高年収なのにお金が貯まらない「HENRY」とは?|年収より金融資産がFIREを決める理由 / FIRE計画の羅針盤

高年収なのに金融資産が増えないHENRY状態に気づき、収入より資産形成とFIREへの道を考えるメガネおじさんを描いた、青基調の実写風アイキャッチ画像 FIRE計画の羅針盤

年収1000万円。もし20代の頃にそう聞いたら、「もうお金の心配なんてないだろう」と思っていたかもしれません。年収1500万円なら、なおさらです。

いい家に住める。いい車に乗れる。旅行にも行ける。欲しいものもかなり買える。老後資金も余裕。FIREだってすぐできそう。
ところが実際には、「高年収なのに、お金が貯まらない」、そんな人がいます。

給料日はかなり大きな金額が入ってくる。でも月末になると、それなりに出ていく。
年収は上がっている。なのに金融資産は思ったほど増えていない。
同年代の平均年収を大きく上回っているのに、「会社を辞めたら生活できない」という状態から抜け出せない。
海外には、こういう人を表す面白い言葉があります。
HENRY」。High Earners, Not Rich Yet。直訳すれば、「高収入だけど、まだお金持ちではない人」です。

この言葉は2003年、米FortuneのShawn Tully氏が高所得者を扱った記事の中で使ったものです。
元々は米国の税制を背景に生まれた言葉で、日本の公的な所得区分ではありません。
したがって「年収○万円以上なら日本版HENRY」と機械的に線を引くより、「収入の高さと蓄積した資産の大きさにギャップがある状態」として考える方が使いやすいでしょう。

そしてFIREを考える人にとって、このHENRYという言葉はかなり重要です。
なぜなら、「会社員の豊かさと、FIREできる豊かさは別物」だからです。

年収1500万円でも、毎年1400万円必要な生活なら会社を辞めにくい。
年収700万円でも、生活費を抑えながら金融資産を積み上げていれば、会社への依存度は徐々に下がります。
つまりFIREにとって重要なのは、「いくら稼いでいるか」だけではなく、「稼いだお金をどれだけ自分の資産へ変えられたか」です。

この記事ではHENRYを、「金遣いの荒い高所得者」として笑うつもりはありません。
住宅費、教育費、税・社会保険、仕事上の支出、生活環境など、高収入でも資産形成が進みにくい事情はいろいろあります。
むしろ面白いのは、その先です。「人的資本として高い年収を持っているのに、それを金融資本へ十分変換できていない」ことです。

HENRYとは、そういう状態なのではないか。ならばFIREを目指す40代会社員が考えるべきなのは、もっと年収を上げることだけではありません。「高い年収を、どうやって辞められる資産へ変えるのか」です。

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  1. HENRYとは何か?「高収入」と「お金持ち」は同じではない
    1. 年収は「フロー」、資産は「ストック」
    2. 日本の平均給与から見れば「高年収」は確かに目立つ
  2. 年収1000万円でも貯金できないのは、意志が弱いからとは限らない
    1. HENRYには「悪いHENRY」と「途中のHENRY」がいる
  3. 高年収になるほど起きやすい「生活水準のロック」
    1. 高年収は自由を増やすはずなのに、逆に必要年収まで上げることがある
  4. FIRE目線では「年収」より「給料が止まった後」が重要になる
    1. 年収は「経済力」ではなく「現在の稼働能力」の数字でもある
  5. HENRYから抜ける鍵は「もっと稼ぐ」ではなく、人的資本を金融資本へ変換すること
    1. 年収が上がるたび「自分の生活」へ100%還元すると、資産家にはなれない
    2. HENRY脱出の指標は「年収」ではなく金融資産の増加額
  6. 「高年収ならたくさん使って当然」という見えない圧力もある
    1. 高年収者の「普通」は高い
  7. HENRYかどうかは「純資産」と「使える金融資産」を分けて考える
  8. 「高年収なのに貯金できない」を解決するなら、節約より先に固定費を見る
  9. HENRYから抜け出すための「5つの数字」を持っておく
    1. 1.金融資産
    2. 2.負債
    3. 3.年間生活費
    4. 4.年間で金融資産へ移せる金額
    5. 5.給料なしで暮らせる年数
  10. HENRYを脱出するために、給料日より「純資産日」を楽しめるようになる
    1. FIREすると年収はむしろ低くなってもいい
    2. 「年収1000万円を維持できる人生」と「年収ゼロでも困らない人生」は別の成功
  11. 「Yet」を消すには、収入を増やすより資産形成を自動化した方がいい
  12. HENRY診断|年収が高くても、この状態なら一度確認したい
    1. HENRYから「Rich」になる条件は、豪邸でも高級車でもない
  13. まとめ|HENRYの「Yet」を消すのは、年収ではなく金融資産
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HENRYとは何か?「高収入」と「お金持ち」は同じではない

まず言葉を整理しましょう。HENRYは、「High Earners, Not Rich Yet」の頭文字です。
ポイントは二つあります。High Earners。つまり「現在、高い収入を得ている」。
そして、Not Rich Yet。「まだ十分な富を持っていない」、ここが大事です。

年収は「フロー」、資産は「ストック」

お金の世界ではよく、「収入 = フロー」、「資産 = ストック」と分けます。
例えば年収1000万円という数字は、「一年間に入ってくるお金の流れ」を表しています。

一方、金融資産3000万円。預金500万円。住宅ローン2000万円。といった数字は、現在までに積み上がった資産や負債です。まったく別の数字です。

仮に二人の会社員がいるとします。Aさんは年収700万円。Bさんは年収1500万円。収入だけならBさんの圧勝です。
でも、Aさんの金融資産5000万円。Bさんの金融資産500万円。だったらどうでしょう。
明日会社を辞めても生活を続けやすいのは、Aさんかもしれません。

もちろん生活費や年齢、負債、年金などを見なければ最終判断はできません。
ただ少なくとも、「年収の高さだけでは経済的自立度は分からない」ことは分かります。

日本の平均給与から見れば「高年収」は確かに目立つ

国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した民間給与所得者の平均給与は478万円でした。男性587万円、女性333万円、正社員では545万円です。
したがって年収800万円、1000万円、1500万円と聞けば、日本の給与所得者全体から見れば高い側に位置することになります。
でも、「平均より多く稼ぐことと、資産家になることは同じではありません」。

給与所得者として成功しても、給与を使い切れば資産は増えない。これは当たり前です。
ただ、年収が上がるほど意外とこの当たり前が見えにくくなります。
給料が高いので家計は破綻しない。カード代も払える。住宅ローンも通る。車も買える。旅行にも行ける。
そのため、「資産が増えていない」という問題が表面化しにくい。

低収入で毎月赤字なら危険信号はすぐ鳴ります。
高収入では、かなり長い間鳴らない。これがHENRYの怖いところです。

年収1000万円でも貯金できないのは、意志が弱いからとは限らない

高年収なのにお金が貯まらない」という話になると、すぐ、「浪費しているからだ」となりがちです。
半分は正しい。でも、それだけではありません。

高所得になる年代と、家計の支出が大きくなる年代が重なることがあります。
40代なら、住宅。教育。車。保険。親への支援。仕事上の付き合い。健康。こうした支出が同時に発生しやすい。

総務省の2025年家計調査を見ると、二人以上世帯の40~49歳では、1世帯当たり平均で貯蓄現在高1381万円に対し、負債現在高は1483万円でした。
また負債を保有する世帯の割合は67.0%と、年齢階級別で最も高くなっています。
これは高所得者だけの統計ではありませんが、40代という年代が「稼ぐ時期」であると同時に、「負債や大型支出を抱えやすい時期」でもあることを示す材料にはなります。

だから、「年収1000万円なのに金融資産1000万円しかない。浪費家だ」と数字だけで決めつけるのも乱暴です。
3000万円の住宅ローンがある。子どもの教育費が大きい。高額な奨学金を返している。最近ようやく高収入になった。そんなケースもあります。

HENRYには「悪いHENRY」と「途中のHENRY」がいる

例えば35歳で、年収1200万円。金融資産500万円。だからといって失敗とは限りません。
30歳まで収入が低く、ここ数年で急に年収が上がったのなら、資産が追いついていないのは当然です。

HENRYの最後には、「Yet = まだ」があります。ここはかなり重要です。
現在はまだ資産家ではない。でも、高収入を維持しながら金融資産へ変換していけば、「将来Richになる途中」かもしれません。

逆に問題なのは、年収1200万円。金融資産500万円。そして10年後も、年収1500万円。金融資産600万円。という状態です。
収入は増えた。でも資産はほぼ増えていない。こうなると「まだ」ではなく、「高所得を永遠に消費する構造」になっています。整理するとこんな感じです。

状態収入資産の動きFIRE目線での評価
若いHENRY高いこれから増える段階問題とは限らない
住宅・教育期のHENRY高い一時的に増えにくい将来の支出減少を確認したい
戦略的HENRY高い毎年着実に金融資産へ変換中FIREへ進んでいる途中
固定化したHENRY高い何年たっても増えない高年収への依存が続く
資産家へ移行した元HENRY高い・低いどちらでもよい十分な金融資産が蓄積会社依存度が低い

HENRYであること自体は問題ではありません。「いつまでHENRYなのか」、こちらの方が重要です。

高年収になるほど起きやすい「生活水準のロック」

年収が上がると、生活も少し良くなります。
当然です。新卒時代と同じワンルームに、一生住まなければならない理由はありません。
給料が増えれば、広い家、便利な場所、いい家具、外食、旅行、車、趣味にお金を使ってもいい。

お金は使うためにあります。問題は、「一度上げた生活水準の一部が固定費へ変わること」です。

例えば年収が600万円から1000万円になった。そこで、家賃10万円 → 18万円。車なし → 車あり。普通のスマホ → 高額端末を定期更新。近場旅行 → 毎年海外旅行。外食月2万円 → 月8万円。こうなる。
一つひとつは払えます。年収1000万円ですから。ところがある日、「会社を辞めたい」となる。
すると初めて、「この生活を維持するには高年収を稼ぎ続けなければならない」ことに気づきます。これがFIRE目線では結構怖いです。

高年収は自由を増やすはずなのに、逆に必要年収まで上げることがある

FIREでは「年間生活費」が重要です。
仮に年間300万円で生活できるなら、必要な金融資産は比較的小さくなります。
年間600万円なら大きくなる。年間1000万円ならさらに大きくなる。
つまり年収が上がったときに生活費まで同じペースで上げると、「稼ぐ力が上がると同時に、FIREのゴールも遠ざかる」ことがあります。

これはなかなか皮肉です。年収600万円の頃、「5000万円あればFIREできるかも」と思っていた。
年収1000万円になる。暮らしが良くなる。すると、「7000万円必要かな」になる。
年収1500万円になる。さらに生活が上がる。「やっぱり1億円必要だ」となる。一生ゴールが逃げていきます。

▶ FIREは年収より貯蓄率で決まる?|収入と支出の差を広げる40代独身の現実戦略 / FIRE計画の羅針盤

高収入がそのままFIREの近さにはならず、収入と支出の間にどれだけ余白を作れるかという基本はこちらで詳しく整理していますが、さらに見たいのは、貯蓄率の高さではなく、その結果「どれだけ会社から離れられる資産へ変わったか」です。

FIRE目線では「年収」より「給料が止まった後」が重要になる

ここで少し変な質問をしてみます。「あなたの年収はいくらですか?」ではなく、「明日から給料がゼロになったら、今の生活を何年続けられますか?」、FIRE目線では、こちらの方が重要です。

  • Aさん…手取り600万円。年間生活費300万円。金融資産5000万円。
  • Bさん…手取り1000万円。年間生活費800万円。金融資産1000万円。

給与明細だけならBさんが強い。でも会社を辞めると景色が変わります。
Aさんは金融資産が生活費の約16年分あります。Bさんは約1年強。

運用益、公的年金、税金、社会保険などを完全に無視した単純比較ですが、違いは明確です。
Bさんは高所得者だけれど、Aさんの方が労働所得から自由」、これこそHENRYとFIREの接点だと思います。

年収は「経済力」ではなく「現在の稼働能力」の数字でもある

会社員の年収1000万円。これは素晴らしい。
でも少し意地悪に言えば、「その人が今年も会社へ時間を提供した結果として入ってくる1000万円」でもあります。

来年も働けば入る。再来年も働けば入る。でも会社を辞めれば止まる。
一方、金融資産5000万円は、会社へ行かなくてもその人のものです。ここが違います。

私はこれを、「年収 = 現役パワー」、「金融資産 = 退場パワー」くらいに考えると分かりやすいと思っています。
高い年収は、「会社員として強い」ことを示す。高い金融資産は、「会社員でなくても生きられる」可能性を高める。FIREで欲しいのは後者です。

▶ FIREまでは遠い…でもFUマネーがあれば会社に魂を売らずに済む / FIRE計画の羅針盤

完全FIREに届かなくても、金融資産が積み上がるほど「嫌なら辞められる」という選択肢が生まれます。
HENRYが本当に不足しているのは、収入ではありません。退場パワーなのかもしれません。

HENRYから抜ける鍵は「もっと稼ぐ」ではなく、人的資本を金融資本へ変換すること

会社員には人的資本があります。知識。経験。スキル。人脈。会社での役割。それを使って給与を得る。

HENRYは、この人的資本がかなり強い人です。だから高収入になれる。
しかしFIREでは、その高い人的資本を、「金融資本へ変換する」必要があります。

給与をもらう。生活する。残ったお金を預金・投資などへ回す。これを繰り返す。
言葉にすれば当たり前です。でもHENRY問題の本質は、「人的資本から生まれたお金が、金融資本になる前に生活へ吸収されてしまう」ところにあります。

年収が上がるたび「自分の生活」へ100%還元すると、資産家にはなれない

例えば昇給で手取りが年間60万円増えた。全部使えば生活は良くなります。金融資産は変わりません。
30万円だけ生活へ。30万円を金融資産へ。なら両方良くなる。
60万円すべて資産形成へ回せば、生活を変えずにFIREがかなり近づきます。

どれが正解という話ではありません。重要なのは、「昇給した60万円の行き先を自分で決めること」です。
何も決めなければ、意外と消えます。給料が高い人ほど、「これくらい大丈夫」と言える金額も大きくなる。
月1万円ならともかく、月5万円、10万円、20万円。と生活が膨らんでも払えてしまいます。払えるから危機感も出ません。
だから高年収ほど、資産形成を「余ったらやる」にしない方がいいです。

HENRY脱出の指標は「年収」ではなく金融資産の増加額

例えば今年、年収1000万円 → 1100万円。すごい。
でも金融資産が、1000万円 → 1020万円なら、収入増の大半は別の場所へ行っています。
一方、年収800万円 → 820万円。金融資産2000万円 → 2300万円なら、資産形成は順調です。
どちらが豊かかは一概に言えません。でもFIREへ近づいたのは後者でしょう。

そこで40代からは、「今年の年収はいくらだったか」だけでなく、「今年、自分の金融資産はいくら増えたか」も成績表にしていい。

ただし、株価変動まで含めて自分自身を毎日採点する必要はありません。

▶ 投資を始めるほど人生が苦しくなる?|資産額で自分を採点し始めた人がFIREから遠ざかる理由 / FIRE計画の羅針盤

資産額は自由のための道具であって、人間としての点数ではありません。
資産形成と自己評価をくっつけない考えてはいけません。

「高年収ならたくさん使って当然」という見えない圧力もある

HENRYの面白いところは、本人だけの問題ではないことです。
高収入になると、「高収入らしい生活」を期待されることがあります。

年収1000万円なのに軽自動車?そんなに稼いでいるのに賃貸?せっかく稼いでいるのに旅行しないの?40代なのにその時計?いい会社なのにその服?誰かに直接言われなくても、なんとなく感じる。

そして人間は周囲を見ます。同じ職場の同年代。同じ役職。同じ業界。年収が近い友人。
その人たちが、大きい家。高級車。海外旅行。ブランド品。私立学校。こうしたことにお金を使えば、それが「普通」に見えてくる。

高年収者の「普通」は高い

ここにHENRY化のもう一つの罠があります。
人間は、「ぜいたくしている」という感覚より、「普通に暮らしている」という感覚の方が強い。
高い家賃でも、周囲も同じなら普通。毎週外食でも普通。毎年海外旅行でも普通。高い車でも普通。
すると、「無駄遣いしているつもりはないのに、なぜかお金が貯まらない」が起きます。

これを責めても仕方ありません。問題は、周囲の生活水準を基準にすると、「FIREという自分自身のゴールと支出がつながらなくなる」ことです。

他人は65歳まで働くつもりかもしれない。75歳まで働きたい人かもしれない。親から資産を相続する予定かもしれない。共働きかもしれない。
それなのに生活水準だけ真似して、「私は50歳でFIREします」では数字が合わない。
FIREを目指すなら、生活水準も、「自分の人生計画から逆算する」必要があります。

HENRYかどうかは「純資産」と「使える金融資産」を分けて考える

ここでもう一段整理します。資産という言葉も意外と曖昧です。
例えば、住宅5000万円、金融資産500万円、住宅ローン3000万円なら、資産は5500万円、負債3000万円、純資産2500万円です。「純資産2500万円なら結構あるな」となります。

でも明日FIREしたらどうでしょう。自宅5000万円は、通常そのままでは毎月の生活費にはなりません。
売る、貸す、リバースモーゲージ等を利用するといった方法を採らない限り、生活費を直接支えるのは主に金融資産です。
だからFIREでは、「総資産」・「純資産」・「金融資産」を分けて見た方がいい。

数字何が分かるかFIREでの役割
年収現在の稼ぐ力資産形成の原資
総資産持っている資産全体全体像の確認
負債返済義務将来キャッシュフローを拘束する
純資産資産-負債家計の実質的な財産規模
金融資産預金、株式、投資信託等FIRE後の生活費へ比較的使いやすい
年間生活費現在の生活コスト必要なFIRE資産を大きく左右する

ここでHENRYを見ると、「年収だけ突出して高いのに、純資産や金融資産が追いついていない」状態がよく分かります。
逆にFIRE民は、年収が突出していなくても、金融資産が大きく、生活費が比較的小さい。そんな形でも成立する。
金融の世界と会社員の世界では、強さのルールが少し違うわけです。

「高年収なのに貯金できない」を解決するなら、節約より先に固定費を見る

ここで、「じゃあ毎日水筒を持って、昼飯を300円にして、電気を消して……」となる必要はありません。
特に高収入の人なら、細かい節約より大きな支出の方が効きます。

住居。車。保険。教育。通信。会費。サブスクリプション。旅行の標準単価。こうしたものです。
例えば年間1000万円使う人が、コーヒーを年間3万円節約しても997万円。もちろん3万円もお金ですが、大勢は変わりません。
一方、住居費を年間60万円下げる。車の維持費を年間40万円下げる。固定化したサービスを年間20万円整理する。これなら120万円変わります。しかも毎年です。

ただし、これも「全部削れ」という話ではありません。
気に入った家なら住めばいい。車が大好きなら持てばいい。家族の教育を優先したいなら、それも立派な使い道です。
大切なのは、「私はこれを買う代わりに、FIREを何年遅らせても納得できるか」と考えることです。
高年収者に必要なのは、極端な節約より、「高額支出を無意識の普通にしないこと」だと思います。

HENRYから抜け出すための「5つの数字」を持っておく

では、何を見ればいいでしょう。私は年収より、次の5つを見たいです。

1.金融資産

まず現在、預金、株式、投資信託、債券など、FIRE後の生活へ使える金融資産がどの程度あるか。

総務省の2025年家計調査では、二人以上世帯の1世帯当たり貯蓄現在高は平均2059万円でしたが、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円で、約3分の2の世帯が平均値を下回っています。平均値だけでは実際の分布をつかみにくい点にも注意が必要です。

自分を平均と競わせる必要はありません。FIREで重要なのは、「自分の生活費に対して十分か」です。

2.負債

住宅ローン。自動車ローン。カードローン。その他借入れ。資産だけを見ず、負債も見る。

40~49歳の二人以上世帯では、2025年平均で貯蓄1381万円に対して負債1483万円と、平均ではまだ負債超過でした。50歳未満の年齢階級では負債が貯蓄を上回る一方、50歳以上では貯蓄超過へ転じています。

40代FIREでは、まさにこの移行をどう早めるかが重要になります。

3.年間生活費

年収ではありません。「年間いくらあれば生活できるのか」が重要です。

300万円。400万円。600万円。数字によってFIRE必要資産は大きく変わります。しかも一度高くなった生活費は、簡単には下がりません。

だから「FIRE後になったら節約する」より、会社員のうちに自分が心地よく暮らせる水準を確認しておく方が現実的です。

4.年間で金融資産へ移せる金額

年収1000万円。それだけでは足りません。一年終わったとき、金融資産へいくら移ったか。
100万円。300万円。500万円。これを見る。私はこれを、「年収の自由変換額」くらいに考えると面白いと思います。

年収は会社からもらった数字。金融資産増加額は、「その年収から未来の自由へ送り出した数字」です。

5.給料なしで暮らせる年数

最後に、「金融資産 ÷ 年間生活費」をざっくり見る。
これは4%ルールのような正式な取り崩し計画ではありません。単純な「生活年数の目安」です。

金融資産1200万円。年間生活費300万円。なら単純計算で4年分。
金融資産3000万円なら10年分。5000万円なら約16.7年分。
運用、税、社会保険、インフレ、公的年金を無視しているので、そのままFIRE可能年数には使えません。

でも、「年収がなくなったら即アウトなのか、数年間余裕があるのか」を見るには非常に分かりやすい。
HENRYから抜けているかどうかは、この数字を見るとかなり実感できます。

HENRYを脱出するために、給料日より「純資産日」を楽しめるようになる

会社員は年収が好きです。昇給。賞与。昇進。年収800万円。1000万円。1200万円。数字が増えるとうれしい。当然です。

でもFIREを目指すなら、途中からもう一つ「純資産ゲーム」を追加した方がいいです。
去年、金融資産2000万円、今年2300万円、翌年2700万円という方です。
給与は会社が支給する。でも資産は自分に残る。この違いは大きいです。

FIREすると年収はむしろ低くなってもいい

ここで面白いことがあります。一般的な会社員人生では、年収は上がるほど成功です。
ところがFIREでは最終的に、「年収を下げても困らない状態」を作ろうとしています。

正社員を辞める。週3日働く。アルバイトする。何もしない。すると給与収入は大きく下がるかもしれません。
でも、金融資産5000万円。生活費年間250万円。公的年金も将来ある。それなら、本人にとっては問題ないかもしれない。

つまりFIREでは、「年収が下がったのに自由度が上がる」という逆転が起きます。
会社員の価値観だけで見ると奇妙です。金融資産の価値観で見ると自然です。

▶ 40代会社員の「辞められる力」が価値になる時代|FIREできる人が強くなる日本の未来 / FIRE計画の羅針盤

FIRE資産の価値は、会社を辞めた後だけにありません。資産が増えるほど勤務条件や働き方を自分で選びやすくなるという「辞められる力」も重要です。

「年収1000万円を維持できる人生」と「年収ゼロでも困らない人生」は別の成功

年収1000万円を20年間維持する。これはすごい。
一方、50歳で金融資産を作り、「別に年収ゼロでもしばらく困らない」となる。これもすごい。
どちらを目指すかは本人次第です。ただFIREを目指しているのに、前者の競争だけを続ける必要はありません。

HENRYが苦しくなるのは、年収が高いのに足りないからではなく、「高い年収を維持しないと現在の生活が成立しない」からです。
それなら、出口はもっと稼ぐことだけではない。高い年収を資産へ変える。必要生活費を把握する。固定費を自分で選ぶ。金融資産を育てる。会社なしでも暮らせる期間を伸ばす。
そうやって、「高年収者」から「経済的に自由な人」へ移っていく。これがFIREです。

「Yet」を消すには、収入を増やすより資産形成を自動化した方がいい

HENRYの中で一番大切な単語は、「Yet」です。「Not Rich」ではありません。
Not Rich Yet。まだ、お金持ちではない。つまり途中です。

高年収を持っているなら、大きな武器はすでにあります。問題は、「それを毎年消費だけに使うのか」、「金融資産へ変えるのか」です。ここで意思の力だけに頼る必要はありません。

給与が入ったら一定額を別口座へ移す。新NISAなど長期資産形成の制度を必要に応じて使う。
毎月自動積立する。昇給したら積立額も一部増やす。ボーナスの使途を事前に決める。
こうして、「余ったら投資」から「先に資産へ変換」へ持っていく。

2025年末時点のNISAについて、金融庁は取扱金融機関を対象に口座数や買付額などの利用状況を継続的に公表しており、制度利用は広がっています。
NISAは利益を保証する制度ではありませんが、長期の資産形成に使える非課税制度の一つです。

▶ 会社に依存しない資産形成を始めるなら、楽天証券で口座開設を検討する

ただし、「HENRY脱出のために全部投資」も違います。
住宅が欲しい。旅行したい。趣味を楽しみたい。それも人生です。
重要なのは、「使った残りを資産形成する」のではなく、「使う分と未来へ残す分を自分で決める」ことです。

HENRY診断|年収が高くても、この状態なら一度確認したい

最後に簡単なチェックを作ってみます。医学的・金融機関的な診断ではありません。
FIRE目線で家計を眺めるためのチェックです。

確認項目YESなら見直したいポイント
昇給したのに毎年ほとんど金融資産が増えていない生活水準が収入と一緒に上がっていないか
年収は高いが、給料が3か月止まると不安になる生活防衛資金を確認する
現在の金融資産額をすぐ答えられない年収だけでなく資産残高も把握する
年間生活費が分からないFIRE必要資産を計算する前に支出を確認する
ボーナスはほぼ全額使う前提になっている一部を自動的に資産へ移す仕組みを検討する
昇給すると同時に固定費も上げている昇給分すべてを恒久的な生活費へしない
高収入なのに会社を辞める想像がまったくできない資産額より会社依存度を確認する
「年収○万円だからこの生活は当然」と考えている年収ではなく自分の人生計画から生活水準を決める

一つ当てはまったから問題ということではありません。
家を買った直後なら金融資産が少なくなることもある。教育費がピークなら一時的に貯まりにくい。起業したばかりなら資産形成を後回しにすることもある。

見るべきなのは一時点ではなく、「5年、10年たっても高年収だけが残り、金融資産が育っていないか」です。

HENRYから「Rich」になる条件は、豪邸でも高級車でもない

Richという言葉は難しいです。資産1億円ならRich。3億円ならRich。そんな明確な線があるわけではありません。
FIRE目線なら、もっと個人的でいい。私は、「自分の生活を維持するために、嫌な仕事を続けなくてもいい状態」に近づくほど「Rich」だと思います。

年間生活費250万円の人。金融資産5000万円。年間生活費1000万円の人。金融資産5000万円。同じ5000万円でも意味は全然違います。
だから、「年収いくらならお金持ち?」、「金融資産いくらなら富裕層?」だけを見ても、自分の自由度は分かりません。
重要なのは、自分の生活費に対して資産がどの程度あるか」です。

まとめ|HENRYの「Yet」を消すのは、年収ではなく金融資産

HENRY。High Earners, Not Rich Yet。高収入だけれど、まだお金持ちではない。
この言葉が面白いのは、高所得者を馬鹿にしているところではありません。
年収と富は別物である」ことを一言で表しているところです。

年収1000万円。1500万円。2000万円。それだけ見れば強い。
でもその生活に毎年ほぼ同じ金額が必要なら、給与を失うことはできません。
逆に年収600万円、700万円でも、生活費を把握し、金融資産を積み上げ、会社なしでも暮らせる期間を伸ばしていけば、経済的自立には少しずつ近づきます。

日本でも給与そのものは重要です。国税庁の直近公表で、1年を通じて勤務した民間給与所得者の平均給与は478万円でした。高い収入を得られることは、資産形成の大きな武器です。

でも武器を持っていることと、「武器を使って自由を作ること」は違います。
HENRYの人には、すでに強い人的資本があります。だから高収入を得られている。
次に必要なのは、人的資本から給与を得る。給与から金融資本を作る。金融資本によって会社依存度を下げる。
そして最後に、「働かなくても生きられる選択肢へ変える」、この流れです。

40代は特に重要です。2025年家計調査では、二人以上世帯の40~49歳は平均で貯蓄1381万円、負債1483万円、負債保有世帯割合67.0%でした。50歳未満では平均的に負債が貯蓄を上回り、50歳以上になると逆転しています。

つまり40代は、「稼ぐピークへ近づく年代であると同時に、金融資産と負債の主導権を逆転させていく重要な時期」とも考えられます。
ここで年収競争だけを続けるのか。それとも高くなった給与を、自分の資産へ移していくのか。
FIREを目指すなら、私は後者もかなり大事だと思います。

年収1000万円になった。それは素晴らしい。でも次は、「じゃあ年収1500万円を目指そう」だけではない。
その1000万円を使って、あと何年で会社に行かなくても困らない自分を作れる?です。

この考えに変わると、会社員人生の見え方がかなり変わります。
給料は高ければ高いほどいい。でも、もっと重要なのは、「高い給料を永遠に必要としない人生を作れるか」です。

HENRYから抜け出すというのは、高級住宅を買うことでも、高級車へ乗り換えることでも、年収2000万円へ到達することでもない。
自分の人的資本から生まれた収入を、少しずつ金融資本へ変える。そして、「給料がなくても大丈夫」という時間を買っていく。
そう考えれば、HENRYの最後にある「Yet」はかなり希望のある言葉です。まだ、資産家ではない。まだなら、これから変えればいい。
そしてFIREを目指す人にとって本当に欲しいRichとは、年収の数字を他人に見せられることではなく、「年収の数字を気にしなくても暮らせること」なのかもしれません。

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※本記事における「HENRY」は、米国で生まれたHigh Earners, Not Rich Yetという概念をFIRE・資産形成の観点から整理したものです。日本における特定の所得階級、資産階級または公的な分類を示すものではありません。
※本記事は、特定の生活水準、節約、FIRE、早期退職、金融商品等を推奨・保証するものではありません。必要な資産額や適切な家計管理は、年齢、収入、生活費、住宅、負債、健康状態、家族構成、公的年金等によって大きく異なります。
※投資には元本割れのリスクがあります。新NISA、投資信託、株式、債券等を利用する場合は、制度内容、価格変動リスク、手数料、税制、ご自身の家計・資産状況を確認したうえで、ご自身の判断で行ってください。

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