FIREを目指して資産形成を続けていると、いつの間にか頭の中に一つの数字が住み着きます。
5,000万円
人によっては3,000万円かもしれませんし、7,000万円、あるいは1億円かもしれませんが、その数字をゴールとして毎月積み立てを続けます。
資産4,000万円なら「あと1,000万円」、4,500万円になれば「あと500万円」、4,900万円になれば「いよいよ会社を辞められる」と考える。FIRE準備ではごく自然な発想です。
しかし、ここには少し厄介な問題があります。
FIREに必要な資産額は、地面に固定されたゴールテープではありません。
自分の資産が4,000万円から5,000万円へ増えている間にも、生活費や物価は変わります。
税金や社会保険制度、住宅費、金利、将来受け取れる公的年金の見込みも変化します。
FIRE後に完全無収入で暮らすのか、それとも月に数万円程度は働くのかという人生設計によっても、必要な資産額は大きく違ってきます。
さらに、自分が安全だと思える取り崩し率まで変われば、同じ年間生活費でも必要資産は数百万円、場合によっては数千万円単位で動きます。
つまりFIREとは、単純に自分だけがゴールへ向かって走るレースではありません。
自分が走っている間に、ゴールラインの方も少しずつ動いている。なんとも嫌なレースです。
ただし、だからといって「物価も上がっているし、税金も将来どうなるか分からない。もうFIREなんて無理だ」と悲観する必要はありません。
むしろ重要なのは、「今はFIREしやすい時代か、難しい時代か」という世間全体の話ではなく、自分のFIRE必要資産が何によって動くのかを理解しておくことです。
5,000万円という数字を10年前に決めたからといって、その数字を一生守る必要はありません。
逆に、ニュースが出るたびに6,000万円、7,000万円、8,000万円と目標額を増やし続ける必要もありません。
そこでこの記事では、その時点の生活費や制度、収入などから見たFIRE必要資産を、便宜上、「FIREライン」と呼ぶことにします。
そして、「5,000万円貯まったか」ではなく、今の自分はFIREラインに対してどこにいるのか。この考え方から、40代FIREの必要資産をもう一度整理してみます。
- 「5000万円あればFIREできる?」という質問には、実は続きがある
- FIRE必要資産を「FIREライン」として考えてみる
- 月1万円の支出増でも、FIREラインは意外なほど動く
- インフレは「資産を減らす」のではなく「ゴールラインを遠ざける」
- 税金のニュースが出るたびに「FIRE終了」と考えなくていい
- 社会保険料も「将来負担が増えるかもしれない」と「現在の負担」を分ける
- 金利上昇はFIRE民にとって全面的な悪材料とは限らない
- 「FIREが難しくなったか」ではなく、自分の家計へ主語を戻す
- FIREラインを動かす9つの変数
- 「5000万円でFIREできる人」と「1億円でも不安な人」は何が違うのか
- 月3万円の収入があるだけでも、FIREラインは意外と変わる
- 45歳FIREなら、公的年金を最初から丸ごと差し引かない
- FIRE必要資産は「一点」ではなく「レンジ」で持つ
- 「FIRE達成率」より便利なFIRE余裕率
- ただしFIREラインを毎月更新すると、永遠に会社を辞められない
- 「将来増税されるかもしれない」はストレスケースへ入れる
- FIREライン到達と「会社を辞めていい」は同じではない
- FIRE直前ほど「資産額」より「FIREラインとの差」を見る
- 40代FIREでは、お金以外の「余白」もかなり重要になる
- FIREラインを超えても、暴落すれば翌月には下回る
- FIREラインを下げるために人生まで削る必要はない
- 逆に「もっと安全に」を続けると、ゴールは永遠に来ない
- FIREラインを「目標金額」から「意思決定ツール」へ変える
- FIREラインは年1回更新するくらいでいい
- FIRE必要資産が増えても、それは「失敗」ではない
- 「FIRE購買力」と「FIRE余裕率」をセットで見る
- FIRE直前には「いくらあるか」ではなく、一度ゴールラインを作り直す
- FIREは「○○万円を貯めるゲーム」から卒業する
- まとめ
- こちらの記事もあわせてどうぞ
「5000万円あればFIREできる?」という質問には、実は続きがある
「5,000万円あればFIREできるのか?」、FIREを考え始めた人なら、一度は検索するテーマだと思います。
しかし、この質問は本当は途中で文章が切れています。
正確に書くなら、「5,000万円あれば、年間いくら使う人が、何歳から、どの程度の運用リスクを取り、どの程度の税金や社会保険料を負担し、何歳から年金を受け取り、その他の収入をどれくらい見込んでFIREできるのか?」、ここまで書いて、ようやく質問として完成します。
同じ5,000万円でも、年間生活費180万円の人と360万円の人では全く違います。
45歳からFIREする人と60歳から退職する人でも違いますし、住宅ローンを完済している人と家賃を毎月15万円払う人でも、必要資産は当然変わります。
さらに、オルカンやS&P500など株式中心で運用するのか、現金や債券を厚めに持つのか、FIRE後にも月5万円ほど働くのか、完全に労働収入をゼロにするのかでも違ってきます。
したがって、「『FIREには○○万円必要』という金額は、それ自体が答えなのではなく、複数の前提条件を一つの数字へ圧縮した結果」と考えた方が分かりやすいと思います。
これはFIRE必要資産を考えるうえで、意外と重要な違いです。
FIRE必要資産を「FIREライン」として考えてみる
本記事では、その時点の条件から計算したFIRE必要資産を「FIREライン」と呼びます。
考え方をかなり単純化すると、次のようになります。
概算FIREライン =(年間生活支出+税・社会保険等-安定的な年間収入)÷想定取り崩し率+別枠資金
例えば年間の生活支出が240万円で、FIRE後の税金や社会保険料などを含めて年間60万円を別途見込むとします。
定期的な収入はなく、年間300万円を金融資産から賄う必要があるケースです。
これを便宜上4%で単純換算すると、「300万円 ÷ 4% = 7,500万円」となります。
ところが、より慎重に3.5%で考えるなら約8,571万円、3%なら1億円です。
生活費は全く変わっていないのに、採用する取り崩し率という前提を変えただけで、FIRE必要資産は7,500万円から1億円まで動きます。
もちろん、これは考え方を説明するための単純計算であり、「4%なら安全」、「3%なら絶対安全」という意味ではありません。
取り崩し率の妥当性は、運用期間や資産配分、相場環境、支出の柔軟性などによって変わります。
▶ FIREの4%ルールは安全なのか?|40代独身が知るべき取り崩しの現実 / FIRE計画の羅針盤
4%ルールそのものについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
今回の記事では、FIREラインがどう動くのかを分かりやすく比較するための物差しとして4%や3.5%を使います。
月1万円の支出増でも、FIREラインは意外なほど動く
FIRE必要資産が「固定額ではない」と実感しやすいのが、毎月の生活費です。
例えば、家賃や管理費、食費、保険料、通信費などを合わせて、恒常的な支出が月1万円増えたとします。年間では12万円です。
これを4%で単純換算すると、「12万円 ÷ 4% = 300万円」になります。
つまり、「毎月1万円の恒常的な支出増は、4%単純換算ならFIREラインを約300万円押し上げる」ことになります。
| 毎月の恒常的な支出変化 | 年間の変化 | 4%単純換算でのFIREライン変化 | 3.5%単純換算での変化 |
|---|---|---|---|
| +5,000円 | +6万円 | +150万円 | 約+171万円 |
| +1万円 | +12万円 | +300万円 | 約+343万円 |
| +2万円 | +24万円 | +600万円 | 約+686万円 |
| +3万円 | +36万円 | +900万円 | 約+1,029万円 |
| +5万円 | +60万円 | +1,500万円 | 約+1,714万円 |
こうして見ると、FIREにおける月1万円の重さが少し変わって見えます。
「資産をあと300万円増やしてください」と言われれば大変ですが、「毎月の生活費が1万円変わる」ということなら、人生では普通に起こります。
FIREを目指していると、証券口座の100万円、200万円の変動にはものすごく敏感なのに、生活費側の月1万円を軽く見てしまうことがあります。
しかし、FIRE必要資産という観点では、どちらも同じゴールラインを動かしています。
だからFIREが近づいてきたら、「今年いくら運用益が出たか」と一緒に、「直近1年間の実際の生活費はいくらだったか」も確認した方がいいと思います。
インフレは「資産を減らす」のではなく「ゴールラインを遠ざける」
インフレがFIRE民にとって厄介なのは、証券口座の数字を直接減らすとは限らないことです。
例えば、金融資産5,000万円を持っていたとします。翌年も5,000万円なら、見た目上は「資産は減っていない」と感じます。
ところが年間生活費が240万円から270万円へ上昇したらどうでしょう。
4%で単純換算すると、年間240万円なら必要資産6,000万円ですが、270万円なら6,750万円になります。
「金融資産は1円も減っていないのに、FIREラインは750万円遠ざかった」、こういうことが起こります。
| 年間必要額 | 4%単純換算 | 3.5%単純換算 |
|---|---|---|
| 240万円 | 6,000万円 | 約6,857万円 |
| 250万円 | 6,250万円 | 約7,143万円 |
| 270万円 | 6,750万円 | 約7,714万円 |
| 300万円 | 7,500万円 | 約8,571万円 |
| 330万円 | 8,250万円 | 約9,429万円 |
このため、「5,000万円まであと300万円」という資産側の距離だけを見ていると、FIRE計画を見誤る場合があります。
資産額と一緒に生活費を更新して初めて、本当にゴールへ近づいているのかが分かります。
▶ 円安で資産が増えてもFIREできない?|「円換算マジック」に注意 / FIRE計画の羅針盤
円安で海外資産の円換算額が増えても、その資産で買える生活まで同じように増えたとは限りません。
税金のニュースが出るたびに「FIRE終了」と考えなくていい
FIREを目指す人が不安になりやすいテーマの一つが、「金融所得課税」です。
「金融所得への課税強化」、「金融所得にも負担増」といったニュースを見ると、株式や投資信託を取り崩して暮らすFIRE民には致命傷なのではないか、と感じる人もいるでしょう。
ただし、制度変更については見出しだけで判断せず、「その制度が自分に適用されるのか、いつからなのか、どの所得を対象としているのか」まで確認してからFIREラインへ反映した方がいいと思います。
NISAのように一定の投資利益を非課税とする制度もありますし、金融所得に関係する税制改正の中には、非常に高い所得層を対象とした負担調整のように、一般的なFIRE層へそのまま同じ形で当てはまるとは限らないものもあります。
重要なのは、ニュースを見て「増税されるらしい。FIRE必要資産を1,000万円増やそう」と反応することではありません。
「自分への影響が具体化した段階で、FIREラインへ反映する」、これで十分です。
税制が将来永遠に変わらない保証はありません。しかし、まだ決まっていない将来の増税を全部先回りして必要資産へ積み上げ始めると、FIREラインは永遠に逃げ続けます。
それでは資産計画というより、「恐怖の複利運用」になってしまいます。
社会保険料も「将来負担が増えるかもしれない」と「現在の負担」を分ける
「社会保険制度」についても同じです。
FIREでは会社を辞めることで、会社員時代とは税金や社会保険の負担構造が変わります。
退職後に国民健康保険や国民年金などの負担が発生する場合もあり、これらはFIRE必要資産を考えるうえで当然無視できません。
一方で、金融所得を社会保険料算定へどのように反映するのかといった制度変更の議論については、対象制度や年齢、適用時期などを区別して考える必要があります。
現在実際に発生する負担と、「将来こうなるかもしれない」という話は分けた方がいいです。
現在確認できる制度は基本FIREラインへ入れ、不確定な将来変更は後述する「ストレスケース」として扱う。この方が現実的です。
金利上昇はFIRE民にとって全面的な悪材料とは限らない
金利についても、「上がればFIREが難しくなる」と単純化しない方がいいと思います。
変動金利型の住宅ローンを多く抱えている人なら、金利上昇は支出増につながる可能性があり、FIREラインを押し上げる方向に働きます。
しかし、無借金で現金や債券を多く保有している人なら話は違います。
預金金利や新しく購入する債券等の利回りが以前より高くなれば、安全資産側から得られる収益が改善する可能性があります。
| FIRE民の状態 | 金利上昇で考えられる主な影響 |
|---|---|
| 変動金利ローンが大きい | 利払い・返済負担が増える可能性 |
| 無借金・現金多め | 預金等の利息改善が期待できる場合がある |
| 既発債券を保有 | 市場金利上昇時には価格下落要因となり得る |
| これから債券を購入 | 以前より高い利回りで購入できる可能性がある |
| 固定金利で借入済み | 変動金利借入とは影響が異なる |
つまり、「金利上昇 = FIRE難易度20%アップ」のような共通メーターはありません。
住宅ローン3,000万円を持つ人と、借金ゼロで現金1,000万円を持つ人では、同じ金利上昇でも影響の方向すら違う可能性があります。
だから見るべきなのは、「世の中のFIRE難易度ではなく、自分のFIREラインがどう動いたか」です。
「FIREが難しくなったか」ではなく、自分の家計へ主語を戻す
FIREに関する記事では、「FIREはもう難しい」、「インフレでFIRE崩壊」、「FIREブーム終了」のように、大きな主語が使われることがあります。
読み物としては分かりやすいのですが、実際の退職判断にはあまり役立ちません。
同じ5,000万円の金融資産を持つ45歳でも、持ち家で住宅ローンを完済し年間200万円で暮らす人と、家賃月15万円で年間350万円を使う人では全く違います。
さらに、完全無収入になる人もいれば、好きな仕事を月数日だけ続ける人もいる。将来の年金額も違い、親や住宅など大型支出の可能性も違います。
だから、「今はFIREしやすい時代か?」よりも、「去年の自分と比べて、今の自分のFIREラインはどう変わったか?」を考えた方が実務的です。
ニュースの主語を「FIRE民」から「自分の家計」へ戻す。これだけでも、不必要に不安になりにくくなります。
FIREラインを動かす9つの変数
FIRE必要資産を毎回ゼロから作り直す必要はありません。
大きな変数を押さえておけば、自分のFIREラインがどちらへ動いたのかはかなり把握できます。
| 変数 | FIREラインを押し上げやすい変化 | 押し下げやすい変化 |
|---|---|---|
| ①生活費 | 物価上昇・生活水準上昇 | 恒常支出の削減 |
| ②税金 | 実効負担の増加 | 利用可能な非課税制度等 |
| ③社会保険 | 保険料負担の増加 | 実質的な負担低下 |
| ④住宅費 | 家賃上昇・ローン負担増 | 完済・住居費低下 |
| ⑤金利 | 借入コスト増 | 預金・新規債券等の収益改善 |
| ⑥取り崩し前提 | より低い取り崩し率を採用 | 支出柔軟性等から余裕を持てる |
| ⑦公的年金 | 受給開始まで長い・見込み低下 | 将来の安定収入 |
| ⑧その他収入 | 完全無収入 | 小さな継続収入 |
| ⑨大型支出 | 住宅・車・介護等の発生 | 別枠で準備済み |
ここで一つ注意したいのは、すべてを「年間生活費」へ無理やり押し込まないことです。
毎月かかる食費や家賃と、10年に一度発生する住宅修繕300万円では性格が違います。
車の買い替えや引っ越し、家具・家電、親関連の支出なども同じです。
こうした支出は年間生活費へ平均化する方法もありますが、FIRE計画では、「通常生活を支えるFIREライン」と、「大型支出用の別枠資金」に分けた方が分かりやすい場合があります。
「生活費250万円 × 25 = 6,250万円。以上」という計算では見えないお金を、別に残しておくわけです。
「5000万円でFIREできる人」と「1億円でも不安な人」は何が違うのか
FIRE必要資産について考えるとき、資産額そのものに注目しすぎると本質を見失うことがあります。
例えば、次の二人を比較してみます。
| 条件 | Aさん | Bさん |
|---|---|---|
| 金融資産 | 5,000万円 | 1億円 |
| 年間必要額 | 180万円 | 600万円 |
| 年間必要額÷資産 | 3.6% | 6.0% |
| 住宅費 | 低い | 高い |
| FIRE後収入 | 少額あり | なし |
| 支出の柔軟性 | 高い | 低い |
資産額だけなら、BさんはAさんの2倍です。しかし、金融資産に毎年どれだけの生活を背負わせるのかを見ると、話は変わります。
Aさんは5,000万円から年間180万円。Bさんは1億円から年間600万円です。
つまりFIREでは、「いくら持っているか」だけでなく、「その資産へ年間いくらの生活を要求するのか」まで見ないと、本当の余裕は分かりません。
このため、5,000万円は少ない、1億円なら安全、と絶対額だけで判断することはできません。
月3万円の収入があるだけでも、FIREラインは意外と変わる
支出とは逆方向にFIREラインを動かすのが、「FIRE後の収入」です。
完全FIREにこだわれば、労働収入はゼロになりますが、好きな仕事や小さな副業などから月3万円、年間36万円の継続的な収入がある場合を考えてみます。
単純に4%換算すると、「36万円 ÷ 4% = 900万円」です。
つまり年間36万円の安定的な収入がある場合、他の条件が同じなら、金融資産に求める役割が4%単純換算で約900万円分軽くなります。
| 継続収入の目安 | 年間収入 | 4%単純換算で軽くなるFIREライン | 3.5%単純換算 |
|---|---|---|---|
| 月1万円 | 12万円 | 300万円 | 約343万円 |
| 月3万円 | 36万円 | 900万円 | 約1,029万円 |
| 月5万円 | 60万円 | 1,500万円 | 約1,714万円 |
| 月10万円 | 120万円 | 3,000万円 | 約3,429万円 |
もちろん、「月5万円稼げば必要資産が1,500万円少なくなるから、今日会社を辞めよう」という意味ではありません。仕事の継続性も分かりませんし、収入には税金等も関係します。
それでも、この表から一つ重要なことが分かります。
「FIREラインを下げる方法は、投資で資産を増やすことだけではない」ということです。
月数万円の収入でも、長期間続くなら影響は大きいです。
FIREを「会社員から無収入へ100対0で切り替えるイベント」と考えると必要資産は大きくなります。
しかし、「会社員は辞めるが、興味のある仕事なら少しやってもいい」と考えられる人なら、FIREラインは変わります。
嫌な労働に生活を依存しないことと、今後一切お金を稼がないことは別です。
ここはFIRE必要資産を考えるうえで、意外と大きな分岐点になります。
45歳FIREなら、公的年金を最初から丸ごと差し引かない
40代FIREで必要資産を考えるとき、もう一つ雑に扱いたくないのが「公的年金」です。
例えば45歳でFIREし、将来65歳から年金を受給する想定だとします。
65歳以降には年金があるとしても、45歳から65歳までには20年間あります。
この期間には原則としてその年金収入はありません。
ところが、「年間生活費300万円。将来の年金120万円。差額180万円だから180万円×25=4,500万円」のように、FIRE開始時から年金を丸ごと差し引いてしまうと、45歳から64歳までの20年間が消えてしまいます。
40代FIREでは、「FIRE開始から年金受給開始までの期間」と「年金受給開始後」を分けて考えた方が分かりやすいです。
前半では金融資産に生活費の大部分を任せる必要がありますが、後半になれば公的年金というキャッシュフローが加わります。
つまり、FIRE必要資産は一生を一本の「年間生活費 × 25」で塗りつぶすより、「人生のフェーズごとに金融資産へ求める仕事を分けて考えた方が現実に近い」です。
特に40代独身でFIREを考える場合、年金受給開始までの長い空白期間はかなり重要になります。
FIRE必要資産は「一点」ではなく「レンジ」で持つ
FIRE必要資産を、「6,843万2,517円」のような一点で持たない。それよりも、「FIREレンジ」として考えます。
例えば、現在の生活や制度を前提とした基本ケースなら6,800万円。支出が少し下がり、多少の収入が続いた場合なら6,000万円。
逆に生活費や負担が増え、より慎重な取り崩し前提を置いた場合は7,800万円、といった具合です。
| ケース | 考え方 | 概算FIREラインの例 |
|---|---|---|
| 比較的楽観的 | 支出低め・一定の継続収入あり | 6,000万円 |
| 基本ケース | 現在の生活費・確認できる制度を中心 | 6,800万円 |
| ストレスケース | 生活費上昇・収入減・慎重な前提 | 7,800万円 |
数字はあくまで説明用です。大切なのは、未来のFIRE必要資産に「唯一正しい一点」が存在するわけではないと最初から認めておくことです。
将来の株価、インフレ率、税金、医療費、寿命、生活スタイルを40代の時点で正確に予測することはできません。
それなのに、「必要資産は6,843万2,517円」と1円単位まで計算しても、精密なのは電卓だけです。
前提条件には普通に誤差があります。それなら、「普通にいけば6,800万円程度。かなり節約できるなら6,000万円台でも成立しそう。厳しい条件なら7,800万円くらい欲しい」と幅を持って考えた方が、FIREの不確実性を正直に扱えます。
「FIRE達成率」より便利なFIRE余裕率
FIREレンジと合わせて使いやすいのが、本記事で便宜的に「FIRE余裕率」と呼ぶ考え方です。計算式は単純です。
FIRE余裕率 = 現在の金融資産 ÷ 現在の基本FIREライン
例えば、金融資産5,000万円で基本FIREラインが6,000万円なら、余裕率は約83%です。
資産6,000万円なら100%、6,600万円なら110%になります。
| 金融資産 | 基本FIREライン | FIRE余裕率 | 見方の例 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 6,000万円 | 約83% | まだ差がある |
| 5,800万円 | 6,000万円 | 約97% | かなり近い |
| 6,000万円 | 6,000万円 | 100% | 計算上ライン到達 |
| 6,600万円 | 6,000万円 | 110% | 10%の余裕 |
| 7,200万円 | 6,000万円 | 120% | 20%の余裕 |
この指標の面白いところは、資産額と必要資産を同時に見られることです。
例えば1年間で金融資産が5,500万円から6,000万円へ増えたとします。
500万円も増えたので、一見するとFIREへかなり近づいたように見えます。
しかしその間に物価や生活費が上昇し、FIREラインも5,800万円から6,400万円へ上がっていたらどうでしょう。
前年のFIRE余裕率は約95%、今年は約94%です。資産は500万円も増えたのに、FIREへの相対的な距離はほとんど縮まっていない。
反対もあります。株式市場が停滞して資産がほとんど増えなかったとしても、住宅ローンを完済した、固定費が減った、FIRE後にも続けられそうな小さな収入ができた、
こうした変化でFIREラインが下がれば、退職へ近づくことがあります。
FIREを資産運用だけのゲームにしない。そのための物差しとして、FIRE余裕率は結構使いやすいと思います。
ただしFIREラインを毎月更新すると、永遠に会社を辞められない
ここまで読むと、「じゃあ毎月最新の物価や税制や金利を入れてFIREラインを再計算しないといけないのか」と思うかもしれません。私はそこまではやらなくていいと思います。
FIREラインが動くことを理解する目的は、ゴールを毎日動かすことではありません。
むしろ、「どんな変化が起きたときだけゴールを更新するか」を決めるためです。
年に1回程度の定期点検でも十分ですし、退職予定日の1年前、住宅費が大きく変わったとき、自分に影響する制度改正が正式に決まったとき、実際の年間生活費が明らかに変わったときなどに再計算すればいい。
反対に、毎日の株価やSNSで流れてきた増税観測、「来年は金利が○%になるかもしれない」といった予測まで全部入れていたら、FIRE計画がニュース速報に乗っ取られます。
FIRE必要資産は動きます。でも、「いつ動かすかは自分で決める」。これくらいがちょうどいいと思います。
「将来増税されるかもしれない」はストレスケースへ入れる
将来には当然、不確実な要素があります。これを完全に無視するのも危ない。
しかし、全部を基本ケースへ入れると、必要資産はいくらあっても足りません。
そこで先ほどの「FIREレンジ」が役に立ちます。
基本ケースには、現在の生活費、現在確認できる税制・社会保険制度、現実的な年金見込み、自分が採用する取り崩し前提など、「今確認できる条件」を使います。
そのうえでストレスケースでは、例えば生活費が10%上がる、税や社会保険の年間負担が増える、予定していた副収入がなくなる、株価が大きく下落する、大型支出が発生する、といった自分が怖い条件を加えます。
ここでやりたいのは未来予測ではありません。その条件になった場合、支出を少し減らせば済むのか、FIRE時期を半年ずらす必要があるのか、現金から生活費を出して回復を待てるのか、月数万円だけ働けば埋められるのか、そこを確認することです。
FIREは、「未来を正確に当てるゲームではなく、未来を外しても修正できる状態を作るゲーム」と考えた方が実用的です。
▶ FIRE直前は株式比率を下げるべき?|「年齢とともに守りに入る」の定説を疑う / FIRE計画の羅針盤
FIREラインが見えてきた後には、退職直後の暴落へどう備えながら、その後数十年間の成長力を残すかという問題が出てきます。
FIREライン到達と「会社を辞めていい」は同じではない
例えば、金融資産7,000万円、基本FIREライン6,800万円。計算上はFIREラインを上回りました。
では翌日に退職届を出せばいいのかというと、人生はそこまで機械的ではありません。
FIREラインはあくまで、「経済面でどの程度余裕があるかを確認するための物差し」です。
実際に会社を辞めるかどうかには、健康、仕事への満足度、住居、親、再就職可能性、FIRE後にやりたいこと、そして会社に残り続ける精神的コストなど、数字だけでは表せない要素があります。
反対にFIRE余裕率が95%でも、会社へあと数年間残ることの精神的負担が非常に大きく、月数万円の収入や多少の支出調整で不足分を十分埋められるなら、本人にとって退職が合理的な場合もあるでしょう。
つまりFIREラインは、「ここを超えたら辞めなさい」という命令ではなく、退職という大きな意思決定をするときの材料の一つです。
FIRE直前ほど「資産額」より「FIREラインとの差」を見る
資産形成の初期段階なら、500万円、1,000万円、2,000万円と純粋な金融資産を積み上げるだけでも十分です。
しかしFIREが近づいたら、資産額だけを見る段階から少し卒業した方がいいと思います。
例えば現在資産6,500万円、基本FIREライン6,200万円、ストレスFIREライン7,200万円だったとします。
この場合、「FIRE達成!」とも言えますし、「まだ700万円不足!」とも言えます。
しかし本人が、相場が悪ければ旅行費を減らせる、月3万円程度なら働いても構わない、現金余力もあるという人なら、ストレスラインまで現金で積み上げなくても対応できる可能性があります。
逆に、一度FIREしたら働く予定はなく、固定費も下げられず、大型支出も控えているなら、もっと余裕が欲しいかもしれません。
つまりFIREラインとの差額は、自分にどれだけ「修正可能性」が残っているかとセットで見る必要があります。
40代FIREでは、お金以外の「余白」もかなり重要になる
45歳でFIREして90歳まで生きれば、退職後の期間は45年になります。
その間、株式市場の暴落は何度か起こるでしょうし、物価、税制、社会保険制度、自分の健康、住居なども変わるでしょう。これを45歳時点ですべて予測することはできません。
だから40代FIREで重要なのは、「完璧な予測より余白」だと思います。
そして余白は必ずしも「現金をあと1,000万円持つこと」だけではありません。
資産額に余裕があることも余白ですし、支出を一時的に下げられることも余白です。
住居費を変更できる、月数万円なら働ける、退職時期を半年延ばせる、大型支出用の資金を別に準備しているといった選択肢もすべて余白です。
つまり、「FIREにおける安全余裕は、金融資産額だけでは測れません」。
ここが「5,000万円あればFIREできますか?」への答えを難しくしている部分でもあります。
FIREラインを超えても、暴落すれば翌月には下回る
例えばFIREライン6,000万円に対して、金融資産6,300万円で退職したとします。
その直後に株式市場が大きく下落し、金融資産が5,200万円になった。十分あり得る話です。
だから、「FIREライン到達 = 今後一生ラインを割らない」という意味ではありません。
株式を持ちながらFIREする以上、金融資産額は日々上下します。
重要なのは、一時的にラインを下回ったときに、すぐ生活が破綻するのかどうかです。
現金から生活費を出して回復を待てる。支出を一時的に減らせる。将来年金が始まる。少額の収入を得られる。
こうした選択肢があれば、資産額が一時的にFIREラインを割ったからといって、直ちにFIRE失敗とは限りません。
FIREラインを下げるために人生まで削る必要はない
年間生活費を下げればFIREラインも下がる。数学的にはその通りです。
では食費を削り、旅行をやめ、趣味をやめ、交際費も削り、冷暖房まで我慢して年間150万円生活を実現すれば理想的なFIREなのかというと、私はそうは思いません。
FIREは、会社から最速で逃げるための最低生活費競争ではありません。
会社を辞めた後に、自分が送りたい生活を実現するための資産計画です。
必要資産を減らすために、FIRE後にやりたかったことまで全部消してしまったら、本末転倒です。
削るなら、幸福度をほとんど落とさない固定費から考える方がいいでしょう。
惰性で払っているサービスや過剰な固定費は減らしても、旅行や趣味など自分が本当に使いたいものは残す。
FIREラインへ入れる生活費も、「最低限死なずに済む生活費」ではなく、「数十年間続けても嫌にならない生活費」を基準にする。その方がFIRE後の後悔は少ないと思います。
逆に「もっと安全に」を続けると、ゴールは永遠に来ない
5,000万円では不安だから6,000万円。6,000万円になったらインフレが怖いから7,000万円。7,000万円になったら医療費が心配だから8,000万円。8,000万円になったら税制変更が怖いから1億円。1億円になったら、100歳まで生きたらどうしよう……。
これを続ければ、どれだけ資産が増えても会社を辞められません。不確実性をゼロにしようとしているからです。
しかし、人生の不確実性は会社員でもゼロにはなりません。
会社が倒産するかもしれないし、給料が下がることもある。病気も物価上昇もあります。
FIREだけが危険な人生ではありません。だから決めるべきなのは、「100%安全なFIRE資産ではなく、自分が受け入れられる安全余裕」です。
FIREラインを一点ではなくレンジで持ち、FIRE余裕率も見る意味はここにあります。
不確実性を認めたうえで、「この程度の余裕があれば自分は決断する」という線を、自分で引くためです。
FIREラインを「目標金額」から「意思決定ツール」へ変える
ここまで来ると、FIREラインは単なる貯金目標ではなくなります。
例えば年に一度、現在の金融資産、直近12か月の実生活費、FIRE後に想定される税・社会保険、住宅費、年金見込み、安定収入、大型支出、取り崩し前提を更新します。
そこで、現在資産は基本FIREラインを上回っているのか、ストレスFIREラインまでどれくらい離れているのか、不足しているなら、その差を投資で埋めるのか、生活費で埋めるのか、小さな収入で埋めるのかを考えます。
こう考えれば、FIRE必要資産は、「この金額まで耐えて働け」という数字ではなく、「いつ会社員生活から降りるのかを考えるための判断材料」になります。
FIREラインは年1回更新するくらいでいい
例えば年末や誕生日など、毎年一度だけFIRE計画表を更新するのもいいと思います。
去年の年間生活費は240万円だった。今年は255万円だった。金融資産は600万円増えた。住宅費は変わらない。将来の年金見込みも大きくは変わらない。
一方で、副業などから年間20万円程度の継続収入が見込めるようになった。
こうした変化を入れると、「資産が600万円増えた!」だけでは見えなかったことが分かります。
生活費増でFIREラインは上昇した。しかし継続収入によってFIREラインは少し下がった。その結果、去年よりどの程度ゴールへ近づいたのか。そこまで見られるようになります。
株価は自分では決められません。しかし生活費や働き方、住宅、FIRE時期などには、自分で選べる部分があります。
「FIREラインを見ると、市場任せではないFIRE計画が見えてくる」、これはかなり大きなメリットです。
FIRE必要資産が増えても、それは「失敗」ではない
去年まで必要資産6,000万円だったのに、生活費が上がって今年は6,500万円になった。
500万円もゴールが遠ざかったと思えば、気分は良くありません。
しかし、これはFIRE計画が失敗したわけではありません。
「現実が変わったので、計画表を現実へ合わせただけ」です。
むしろ危ないのは、物価や生活費が変わっているのに、10年前に決めた「5,000万円」という数字だけを守り続けることです。
昔作った旅行予算で今のホテル代を払おうとするようなものです。
目標額を修正することは敗北ではありません。計画が正常に機能している証拠です。
そしてFIREラインは上がるだけでもありません。住宅ローンを完済する。固定費を減らす。月数万円なら好きな仕事を続けてもいいと思えるようになる。将来の年金見込みが具体化する。
こうした変化によって、FIREラインが下がる場合もあります。
ゴールテープは動きます。でも、必ず自分から逃げる方向へ動くわけではないです。
「FIRE購買力」と「FIRE余裕率」をセットで見る
証券口座には6,000万円、7,000万円という数字が表示されます。しかしFIREで本当に知りたいのは、その資産で自分の生活をどれだけ支えられるのかです。
これは以前整理した、「FIRE購買力」という考え方です。そこへ今回、「FIRE余裕率」を加えます。
▶ 円安で資産が増えてもFIREできない?|「FIRE購買力」という視点から考える / FIRE計画の羅針盤
資産側の価値を見る。ゴール側の必要額を見る。両方を比較する。
例えば円安によって海外資産の円換算額が10%増えたとしても、その間に生活費やFIREラインが7%上昇していれば、感覚的には「FIREへ10%近づいた」とは言いづらい。
逆に株式資産が横ばいでも、住居費や固定費を大きく下げられればFIREラインが下がり、退職へ近づく場合があります。
つまりFIREとは、資産額の大きさを競うゲームではなく、「自分の生活と資産の関係を整えるゲーム」なのだと思います。
FIRE直前には「いくらあるか」ではなく、一度ゴールラインを作り直す
もしFIRE予定日が1年以内に近づいたら、私は一度だけ、昔決めた目標額を捨ててFIREラインを作り直した方がいいと思います。
10年前に想定した生活費ではなく、直近1年間の実際の生活費を使う。会社を辞めた翌年度に発生する税金や社会保険を確認する。現在の住宅費を入れる。年金受給開始までの期間を見る。FIRE後の収入予定も現実的に考える。大型支出や現金余力、資産配分、取り崩し方法も確認する。
そのうえで、基本ケース、少し厳しいケース、かなり厳しいケースという3段階くらいを考える。
そこで、「基本ケースなら十分。多少悪い条件になっても支出調整や現金で対応できそうだ」と思えるなら、かなり腹落ちします。
反対に、「基本ケースでもぎりぎりで、生活費が少し上がっただけで厳しい」と分かれば、あと半年だけ働く、固定費を見直す、FIRE後に小さな収入を残す、資産配分を調整するといった選択肢があります。
会社を辞めた後に初めて気づくより、辞める前に知った方が圧倒的に楽です。
FIREは「○○万円を貯めるゲーム」から卒業する
FIREを目指し始めた頃は、1,000万円、2,000万円、3,000万円と純資産を増やすゲームでいいと思います。
数字が分かりやすく、資産形成のモチベーションにもなります。
でもFIREが現実味を帯びてきたら、少しゲームのルールを変えた方がいい。
「5,000万円まであといくら」だけではなく、自分は実際に年間いくら使っているのか。その生活を何年間金融資産に支えてもらうのか。会社を辞めたあと、どの収入が残るのか。年金まで何年あるのか。制度や物価が多少変わっても対応できるのか。そして、現在の資産はFIREラインに対してどれくらい余裕があるのか。
ここまで見るようになると、「5,000万円貯まったら人生クリア」という考え方から、「この資産で、自分が送りたい生活をどれくらい安定して支えられるか」という考え方へ変わります。
FIREに近づけば近づくほど、後者の方が大切になってくるはずです。
まとめ
FIRE必要資産は固定額ではありません。5,000万円でも、7,000万円でも、1億円でも、それだけでFIREできるかどうかは決まりません。
必要資産を動かすのは、生活費、物価、税金、社会保険、住宅費、金利、取り崩し前提、公的年金、FIRE後の収入、大型支出、そして自分がどこまで不確実性を受け入れられるかです。
だから、「5,000万円貯めればFIRE達成」と考えるのではなく、「現在の条件なら、自分のFIREラインはいくらなのか」と考える。
さらに、その数字を一点ではなく、基本ケースとストレスケースを含む「FIREレンジ」で持つ。
そして、「現在の金融資産 ÷ 基本FIREライン」という「FIRE余裕率」で、自分がどの程度ゴールを上回っているのかを見る。
そうすれば、資産は増えたのにFIREから遠ざかった理由も、相場が悪いのにFIREへ近づいた理由も見えやすくなります。
「FIREは昔より難しくなった」、「インフレでもう無理だ」、「増税されたらFIRE終了だ」、そんな話は今後も何度も出てきます。
でも本当に見るべきなのは、世間全体のFIRE難易度ではありません。自分のFIREラインです。
借金がある人とない人、家賃が高い人と低い人、完全無収入になる人と月数万円だけ働く人、45歳で辞める人と60歳で辞める人では条件が違います。
だから必要資産も違います。そして、その必要資産は時間とともに変わります。
ただし、FIREラインが動くからといって、未来の不安をすべて資産額へ積み上げ、永遠にゴールを遠ざける必要もありません。
現在の生活と制度から基本ケースを作る。少し悪い未来をストレスケースとして考える。そして十分な余白があると自分で判断できたなら、その時点で決断する。
未来のすべてを知ってから会社を辞めることはできません。
FIREに必要なのは、未来が変わらないことを祈る計画ではなく、「未来が変わっても修正できる計画」なのだと思います。
5,000万円という数字は、とても分かりやすい。
でも本当に大切なのは、その5,000万円が、「自分の生活を何年、どれくらいの余裕を持って支えられるのか」です。
そこまで見えるようになったとき、FIRE必要資産は単なる貯金目標ではなく、自分がいつ会社員生活から降りるのかを考える、かなり実用的な判断材料へ変わるはずです。
こちらの記事もあわせてどうぞ
▶ 円安で資産が増えてもFIREできない?|「円換算マジック」に注意 / FIRE計画の羅針盤
・円安で資産額が膨らんでも、その資産で実際に買える生活まで同じように増えたとは限りません。「FIRE購買力」という資産側の視点から考えています。
▶ FIRE直前は株式比率を下げるべき?|「年齢とともに守りに入る」の定説を疑う / FIRE計画の羅針盤
・FIREラインが見えてきた後に考えたいのが資産配分です。退職直後の暴落への備えと、その後数十年間の成長力をどう両立するのかを整理しています。
▶ FIRE直前5年は「退職レッドゾーン」|FIREを7段階で考える“もうすぐ自由”が一番危ない理由 / FIRE計画の羅針盤
・目標資産に近づくほど、一度の相場下落が退職計画へ与える影響も大きくなります。FIRE直前という特殊な時期のリスクを考えています。
▶ FIREの4%ルールは安全なのか?|40代独身が知るべき取り崩しの現実 / FIRE計画の羅針盤
・「年間生活費の25倍」の土台になる4%ルールについて、運用期間の長い40代FIREでもそのまま使えるのかを詳しく整理しています。
▶ オルカン1本でいいのか?|“それで十分な人・足りなくなる人”の違いを現実ベースで徹底整理 / FIRE計画の羅針盤
・FIREラインへ到達することと、その資産を何で保有するかは別問題です。オルカンを含む株式資産の役割はこちらで整理しています。
※本記事で使用する「FIREライン」「FIREレンジ」「FIRE余裕率」は、FIREに必要な資産を整理するため、本記事で便宜的に使用している表現であり、正式な金融用語や公的な指標ではありません。
※本記事で示した4%、3.5%等による必要資産の計算は、支出や収入の変化がFIRE必要資産へ与える影響を分かりやすく示すための単純換算です。特定の取り崩し率によって資産が生涯維持できることを保証するものではありません。
※税制・社会保険制度・金利等は今後変更される場合があり、実際の税額や保険料等は所得、年齢、居住地、申告方法などによって異なります。最新の公的情報をご確認ください。
※本記事は特定の金融商品への投資、FIRE・早期退職、資産の売却、特定の取り崩し率や資産配分を推奨するものではありません。
※株式、投資信託、債券その他の金融商品には、価格変動、元本割れ、為替変動、金利変動等のリスクがあります。FIREや投資に関する判断は、ご自身の資産状況、収入、支出、運用期間、リスク許容度等を踏まえて行ってください。


コメント