を持っていました。
1999年にNHKで放送されたドキュメンタリー『エンデの遺言』は、エンデが日本人向けに残したテープをもとに制作された番組として知られています。
エンデが考えていたのは、単なる節約術でも、投資テクニックでもありません。
- お金とは何か
- なぜお金は貯め込まれるのか
- なぜ利子が利子を生み、増え続けるお金が人間の生活を支配してしまうのか
- お金は本来、交換や生活のための道具だったはずなのに、いつの間にかそれ自体が目的になっていないか
こうした根源的な問いです。
『エンデの遺言』では、「老化するお金」、「減価する通貨」、「地域通貨」など、現代のお金の常識を問い直す考え方が紹介されています。
この記事では、ミヒャエル・エンデの経済思想を、FIRE目線で読み替えてみます。
もちろん、エンデの思想をそのまま投資戦略にするわけではありません。
「老化するお金が正しい」、「資産運用は間違い」、「FIREは貯め込みだから悪い」、そんな話ではありません。むしろ逆です。
FIREを目指すからこそ、お金を単なる数字としてではなく、
人生に戻す道具として考える必要があるのではないか
これが今回のテーマです。
この記事では、「ミヒャエル・エンデの経済思想」、「老化するお金」、「地域通貨」という考え方を手がかりに、FIREを目指す人がなぜお金を使えなくなるのか、FIRE資産をどう人生に戻していくかを整理します。
- 結論|FIREはお金を貯め込む競技ではなく、お金を人生に戻すための設計です
- ミヒャエル・エンデが問いかけた「お金そのものへの違和感」
- FIREは「お金を貯める思想」と相性が良すぎる
- “使えないお金”は資産なのか
- 「取り崩しが怖い」は、お金を命綱にしすぎているサインかもしれない
- FIRE資産にも「老化するお金」の発想を少しだけ入れてみる
- 独身40代は、なぜお金を使えなくなりやすいのか
- 「資産が増えるほど不安も増える」矛盾
- エンデ視点で考えるFIRE後のお金の使い道
- 「死ぬまで減らさない資産」ではなく「人生を止めない資産」を目指す
- お金を循環させるFIRE家計の作り方
- ミヒャエル・エンデをFIREに持ち込む時の注意点
- まとめ|お金は貯めるほど自由になるとは限らない。使える形にして初めて自由になる
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結論|FIREはお金を貯め込む競技ではなく、お金を人生に戻すための設計です
最初に結論から言います。FIREは、お金を貯め込む競技ではありません。
「FIREは、お金を人生に戻すための設計」です。ここを間違えると、かなり苦しくなります。
資産額を増やす。入金力を高める。支出を削る。新NISAを満額に近づける。高配当株を集める。インデックス投資を続ける。これらは大事ですが、あくまで手段です。
本来の目的は、会社に縛られすぎないこと。自分の時間を取り戻すこと。体力やメンタルを守ること。人生の後半を、少しでも自分の意思で選ぶことです。
ところが、FIREを目指していると、いつの間にか目的がすり替わります。
「いくら貯めたか」、「何%増えたか」、「まだ取り崩さずに済むか」、「資産を減らさずに生きられるか」、ここばかりに目が行く。
すると、お金は自由の道具ではなく、「不安の中心」になります。
| FIREの本来の目的 | すり替わりやすい目的 |
|---|---|
| 時間を取り戻すこと | 資産額を減らさないこと |
| 働き方を選べること | 入金力を維持すること |
| 生活を整えること | 節約を続けること |
| 心身を守ること | 評価額を増やすこと |
| 自分らしい人生を作ること | お金を使わずに守り続けること |
ミヒャエル・エンデの経済思想は、このすり替わりに気づかせてくれます。
「お金は、本来は流れるもの」です。生活のために使われ、人と人をつなぎ、時間や体験や安心に変わるものです。
それが、貯め込まれ、増殖し、目的化すると、人間の方がお金に合わせて生きるようになります。
FIREを目指す40代独身にとって、この問いはかなり重いです。
なぜなら、頼れるものが少ないからこそ、お金を握りしめたくなるからです。
でも、握りしめすぎると、自由になれません。お金は守るだけではなく、使って初めて人生に戻ります。
ミヒャエル・エンデが問いかけた「お金そのものへの違和感」
エンデの経済思想を、専門的に論じるのが目的ではありませんので、FIREの視点から、ざっくり整理します。
ミヒャエル・エンデが関心を持っていたのは、お金の仕組みそのものです。
パンは古くなります。服は傷みます。家電は壊れます。車も古くなります。人間も歳を取ります。
でも、お金は違います。銀行口座の数字として残ります。金融資産として運用されます。利子や配当や値上がりによって、増えることもあります。
つまり、お金だけが、時間とともに劣化しないどころか、「自己増殖する性質」を持ちます。
エンデが関心を持った「老化するお金」や「スタンプ通貨」は、この点に対する問いかけです。
シルビオ・ゲゼルの自由貨幣の考え方や、オーストリアのヴェルグルで行われた地域通貨の実践などが、エンデの思想の文脈で語られることがあります。地域通貨は、利子を生まず、貯め込まれず、地域内を循環するお金として紹介されてきました。
ここで大事なのは、FIRE民がいきなり地域通貨を始めることではありません。
そうではなく、「お金は、貯め込むためにあるのか」、それとも、「お金は、使われ、流れ、生活を支えるためにあるのか」、この問いかけが重要です。
| 通常のお金のイメージ | エンデ的な問いかけ |
|---|---|
| 貯めるほど安心 | 貯め込まれたお金は生活から離れていないか |
| 増えるほど良い | 増えること自体が目的になっていないか |
| 使うと減る | 使うことで時間・健康・人間関係に変わるのではないか |
| 資産は守るもの | 守り続けるだけで人生に戻っているのか |
| お金は中立の道具 | お金の仕組み自体が人間の行動を変えていないか |
この問いをFIREに持ち込むと、かなり見え方が変わります。
- FIRE資産は、貯め込むほど自由になるのか、それとも、貯め込むほど失うのが怖くなるのか
- FIRE後にお金を使えないのは、単なるケチなのか、それとも、お金を命綱にしすぎているからなのか
このあたりは、FIRE民にとって重要なテーマです。
FIREは「お金を貯める思想」と相性が良すぎる
FIREは、お金を貯める思想と相性が良すぎます。これは良い面でもあり、危うい面でもあります。
FIREを目指すには、支出を抑える必要があります。
入金力を高める必要があります。投資を続ける必要があります。
生活費を把握する必要があります。無駄な浪費を減らす必要があります。
これは本当に大事です。ただ、これを長く続けていると、お金を使うこと自体に罪悪感が出てきます。
- 外食すると、FIREが遠のく気がする
- 旅行すると、複利を捨てた気がする
- 家電を買うと、積立額が減る気がする
- 服を買うと、無駄遣いした気がする
- 有休を使って少し良いホテルに泊まるだけで、「このお金をNISAに入れたら」と考えてしまう
こうなると、FIREは自由への道ではなく、節約の檻になります。
| FIREに必要な習慣 | 行きすぎると起きること |
|---|---|
| 支出を見直す | 何を買っても罪悪感が出る |
| 投資を続ける | 現金を使うことが怖くなる |
| 生活費を下げる | 生活の楽しみまで削りすぎる |
| 資産を増やす | 資産額だけが自分の価値に見える |
| 退職後に備える | 今の人生を後回しにしすぎる |
もちろん、浪費をすすめているわけではありません。節約は大事です。
FIREを目指すなら、支出管理は避けられません。
でも、問題は「使わないことが目的化すること」です。
エンデの視点を借りるなら、「お金は本来、流れてこそ意味を持つもの」です。
食事に変わる。休息に変わる。健康に変わる。経験に変わる。人との時間に変わる。学びに変わる。安心に変わる。
お金を全部止めてしまうと、人生の流れまで止まります。
FIREは、お金を止めるための計画ではありません。お金を、自分の人生に戻すための計画です。
“使えないお金”は資産なのか
FIREを目指していると、資産額が増えることはうれしいです。
証券口座の評価額が増える。新NISAの含み益が増える。高配当株から配当が入る。現金残高が積み上がる。
これは安心材料です。でも、ここで不思議なことが起きます。「増えたお金を使えない」のです。
- 使うと減るから怖い
- 取り崩すとFIRE失敗に近づく気がする
- 相場が悪い時に売るのは怖い
- 一度使うと歯止めが利かなくなる気がする
- 老後に何があるか分からないから、まだ使えない
こうして、お金はあるのに使えない状態になります。これは、FIRE民にとってかなり重要な問題です。
| お金の状態 | 自由への影響 |
|---|---|
| 生活費として使える現金 | 安心を生みやすい |
| 目的を決めた投資資産 | 将来の選択肢を増やす |
| 絶対に減らせない資産 | 心理的には使えないお金になりやすい |
| 評価額だけを眺める資産 | 数字は増えても生活に戻りにくい |
| 使う基準がない資産 | 取り崩し不安を強めやすい |
もちろん、使えないお金にも意味はあります。
老後の安心。病気への備え。暴落時の防御。親の介護。住まいの不安。
こうしたものに備えるために、使わないお金は必要です。
ただ、すべてのお金が「使えないお金」になると、FIREの意味が薄れます。
なぜなら、FIRE後もずっと「減らさないために生きる」ことになるからです。
仕事を辞めても、今度は資産額に縛られる。
会社から自由になったのに、証券口座の評価額から自由になれない。これはかなり皮肉です。
エンデの経済思想が刺さるのは、ここです。
お金が貯め込まれ、自己目的化すると、人間の生活から離れていく
FIRE資産も同じです。使う基準がないまま増えたお金は、自由ではなく不安の中心になることがあります。
「取り崩しが怖い」は、お金を命綱にしすぎているサインかもしれない
FIREで一番怖いのは、資産形成期よりも「取り崩し期」です。
積み立てている間は、分かりやすいです。毎月入金する。評価額を見る。下がったら買い増す。上がったら喜ぶ。
続けていれば、何となく前に進んでいる感じがあります。
でも、FIRE後は逆です。積み上げた資産を取り崩す。評価額が減る。現金が減る。新NISAや特定口座を売る。配当だけでは足りない分を補う。これは心理的にかなりきついです。
「お金を減らすために働いてきたわけではない」と感じるからです。
| 資産形成期 | 取り崩し期 |
|---|---|
| 入金すると安心する | 売却すると不安になる |
| 評価額が増えると達成感がある | 評価額が減ると失敗感がある |
| 節約が成果に見える | 支出が罪悪感に見える |
| 働いて補填できる | 収入が少ないと補填しにくい |
| 未来のために我慢できる | 今使うことに迷いが出る |
取り崩しが怖いのは、自然です。誰でも怖いと思います。
特に独身40代は、家族というセーフティネットが薄くなりがちです。
病気になったらどうするか。認知症になったらどうするか。家を借りられなくなったらどうするか。親の介護が来たらどうするか。老後に孤独になったらどうするか。こうした不安があるから、お金を命綱のように握りしめます。
でも、命綱にしすぎると、今度はその命綱を少しも緩められなくなります。
お金は守りです。でも、守りだけでは人生は進みません。
エンデの視点で見るなら、お金は循環してこそ意味があります。
FIRE資産も、ただ持っているだけでは自由になりません。
使う場所を決める。使う額を決める。使っていい目的を決める。減ってもよい範囲を決める。
こうして初めて、お金は不安の塊から、人生の道具に戻ります。
FIRE資産にも「老化するお金」の発想を少しだけ入れてみる
ここで、エンデの「老化するお金」の発想を、FIREに直接導入する必要はありません。
自分の預金にスタンプを貼って、毎月価値を減らす必要もありません。
そんなことを始めたら、たぶん家計簿どころではありません。
独身おじさん、ついに自宅で独自通貨を発行し始めたか、という話になります。
そうではなく、考え方だけを借ります。
お金にも役割と期限を持たせる
FIRE資産を全部「減らしてはいけないお金」にしてしまうから、使えなくなります。
そうではなく、あらかじめ役割を分けます。
| お金の種類 | 役割 | エンデ的に見ると |
|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 病気・失業・災害に備える | 止めておく意味があるお金 |
| 長期投資資金 | 将来の生活を支える | 時間を味方につけるお金 |
| 取り崩し用資金 | FIRE後の生活費に使う | 人生に戻すためのお金 |
| 経験・健康資金 | 旅行、運動、医療、学びに使う | 使うことで価値が生まれるお金 |
| 余白資金 | 予定外の楽しみや安心に使う | 生活を固くしすぎないためのお金 |
この中で、特に大事なのは「取り崩し用資金」と「経験・健康資金」です。
FIRE資産のすべてを老後のために封印すると、今の人生が細ります。
逆に、すべてを使ってしまえば老後が不安になります。だから、分けるのです。
守るお金・増やすお金・使うお金・人生に戻すお金
この分類があると、「使うこと」が悪ではなくなります。
お金の一部は、使うためにある。これを最初から決めておくのです。
独身40代は、なぜお金を使えなくなりやすいのか
独身40代は、お金を使えなくなりやすいと思います。理由はかなり現実的です。
まず、「頼れる人が少ない」。配偶者がいない。子どもがいない。親も高齢になっていく。兄弟姉妹がいても、完全に頼れるとは限らない。
この状態で、自分の体調、老後、住まい、介護、入院、保証人、死後事務まで考えると、お金を持っておきたくなります。これは自然です。
さらに、「FIREを目指す人は、もともと不安感が強い」ことも多いです。
将来が不安だから資産形成をする。会社員生活に違和感があるからFIREを考える。年金や税金に不安があるから投資をする。
つまり、お金を貯める原動力が、不安であることも多いのです。
| 独身40代がお金を使いにくい理由 | 背景 |
|---|---|
| 老後をひとりで背負う不安 | 家族のセーフティネットが薄く感じやすい |
| 病気や入院への不安 | 保証人・付き添い・生活維持の問題がある |
| 会社を辞めた後の信用不安 | 賃貸、ローン、クレカなどが気になる |
| 親の介護不安 | 時間とお金を削られる可能性がある |
| FIRE失敗への恐怖 | 再就職できるか分からない不安がある |
| 節約習慣の固定化 | 使うことに罪悪感を持ちやすい |
だから、独身40代が「お金を使えない」のは、単なるケチではなく、「将来不安への防衛反応」です。
ただし、防衛反応が強すぎると、人生そのものが小さくなります。
何も買わない。どこにも行かない。人と会わない。健康にもお金を使わない。経験にも使わない。
ただ証券口座の数字だけを眺める。これでは、FIREしても自由にはなりにくいです。
エンデの思想を借りれば、「お金は人間の生活を助けるためのもの」です。
そのお金に生活を縮められているなら、どこかで向き合う必要があります。
「資産が増えるほど不安も増える」矛盾
資産が増えれば不安は減る。普通はそう考えます。
実際、資産が少ない時期は、資産が増えるほど安心します。
貯金100万円より300万円。300万円より1,000万円。1,000万円より3,000万円。これは間違いありません。
ただ、あるラインを超えると、不安の質が変わります。
- お金がない不安から、お金を失う不安へ
- 増やせない不安から、減らしたくない不安へ
- 働き続ける不安から、辞めた後に取り崩す不安へ
つまり、資産が増えるほど、守るものも増えます。
| 資産が少ない時の不安 | 資産が増えた後の不安 |
|---|---|
| 生活費が足りない | 資産を減らしたくない |
| 投資に回せない | 投資資産を売れない |
| 会社を辞められない | 辞めた後に減るのが怖い |
| 老後が不安 | 何歳まで持つか不安 |
| 入金力が足りない | 取り崩しルールが決められない |
これは、FIREの難しさです。
お金は不安を減らします。でも、お金が増えると別の不安も生まれます。
ミヒャエル・エンデが問いかけた「お金が自己目的化する怖さ」は、FIREにも当てはまります。
- 資産額が増えること自体が目的になる
- 評価額を減らさないことが人生の中心になる
- 支出を減らすことが快感になる
- 使うことが敗北に見える
こうなると、FIREは自由ではなくなります。
お金の支配から逃げたつもりが、別の形でお金に支配される。これは避けたいところです。
エンデ視点で考えるFIRE後のお金の使い道
では、FIRE後にお金をどう使えばいいのでしょうか。
ここで「好きに使いましょう」と言っても、たぶん使えません。FIREを目指す人は、そんなに単純ではありません。
だから、使い道にもルールを作るといいと思います。
エンデ視点で考えるなら、「お金は循環することで意味を持ちます」。
自分の生活に戻る。健康に戻る。時間に戻る。人との関係に戻る。地域や社会に戻る。
このように考えると、使っていいお金が見えやすくなります。
| 使い道 | FIRE目線での意味 |
|---|---|
| 健康診断・歯科・運動 | 将来の医療費と生活の質を守る投資になる |
| 家電・寝具・住環境 | 毎日の回復力を上げる |
| 旅行・日帰り外出 | 時間の自由を実感できる |
| 本・学び・趣味 | FIRE後の空白を埋める材料になる |
| 人と会うためのお金 | 孤独を防ぐ支出になる |
| 実家や親のサポート | 家族関係と将来の負担を整える場合がある |
| 地域の店で使うお金 | 生活圏とのつながりを作る |
お金を使うことは、資産を減らすことです。
でも同時に、「生活を増やすこと」でもあります。ここを見落としがちです。
1万円使うと、資産は1万円減ります。でも、その1万円で睡眠が良くなる。腰痛が減る。友人と会える。親と食事できる。新しい経験ができる。健康が守られる。
そう考えると、そのお金は単なる減少ではありません。「人生に戻ったお金」です。
FIRE後に必要なのは、こういう支出の基準です。
「死ぬまで減らさない資産」ではなく「人生を止めない資産」を目指す
FIREを目指すと、どうしても「資産を減らさない」ことに意識が行きます。
配当だけで暮らしたい。取り崩しなしで生きたい。元本を減らしたくない。死ぬまで資産を守りたい。
この気持ちは分かります。私もたぶん、かなりそうなります。
資産が減っていく画面を平然と見られるほど、人間ができていません。
独身おじさんの心は、そんなに鋼ではないのです。
でも、資産を絶対に減らさないことを目標にすると、FIREのハードルはかなり上がります。そして、使えないお金が増えます。
むしろ目指すべきは、「死ぬまで減らさない資産」ではなく、「人生を止めない資産」ではないでしょうか。
| 減らさない資産を目指すFIRE | 人生を止めない資産を目指すFIRE |
|---|---|
| 元本維持が最優先 | 生活の質と安全を両立する |
| 使うことに罪悪感がある | 使う目的を決めている |
| 資産額が自分の安心のすべて | 健康・時間・人間関係も資産と考える |
| 取り崩しが怖くて動けない | 取り崩しルールを決めて動ける |
| 老後の不安に備えすぎる | 今の人生も少しずつ守る |
もちろん、老後資金を軽視してはいけません。
FIREは長期戦です。医療費、介護、物価高、税金、住まい。これらへの備えは必要です。
でも、今の人生をすべて犠牲にして、将来の不安だけに備え続けるのも違います。
ミヒャエル・エンデの問いを借りるなら、お金は人間の時間を奪うものではなく、「人間の時間を取り戻すために使われるべき」です。
FIRE資産も同じです。「人生を止めないためにある」、この視点を持つだけで、少し楽になります。
お金を循環させるFIRE家計の作り方
では、実際にどうすれば「お金を人生に戻すFIRE」に近づけるのでしょうか。
私は、家計の中にあらかじめ「循環枠」を作るのがいいと思います。
循環枠とは、使っていいお金です。ただの浪費枠ではありません。
「人生の質を上げるために、意図して使う枠」です。
| 枠 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 守る枠 | 生活防衛資金、医療費、税金、住まい | 不安を減らす |
| 増やす枠 | 新NISA、特定口座、iDeCo、投資信託 | 将来の選択肢を増やす |
| 使う枠 | 食事、家電、旅行、趣味、交際費 | 今の生活を支える |
| 整える枠 | 健康診断、歯科、運動、寝具、掃除用品 | 心身の土台を守る |
| つながる枠 | 家族、友人、地域、学び、体験 | 孤独を防ぐ |
FIREを目指す人は、「守る枠」と「増やす枠」は得意です。
でも、「使う枠」、「整える枠」、「つながる枠」が弱くなりがちです。
ここを意識して作ると、お金が止まりにくくなります。
- 月1万円でもいい、健康と体験のために使う
- 月5,000円でもいい、人と会うために使う
- 年10万円でもいい、旅行や学びや住環境の改善に使う
このお金は、FIRE失敗ではありません。むしろ、FIREを続けるための燃料です。
お金を全部守りに回すと、生活が乾きます。少しだけ循環させる。ここが大事です。
ミヒャエル・エンデをFIREに持ち込む時の注意点
ここまで、エンデの経済思想をFIREの視点で考えてきました。ただし、注意点もあります。
エンデの思想を、そのまま現代の個人資産運用に当てはめる必要はありません。
「老化するお金が正しいから、投資は悪い」、「利子や配当は全部おかしい」、「インデックス投資は貯め込みだから間違い」、こういう話ではありません。
FIREを目指す個人にとって、投資はかなり現実的な手段です。
新NISAも、インデックス投資も、高配当株も、現金管理も、大事な道具です。
問題は「道具が目的化すること」です。
| 避けたい読み方 | FIREに活かしやすい読み方 |
|---|---|
| 投資は悪いと考える | 投資を人生の道具として使う |
| お金を持つことを否定する | お金を持ちすぎても使えない問題を考える |
| 老化するお金を制度として導入しようとする | お金にも役割と期限を持たせる発想を借りる |
| 資本主義批判だけで終わる | 自分の生活費・取り崩し・支出に落とし込む |
| 思想として消費する | 家計のルールとして活かす |
エンデの経済思想は、FIREの答えではありません。でも、問いとしてはかなり使えます。
- お金は何のためにあるのか
- 自由を得るために貯めているのか
- 不安を増やすために貯めているのか
- 使わない資産は、人生に戻っているのか
この問いを持つだけで、FIRE計画は少し変わります。
まとめ|お金は貯めるほど自由になるとは限らない。使える形にして初めて自由になる
FIREを目指すなら、お金は必要です。これは大前提です。きれいごとでは生活できません。
資産がなければ、会社を辞める自由も、働き方を選ぶ余裕も、老後の安心も作りにくいです。
だから、貯めることは大事です。増やすことも大事です。守ることも大事です。
でも、お金は貯めるほど自動的に自由をくれるわけではありません。
貯めたお金を使えなければ、自由にはなりません
資産額が増えても、減らすのが怖ければ、心は縛られたままです。
- FIREしたのに、毎日証券口座の評価額に怯える
- 働かない自由を得たのに、お金を使う自由がない
- 会社から解放されたのに、今度は資産額に支配される
これは避けたいところです。
ミヒャエル・エンデの経済思想は、そんなFIRE民に一つの問いを投げかけてくれます。
お金は貯め込むためだけのものなのか
それとも、使われ、流れ、生活に戻ってこそ意味があるものなのか
もちろん、私たちは現代の資本主義社会で生きています。
投資もするし、NISAも使うし、預金も持つし、老後資金も必要です。
だから、エンデの思想をそのまま生活に持ち込む必要はありません。
でも、FIRE資産の一部には、「人生に戻す」という発想を入れていいと思います。
「守るお金・増やすお金・使うお金・整えるお金・つながるお金」、これらを分ける。
そして、使うお金をあらかじめ許す。それだけで、お金は少し不安の塊から離れます。
FIREは、お金を貯め込む競技ではありません。お金を人生に戻すための設計です。
独身40代だからこそ、守りは必要です。
でも、守りすぎて人生を止めてしまっては、何のためのFIREか分からなくなります。
お金は、使えば減ります。でも、使わなければ人生に戻りません。
だからこそ、FIREを目指す私たちは、「増やす力だけでなく、使う力も少しずつ育てていく」必要があるのだと思います。
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